いざ実食!
あとはお肉を焼くだけ、棚の中にあった木櫛にボアの肉を刺しながら、間に平原の中で本当に偶然的に見つけた食材、その名もネギ!なんであるのかは分からないけど理由はきっと元が農村があったりとか、そこがボアに荒らされたとか、きっとそれはそれは壮大なストーリーがあったからだろう。
気にしても仕方ないし、あるならラッキー、肉だけだと絶対栄養偏るからね、野菜大事すごく大事。
その後街を見てたらネギが普通に売っててびっくりしたりといろいろあった。
また少し話が逸れるけど、それは小さな頃、母さん作『お野菜の旅』とかいう謎の紙芝居式の読み聞かせをされて、小さな子供の好き嫌いという理由で、流しの三角コーナー、果てはゴミ袋に詰められた彼等は、そんな好き嫌いばかりの悪い子を夜な夜なさらっては、味付け無しの野菜地獄に連れて行かれると言うのが落ちのお話だったっけか、それから私もビルドも母さんの前では普通に野菜は食べた、お陰様で今は普通に食べられる。
あとこれは後で知ったことだったけど、怖がってしばらくの間、夜を親と一緒に寝ていたんだけど、これが母さんの怖いところで、好き嫌いを治すという建前で、大きくなってあまり構ってくれない私と姉さんとのスキンシップのための作戦と言うのが本当の狙いだったのだ。
母さん……お父さんは兎も角私は結構母さんを怖がってますよ?
まぁ泣き顔で怒鳴りちらしたところに私達からの「パパとママなんか大嫌い」という最大の精神攻撃がクリーンヒットして、それ以降はあんまりしなくなった。
そう……あんまり。
少し昔を思い出しながら作業していたら、いつの間にか肉と野菜は全て刺し終わっていて、そろそろ仕上げなので少し真剣になる。
本来はウナギとかでやるやつだけど、焼き鳥でやっても問題ないよね、肉は猪肉だけど。ふむ、焼き猪……ここでアニメによくあるマンガ肉を想像したそこの君、大丈夫私も同じこと考えてた。
「いきなり頷き出してどうしたの?」
「ルイーザさんは今極限の飢餓状態で意識が混乱してる、今見たのはきっと幻」
「いやそんな極限と言うほど……」
「幻」
「いや」
「幻」
「わ、わかったわよ、もう少し寝ているわ」
「うん、それがいい」
誤魔化しはしたけど覚えていたら忘れるまでこの家を燃やす。
「(何かしら、すごく物騒な事を考えていないかしら?)」
「ダメですよ?ちゃんと寝てないと」
「(あぁぁ!?わかった寝るから寝るからそのコンロからたってる炎柱を止めて!家が燃える!)」
数分後、おふざけしつつも両面にしっかりと味の染み込んだ立派な焼き鳥猪肉バージョンをちゃんと完成させ、やりきった顔をしている私と、そのおふざけのせいで余計にやつれたルイーザさんとの口論があったのは言うまでもない。
因みに完成したのがこちら。
焼き猪 タレ レア度6 料理 品質A
·1時間筋力アップ(大)、1時間防御アップ(中)
焼き鳥として作られるはずが、何故か刺さっているのが猪肉という矛盾を抱えた串焼き料理、甘辛い味に仕上がっており、酒の摘みとしては最高だろう。
あれ?矛盾?これは紛れもない焼き鳥だよ?私が焼き鳥といえばそれは焼き鳥でありそれは鶏肉なのだ。
しかしお腹が限界なのも確かでそれは分かっている。
でも長くない?いつまで怒ってるの?
だけど折角作った料理を無駄にされるのは私も嫌だ、だから未だに文句を言うルイーザさんの口に焼き鳥猪バージョンを無理やり突っ込む。
「んん〜〜!!ぅんまぁ!?なにこれ?初めて食べた……」
「口にあったなら何よりです」
「ねぇライム!、このまま私のところで働かない?こんな料理食べたの初めてだよ」
すると料理の効果で機嫌が良くなったルイーザさんはおかしなことを言ってきた。
料理の評価は素直に嬉しい、けどそれと冒険を辞めるのかはまた別だ、私はこの世界では冒険者、そして私達はまだこの始まりの街以外の世界を知らない。
どんな理由で誘われても、私は私のやりたいことをする。
「ふふ、どうやら無理そうね」
「そうですね、諦めてください」
「あら、知らないのかしら?魔女はしつこいわよ?」
何でかわかってたみたいな反応を返されて何故かまだ諦めてないらしい。
へぇ、魔女って執拗いんですね、流石ルイーザさんです、言葉の重みが違いますね……。
え……?ルイーザさん魔女だったんですか!?
てっきりおんぼろ屋敷のダメ店主か何かかと思ってた。
まぁでももしかしたら、というか確実にではあるけどルイーザとは今後とも付き合いがあるんだろうね、それにスキルスクロールも……。
「あ!?スキルスクロール!早く頂戴!」
「私よりスクロールに意識を持っていかれるのはなんか複雑だけどまぁいいわ、少し待ってて」
そう言ってお店側へ消えていくルイーザさん、さて戻って来る前にお金でも用意しておこうかな。
それからルイーザさんはしばらくして戻ってきたんだけど、何故か手にはスキルスクロールが2つ持たれていた。