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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
二章
96/111

魔王様は強いです。色々と……

 さて、ここが最後の戦いの場所、そして目の前にはあからさまな椅子に座る女の子……女の子?


「よく来たなゆうちゃ」


 あ、噛んだ。今噛んじゃったよね。


「よく来たな勇者、私がこのお城の主の魔王だー凄いだろー」


 うん凄いね。

 というか待って、今から戦うの?あの痛いけな女の子1人に?こっちは伊達さんがまだ前回じゃないからって4人だぞ?しかもこれ確か客寄せのためのイベントだよな。


 やばい!?ネットで叩かれる未来しか見えないんだけど。


「君がそうなんだね。それで魔王様、僕らは君に挑む為ここまで来たんだけど」

「知ってるよ。じゃあ戦いスタート!」


 唐突に開始を宣言した魔王様、だけど本人は一向に動く気配がない。


 警戒した次の瞬間に、嫌な寒気にその場から全力で飛び退くと、何か手形のような窪みができていて、さらに周りに警戒を向ける。


「んー。皆避けちゃったらつまらないよー」


 いや、避けなきゃ問答無用で地面のシミになって終了だから。


 そんなツッコミを入れている間も、嫌な感覚に襲われながら自分の勘だけを頼りに避け続けているけど、駄目だ全く原理が分からない。


 何回も避けてて今分かっているのは、形状は人の手と同じこと、攻撃の直前や直後の感覚からだとちゃんとした質量を感じる事。


 その他は魔王は相変わらず椅子から動いていない事、それでも指示を出すように腕を動かしている。


 質量を感じるってことは少なくとも魔法係の攻撃、例えば魔法本体をぶつけている攻撃じゃ無いかもしれない。


 だけど質量を感じることはできるのに、その本体を全く捉えることができていない現状だと、こっちがジリ貧になるのはそんなに先の事じゃない。


「一体どうなってるんだよ」

「さっきから変な反応が感知スキルに引っかかってるけど、攻撃とのタイミングや位置が違いすぎてる」

「我も魔力の様な物を先程から感知しているのだが」


 俺以外の3人もこの攻撃の正体を掴めずに戸惑ってる。


「あははは!もっと頑張ってねー!」


 どうにか流れを変えられないか。


 そこで1つ考えが浮かび、ダメ元で俺はその場に留まる。



「ヤサキくん!?」

「あのバカ何してるんだよ」


 俺がいきなりその場で立ち止まった事で、フロストさんとハズキさんが攻撃を躱しながら何とかこっちに向かって来ようとしているみたいだけど、それよりも先にあの寒気を感じて、相手の攻撃が既に目の前まで迫っていることを体が伝えてくるけど、このタイミングを待ってた。


「くっ!はあぁぁぁぁああ!!」


 直後に来た重量に押し潰されそうになりそうだったけど、使えるスキルを全部発動させて受け止めた。


「やっぱり……姿は分からないけど、何か実態のある攻撃だったみたいだな!」

「へぇー、お兄ちゃん凄いね。でも、それじゃあ私にはまだ届かないよ」


 確かに、実態があるって分かっても、この攻撃をしている何らかの存在は透明で全く見えない。


 かと言って感知に頼ると変な所に反応が出たりして、まともに機能していない状態で、この攻撃を捉える方法は何かないのか。


「ははは!それならば我にお任せあれ!」


 そう言って伊達さんは、室内に雨を降らせる魔法を使ったけど、何が狙いなのかイマイチ分からない中で、伊達さんはもう1つの魔法を発動した瞬間、辺り一体が煙に包まれて何も見えなくなる。


「ちょっ!?伊達さん何やってるんですか」

「ふふふ、まあそう言わずに、ご覧あれ!」


 舞い上がった煙が晴れていき、言われて前に目を向けると、目の前には先程まで姿が見えていなかった攻撃の正体だろう巨大な腕だけの鎧が中に幾つか飛び回っていた。


「これが」

「もうバレちゃったのー?」

「よくやった木偶魔道士」


 相手の攻撃が視認できるようになってかは、こっちも徐々に距離を詰めていく。


「こっちだってまだ本気じゃないんだから!」


 同じように攻撃を捌きながら少しづつ近ずいていると、ふと自分の体に違和感を感じて、その場で捌きながら原因を探っていると、自分の動きがほんの少し、見ても分からないような感覚的な位だけど、確実に動きが悪くなっている気がする。


「フロストさん!相手の攻撃、何かされてますよ!」

「分かってる。それと多分だけど、これは闇系統の魔法もしくはそれに近いものだ」

「も〜!さっきから早すぎ!」

「悪いけど、結構身近に同じような戦い方をする奴がいてさ。それが分かったら後は簡単だよ」


 そう言い終わると同時に、フロストさんは魔王の前まで一気に迫っていた。


「はや!?」

「はあぁぁぁぁ!」


 勢いよく振り抜かれた剣が、そのまま魔王の首を捉えるかと思った。

 だけどその手前、謎の結界にフロストさんの剣が阻まれていた。


「クッ……!」


 そのままさっきの位置まで戻されてしまったけど、その目は未だに相手の隙を伺っている。


『ハズキ殿。聞こえますか?』

『!?』

『ああ、そのまま。相手に気付かれてはいけませんから』


 いきなり伊達さんの声が響いてきてびっくりしたけど、これは何かのスキルなのかな。


『細かい事はまた後に、それよりも聞いていただきたいことがあります』


 脳内通信、仮に『念話』とするけど、伊達さんからの念話の内容は、決壊ごとの魔王の討伐だった。


 伊達さんの見立てだと、相手の魔王は魔道士、若しくは魔法職から派生した何らかの職業だと予測しているみたいで、周りを飛んでいる巨大な拳や、あの結界さえ何とか出来れば倒すこと自体は簡単だと言っている。


 だけど肝心の結界をどうするのかと聞くと、先ず魔王の相手はフロストさんとハズキさんの2人が請け負うことに。

 役割はフロストさんが魔王に攻撃をしてプレッシャーを掛け続け、ハズキさんは今まで4人で対処していた魔王の攻撃を、ほぼ一人で捌くことに。


 残る俺と伊達さんは、俺は一撃のために剣を構えた状態でひたすら魔力を蓄積させる。


「も〜!全然倒せないじゃん!」

「まあ、その為に僕らが今こうして前線で攻撃を受けてるんだけどね」

「これくらいでへばっててら、うちの奴らに笑われちまうんでね」


 最後の最後まで2人はとても頼もしかった。

 そして遂に、準備が整った聖剣を、力に任せて全力で振り抜く。


「2人とも避けてください!」

「マジかい」


 上手く避けてくれた2人のおかげで、攻撃はそのまま魔王に直撃することになった。


 激しくまう砂埃の中から、1つの人影が浮き出てきて、再び警戒したけど。


「うぅぅううう……もう!こんな世界要らない!もう眠いから寝る!」


 それだけ言ってどこかえ消えてしまった魔王。


「え?これって勝ちでいいんですか?」

「そうみたいだけど、なんだか閉まらないねこの感じ」


 え?本当にこれでお終い?俺の華々しい凱旋は?


「嘘だーぁぁぁぁぁぁ……!!」


 こうして夏休みイベントの第1弾が終了した。

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