表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
二章
90/111

勇者と魔王ってあってます?

 今日は遂に俺の伝説が始まるんだと、そう思ってイベントエリアに移動する。

 そして、それぞれのプレイヤーが配置に着いたのを合図に、俺は光に包まれて転移する。


 目を開けると、そこはやたらと大きな空間、正直プレイヤーが一から作り上げたとは思えないレベルで完成度がヤバすぎる城の一部に俺はいた。


「ほうお主が今代の勇者か」


 目の前にいる国王陛下は、確か芋煮会のギルドマスターのダンシャクさんだったはず。

 格好はいかにもな王様風ではなく、飾り気のない紳士服を着こなしたダンディなおじさんだ。


「あの……ここは一体………」

「はっはっは、そう慌てることはないぞ。先ずは互いに自己紹介と行こうか」

「は、はあ」


 俺は前もってある程度決めていた流れに合わせて、アドリブで台詞を付けていく、と言うか周りの人達の演技がヤバすぎるんだけど……騎士鎧を着た人達が直立不動でずっと立ってるし。


「先ずは私は、この国の国王であるダンシャクと言う。そしてこちらは我が国の騎士団にて団長を務めるフロスト殿」

「宜しくね勇者くん」

「そしてこちらは魔道士団長の伊達メガネ殿だ」

「宜しく勇者殿」


 イベント前に一覧で見たけど、魔法師団長の人は正直強いのか分からない。対しての騎士団長の人はよく知ってる。


「この二人はお主の度にも同行する。存分に学ぶと良い」


 よし、そろそろ俺の番だな。


「俺はヤサキって言います。それでも俺がここに呼ばれた理由は」

「うむ。まさに今、人間は生きるか死ぬかの戦争をしているのだ」


 ここからはもう殆どがアドリブだが、向こうはそれぞれで話を作っている。俺はそれに合わせればいい。


「異界の勇者よ。お主にはこれから旅の仲間を集い、そしてこの地に厄災をもたらす物、魔王を撃ってほしいのじゃ。勿論そのための支援も惜しまない、どうか頼まれてはくれんか」


 イベント前から話してて感じたけど、この人は本当に相手を思っているから、こっちとしても好感が持てる。

 そのお陰か、演技なんて無しに答えられる。


「渡りました。俺にはまだ何が出来るか分からないけど、この世界のために全力で戦います」

「良い返事だ。ならばしばしの時間がいる。今宵はゆっくり休んでいくが良かろう」


 そう言って、メイド服を着た使用人のイベント用NPCが部屋まで案内してくれた。


 正直来て直ぐに勇者を送り出す国ってどうなのとはもはや言うまい、それにあの二人が来るんだし、スタートのパーティならチートも良いとこだろ。


 俺は次の朝、言われた通り白を出て旅をする事になったんだが、正直何をしていいのかがさっぱり分からん。


「あの、俺はこの後どうしたら」

「そうだね。先ずはこの王都の冒険者ギルドでギルド登録でもするとしようか」


 きた、序盤のテンプレ。この後の展開については聞かされてないけど、この世界の設定とかは何となく説明をされてる。

 なんでも、ギルドの機能を円滑にするために、あの手この手で新しいシステムを作ったんだとか、最前線のプレイヤー達は本当に何やってるんだ?


 正直俺はまだこのゲーム初めてそこそこの人間だけど、この世界の魔法に使われてる文字をまともに扱えるプレイヤーなんて数える程しか知らない。




(同時刻魔王サイドでは……)


 今頃勇者が白から追い出された所だと思うけど。同時刻に私達は、魔王様の命令でお城に集合している。


「よく集まってくれたな!今から会議を始めるぞ!」


 薄い紫のツインテールゆらゆらしながら、黄金に輝くその瞳で全員を見渡す魔王様、ことお散歩隊のギルドマスターのミュア様?歳的に完全にちゃんが着くくらい幼いんだよね。この魔王様……。


「それじゃあ今日の会議は、命令!勇者と戦いたいからこっちに来るまで殺しちゃダメ!」

「ふふ…………」

「はぁ…………」

「うむ!」

「仰せのままに」


 うん、やっぱりこの魔王様はどちらかと言うと勇者サイドにいるべき人なんじゃないかな……。

 と言うのも、昨日から魔王が魔王して無さすぎて、例えるなら幼稚園的な平和国家が築かれてるんだよね。


 まぁ、そのせいか国民用に配置した魔族AI達からは支持率最低なんだけど。

 そこは腐っても魔王なのか、それとも元々の天性か、この子は良くも悪くも人を惹きつけます。


「頑張ったからプリン食べたい!ライムちゃんプリン!」

「分かってますよ」


 取り敢えず懐かれてしまったのは仕方ないとして、こっちもこっちで土地の開発や改革何かを頑張って、変な声が魔王の耳に入らないように頑張らないと。




(再び勇者サイド)


