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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
二章
97/111

四天王第一席、勝負ってのはいつだって分からない

 確りとアイテムの補充も済ますことが出来た俺達は、再び転移陣で最後の四天王の待つ場所まで転移してきた。


 入って直ぐに目に付いたのは2階部分に続く中央の広々とした大階段、そしてその前に立つ人影、前に立ち寄った街であったライムさんだ。


「ようこそ。と言えばいいですか」

「歓迎は嬉しいんだけど、君はどっちかな?」


 相手の挨拶もそうそうに、フロストさんが割って入っていったわけだけど、俺もあの時の戦闘を目の前にしてたから、その警戒もわからなくはない。


「どっちも何も、私はメイドです。今回は案内役をしてるんですよ」


 それだけ言うと、俺達を先導してそのままどんどんと進んでいく。

 着いたのはもうそろそろ見慣れても来た巨大な扉、その扉を開けて中に入ったところでどこからか声が聞こえてきた。


「やっと来たか。随分のんびりとしてたんだな」

「そうは言うけど、結構大変だったんだよ」

「まあそんな事はもういいか」


 そう言って壇上から降りてくるのは、最後の四天王のラムネ。

 この人は俺でも知っている。あのイベントのまとめ動画で現実じゃありえない剣捌きしてたプレイヤーがいたのは有名な話だ。


「さて、これが最後になる。そしてこの先に行きたいなら、俺からの勝負に勝つことだな」


 次の瞬間に全員が戦闘態勢をとったが。


「流石に気が早すぎだ。俺からの勝負内容は簡単だ。俺が今刺してる刀の刃を、鞘から出させたら、その時点でお前らの勝ちだ」


 この時の本能は各々違っていた。

 俺は前回のイベントでこの人を知ったから純粋に驚いて。

 ハズキさんは冷静に見えて少し殺気立ってる。

 フロストさんはこれでも変わらず警戒している。

 伊達さんは小さく何かを呟きながらの警戒。


「私達を過小評価しての勝負か」

「いや、寧ろ全力だよ逆に刀だけに縛るとそれに頼りきり、ただ剣を振るだけのチャンバラと変わんない」

「経験談かな」

「そんなもんだな」


「……」

「「………」」


 お互いが無言の状況が続いている中、先に動いたのはハズキさん、素早さにものを言わせて一気に接近、流石にハズキさんの攻撃を体で受けるのは良くない。

 そう思っていたんだけど、鉄の棒がそのまま頭に当たるかと思ったら。


「ふっ!」

「!?」


 一瞬何が起こったのか理解出来なかった、ラムネの手は打撃の寸前に顔の前に出てそのまま防いで受けるつもりなのかと思ったら、そのままハズキさんの武器を掴んでから、その勢いで吹っ飛ばした。


