四天王第二席、戦う乙女は意外と過保護
再び転移して来た俺達は、今度は異常なほど広い空間に出てきた。
「待っていたぞ勇者。私は魔王四天王第二席、フェルエラだ」
その声に正面を向くと、魔王の四天王とは思えない神聖な空気を纏って、白を基調とした装備に身を包んだ女の人、フェルエラと名乗った人が、壇上からこちらを見下ろしていた。
「さて、話す必要は無い。この先に進むのならば、己の剣で示せ」
ここに来て再び戦闘。いや、さっきのあれと比べればまだいいけど。
「分かりやすくて助かる。ならばそうさせてもらう」
相手の誘いに真っ先に乗ったのはやっぱりハズキさん、この旅の中で分かったのはこの人が超がつくほど戦闘好きって事。
だけど見てるだけだとこっちがやられる。
俺も自分の剣を前に構えて相手の出方を見る。
「ふむ、無闇に攻めてこないのは評価しよう。だが待つだけでは勝てんぞ」
「……」
どうするか、武器の傾向から素早い動きが持ち味のはず。
そこで俺は、3人にそれぞれ指示を飛ばす。
「フロストさん、伊達さん、ハズキさんーー」
「分かった」
「承知した」
「後で文句はなしだ」
俺の作戦に全員が賛成してくれたことで、早速動き出す。
「はあ!」
「ふっ!」
「甘い!」
フロストさんとハズキさんが両脇から責め立てたけど、それを難なく捌いて一直線に俺のところまで来る。
「勇者、貴様自分で戦う気はあるのか」
「ありますよ。ただ、適材適所って言葉があるでしょ!」
「だが、今のままでは拍子抜けもいいところだぞ」
「くっ!」
正直ギリギリ捉えられてるかって位に素早い剣さばきに、ガードも回避も間に合わなくて何回かは攻撃貰ってるけど、これくらいなら問題にはならない。
「僕達を」
「忘れてはいないか」
「まさか、警戒しないわけが無いだろう。はあ!」
「やば!?」
華麗に中に舞い上がったフェルエラは、剣に何か光を纏わせて放ってきた。
慌てて避けたはいいものの、さっきまでいた場所がそこそこ大きな穴になってるんだが。
「そんな技もあるのかよ」
「いや、これは私のユニークスキルでな。貫通力に関しては自信がある」
これもユニークスキルとか、俺がさっき手に入れたのとえらい位違わないか。
はっきりいって滅茶苦茶羨ましいんだが。
「さあ、戦いは始まったばかりだぞ」
それから暫くは同じような状況がありながらも、何とかしのぎ続けていると。
「ヤサキ殿!お待たせした!今ですぞ!」
「はい!」
「一体何をするつもりかは知らないが、そう思い通りにはさせなっ!?」
「貴方も少し大人しくしていただきたい」
「悪いが黙って受けてもらうぞ」
「くっこれは!?」
やっぱり、フェルエラは敏捷値は高いだろうと思ってたけど、それなら相対的に筋力値は低くなってるはず。
フロストさんとハズキさんの拘束からは逃れられないはずだ。
「こんな物は、っ!?」
「黙って受けろと言っただろ。勿論それも警戒済みだ」
さっきのユニークスキルを使おうとした所を、素早く拘束され抑えられたフェルエラに、伊達さんの魔法が発動した。
「さあ、今回は派手に行きますぞ!『ヘルフレイム』!」
伊達さんの発した魔法名を引き金に、巨大な炎が一瞬にしてこの場全てを包み込んだ。
それから暫くして、無事に全員が蘇生されてその場に残る。
「何とか助かったみたいだね」
「全くだ、それにしてもとんでもない能力だな」
「俺もそう思います」
新しくクレイさんに打ってもらった俺の剣には、パーティーメンバーや自分が戦闘で死んだ場合に、その戦闘中に一度だけ全員が生き返ることが出来る強力なスキルを持っている。
ただこれだと。
「ライムさんに力不足と言われたのを痛感しちゃいますよ」
「まあ、今回の相手はスピード重視だったからな、どの道あれが一番手っ取り早い」
「それに次の相手も同じとまでは行かなくとも、似た感じでないと倒せないからね」
すると部屋の扉が開いて、出て来たのはフェルエラと似た格好の女の人だった。
「まさかフェルエラ様を本当に倒してしまわれるとは……」
「お客様方はこちらへ。僅かばかりですが私を倒した褒美だと」
「えっ、ああ。ありがとうございます」
そうして着いてきたのは本当に大きな倉庫と、そこにびっしりと置かれている薬品類。
見ただけでわかるくらいにどれも貴重そうな物ばかりだ。
「これが僅かね……。相変わらず根は優しいことで」
「今回はそれもどれだけ持つか」
3人はこの先の道のりを相当難しく考えているみたいで、次々にポーション等をアイテムボックスへと詰めていく。
「さて、それじゃあ行こうか」
素早く詰め終えた俺達は、新たな敵の元へと向かうために、次の魔法陣で先へと進む。