 ギルドまでの道を通りながら、周りにある露店や宿屋、その他の施設なんかも見てみたんだけど、やっぱどこも完成度が高い。


 手な訳で早速ギルドに入ると、俺らに一斉に集まる視線に、流石に少したじろぎそうになったけど、そこは俺だって勇者役やってんだ、気合で踏みとどまる。


「ははは、スタートから大人気じゃないか」

「これは流石に勘弁だっての」


 つうかさっきからなんの会話ないんだけど、魔法師団長いるんだよな?


「はふぅ……はふぅ……」


 何も見なかった、やべぇ変態がいた。ヤバい、こいつはそんな言葉とうに越してる。

 入って最初の注目だけでこれとか、どんだけ人見知り拗らせてんだよ!?


 その間もフロストさんは気にせずにカウンターに向かっていくし。


「おじゃまするね。新しく冒険者の登録をお願いしたいんだけど」

「あ、はーい今伺いますねー」

「ブッ!?」


 ヤバい、俺は早々に魔王と対峙したのかもしれない………

 何だよあの異様な胸囲!?え、F?いやもう少し………。


「貴方ですね?」

「はいい!?」

「ははは、皆彼女に会うと同じ反応をするんだ」

「皆さんそんなに緊張しなくてもいいのですけどね」


 いやいやいや!?緊張とかそれ以前だから、そのご立派な物を見たらそりゃ世の健全な男子ならこうなるって。


「それと申し遅れましたが、私はこのギルドで受付をしているアルルと言います」

「俺はヤサキって言います」


 互いに軽く挨拶を交わしたら、ギルドに登録をしてもらった。

 これでこのイベント世界でも正式な冒険者だな。初日の小さな成果に頷いていると……


「おいガキが、てめぇ誰の許可を得てアルルちゃんと話してるんだ?アア!!」


 いや、こんなテンプレまで再現しなくて良くね!?


 俺が色んな意味で驚いてると、後ろから刺されるような強烈な威圧感が……


「ギルド内での争い事は厳禁………ですよ」

「いや、これは争い事じゃぁ……」

「お返事は?」

「すんませんしたあーー!」


 こんなことが実際にあるんだと、そう思わずには居られない。

 こんな穏やかそうで、怒気と無縁なオーラ放ってるお姉さんが……なんかめっちゃこぇーんだけど!?


「彼女は割と有名だよ?普段の明るさとは一変して、一度怒らせたら謝罪を聞くまでお説教をさせられるみたい」

「えぇ……」


 もう……なんで俺が勇者やってんのか、もっと強い人ゴロゴロ居るじゃん!


 何とも言えない気持ちを落ち着かせたくて、今日は宿を取って明日の出発になった。


 そう言えばこの街歩いてて思ったけど、なんでどこもかしこも芋しか売ってないのか。俺が見た範囲じゃ店の七割が芋に埋まってたぞ………。


「ああ、それは建国記念日の芋堀祭りのせいだね」


 何となくその辺をフロストさんに聞いてみたら、まさかの知ってたよこの人。いやこの国の人って設定だから試しにって聞いてみたけどまじか……

 因みに芋堀祭りは、年に8回、四季とその始めに、街全体の全員に芋を配って年の豊作祈願をしているんだとか。

 それとフロストさん曰く、この祭りは街の貧民街に住む人達にも配られるから、試運転の時から今までのトータルで、もはや他国も知る大祭になってしまったとか。


 いやどんな経緯だよ、つうか秋以外で芋って収穫出来んのかよ。

 そんな事を考えて、そう言えばこの世界で四季があるのか知らないから、多分収穫は出来るんだろうな。

 量は知らないけど、別に現実でも芋は年中食べられるし。


 取り合いず明日からは、この街を出て幾つか街を挟んだら、帝都と、それから聖都、そんで援軍を頼めたらレベルを上げつつ魔王の所だっけか。

 ぶっちゃけこのイベントでの設定ってあまり聞かされてないんだよな。

 今だって役割決めの時にあった街を経由して行く以外に何も知らない、実際に何万、何十万のプレイヤーが協力して作り上げた異世界、このイベント中は楽しませてもらおうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