「なるほどね。君のその剣の腕は……向こうの物だったわけか」

「そういうことだ。柔術なんかも教えこまされたんだ。おかげで同世代どころか、上のやつでもそうそう相手にならなくてな」

「その話長くなる?」

「いや、今の所はこんなもんか。こっから先は正直どうでもいいし」


 そう言ってまたその場で直立してこっちの出方を伺っている。


 それからは俺達が一方的に攻めている筈なのに、消耗しているのはこっちだけという結果に。


「こんなもんか?」

「まだでござるよラムネ殿!我の魔法!受けれるものなら受けてみよ!」


 そう言って伊達さんが発動させたのは、少し前に使った魔法よりも更に威力のある魔法だった。


 これまで見た事ないような魔法を向けられているわけだけど、そんな中でなお涼しげにしている。


 そんな事を思ってた次の瞬間、上の方で何が弾けた。

 見るとたった今伊達さんが使った魔法が、直撃するまでさえに何かにぶつかった。


「何が……」

「悪いが魔法は面倒だからな。これくらいはありって事で」


 そういったラムネは、見ると左腕を振り下ろした様な姿勢をしていた。


「まさかの手刀とは……」

「刀は抜いてないんだ。これくらいはセーフだ」

「そんな屁理屈」

「それよりいいのか、あそこの魔法使い。俺の代わりにダメージ受けてるが」

「え!?」


 フロストさんとラムネの会話を聞いていて、ようやく俺達も気付いて伊達さんを探すと、煙の中倒れてるのを見つけた。


「伊達さん!大丈夫ですか、今直ぐに回復を……」

「まあ待たれよ」


 俺が回復薬を使おうとすると、伊達さんはそれを手で止めて来た。


「それはこの後にこそ必要になるもの。我は自分で回復する。後のことは任せます」


 そう言って何か魔法の詠唱を始めた。


「わかりました」


 ここでするべき事はわかってる。ですからすみません。今は伊達さんを気にしてる余裕はありません。


 すると戦いながら俺の側まで回ってきたフロストさんが話しかけてきた。


「ふむ……ねえヤサキくん。少し賭けに出ないかな」

「え?」


 賭けって言われても一体何をするつもりなんですか。


「賭けとは言ったけど寧ろ失敗前提の博打だよ」


 それは賭けとは言わないのでは、だけど正直今の現状を覆せるならなりふり構う必要も無いか。


「わかりました。その策に乗りますよ」


 そこからもう果敢に攻め続けるだけ、それだけなら無駄に体力とアイテムを消費するだけだけど、フロストさんの策は俺の持っている聖剣だった。


 貰った時に聞いたけど、どうやらこの聖剣にはレベルのシステムがあるみたいで、その時に驚いていたのは以外にもハズキさんだった。


 それで聞いてみると、レベルの概念を持った武器は神器でしか見た事後ないって話で、もしかしたらフロストさんは、俺の聖剣の何らかの進化に期待したのかもしれない。


 だけどそれに乗ったんだ。

 なら俺は全力でこの剣を振るい続けるだけだ。


 心の中でそう叫んだ時、何故か周りの景色がとても遅く見えた。

 何だこれ、何が起こって……。


「クッ!」


 そんなのは今はどうでもいい、体は動く、なら振り抜け、威力なんて半端でも構わない、この一撃を受けさせるなんて考えるな。


 ダメージを与えるつもりで本気で振り抜いた俺の剣が、そのままラムネの体を捕らえるかといった時だった。


「ねえラムネくん、今度遊びにおいでよ。実はフィロが寂しがっててさー」

「チッ!」


 フロストさんの言葉で一瞬だけど気が逸れたラムネは、完全にミスったみたいで、あからさまな舌打ちをした。


「どうなったのだ」

「多分行けたでしょ」


 ちょっと2人ともフラグを立てないでよ。

 そう視線で訴えようとしたところで、何かに襟を掴まれてフロストさん目掛けて寝げ飛ばされる。


「ちょっ!?」

「おっと」


 痛い、ステータス的には余裕のはずなのに。

 完全にとばっちりだろう投げ技くらった上に、その現況はサッと避けてしまった。


「たく、卑怯な手使いやがって」

「それで判定は?」

「クリアだよ。後で告げ口しとくからイベントの後は楽しむんだな」

「ちょっ、それは酷くないかな」

「うっせ。ライム」

「はいはい」


 びっくりした、いつの間にか近くまで来ていたライムさんにびっくりした。


「じゃあ手早く転送しますから残りは適当に」

「それはそれで大雑把過ぎないかな」

「おっとどうしましょうこれから発動する予定の転移魔法がー手が滑って上空数万メートルに指定しちゃいそーだー」

「わかった話し合おうか」


 そんな高いところに手が滑ること宣言して送ろうとしてる時点で故意なのでは。


「まあ、ぶっちゃけこの後の心配はない。後今後の別イベの時にお邪魔する」

「じゃあ楽しみにしているかな」


 その2人の会話で視界が切り替わって、気がつくと俺達は最後の戦場、魔王城の奥、魔王の前まで来ていた。

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