いざ行かん、魔導王国へ!
あれから、私と氷菓の割とどうでもいい戦いは幕を開け、最初こそ迷わせる事が出来たけど、相変わらずどんな記憶力してるのか、ちょくちょく構造を変換して到着を防いでいたはずなのに、私が少し休憩でログアウトしていたのを見計らって、ログインした時には既に部屋のベッドに座られていた。
「お帰り。一応先に言っておくけど、逃げられないよ?」
「……はぁ……」
「何じゃ?二人して喧嘩でもしておるのか?」
「そうだね。喧嘩、とは言えないけど。少し幼稚な争いだよ」
「よく分からんの」
まぁ。今回の勝負は私の負けだししょうがないですね。
それに少し前に面白そうなスキルも手に入ったところです。ここら辺が潮時ですかね。
「魔導議会の件、一緒に行くからね」
「こんなギリギリに、それも人の留守を狙ってまで面倒事に巻き込まないでよ」
「私だってこんな面倒そうな連中の根城に、一人でなんて行きたくないよ」
おたか外に溜息を着いて少し休んでいると、扉がノックされた。
どうやら魔導王国からの迎えが来たみたいで、メイド組の人が教えに来てくれた。
「お初にお目にかかります。本日は私と共に、魔導王国にいらしてもらいます」
迎えに来たのは片眼鏡、モノクルって言うんだっけ?そんな無駄に豪華そうな装飾の着いた物を付けてこちらに挨拶をしてくる男は、私と氷菓を見てから、少しばかり氷菓を贔屓しだした気がする。
「貴方ですね。全くの無名でありながら、世の大賢者にすら匹敵すると噂の人物は」
「話はいい。早くして。こんな時間にも出来ることは多くある。無駄話がしたいならお帰りを」
「こ、これは大変失礼を」
殆ど一瞬だけど、私を見た時の嘲笑うのうな顔見て怒ったんだろうけど、別にこんな見るからに自分の利益に貪欲そうな阿呆の評価一つくらいどうでもいいんだけどね。
「ありがと」
「別に、事実を言っただけだよ」
素直に物を言えないのは、どうしてかお互いに困った部分だよ。けど似てるから分かる事があるのもまた事実な事だし、その言葉を答えとしておきますよ。
だけど、改めてこの世界に住むAI達を見て思うけど、本当に感情が豊かと言うか、現実との差異がほとんど無いところは、運営に驚かされるよ。
「いやしかし、素晴らしい屋敷でしたな。やはり良い主人がいるところの従者も、また特別と言うことですかな?」
全く持って呆れますよ本当に。
どう言う原理か空を飛び移動する馬車に乗って、優雅なお空の旅と思ったら、終始飛び交う害虫のは音と言うか雑音と言うか、どうでもいい話のせいで折角の景色が台無しだよ。
氷菓と2人して、既に目の前で相手に取り入ることにしか脳の無い有機物に対して、既に興味どころか、意識すらしていない。
「おっと、随分と話し込んでしまいましたな。全く私とした事が、お着きになった様なので、御支度を」
あれからどれだけの無駄な時間を過ごしたのか、もはや記憶が飛んでいるかのように何も思い出せない程に退屈な時間を経て、ようやくたどり着いた魔導王国は、正しく中世ヨーロッパ、これでもかと言う程に建ち並ぶ石壁の家達や、広々とした中央の広場、そこからでも見える程に巨大だ建物が幾つか。
各国の街中を撮りあげた観光掲示板で見たのだと、中央の大きな建物が今回の魔導議会に関する建物で、その隣の建物が魔法学校だったっけ、改めてこういった場所について調べるのもいいかもしれませんね。
改めて街並みを楽しみながら、馬車の上でのんびり過ごす私と氷菓。ちなみにさっきまで五月蝿かった迎え役の人は、2人でのんびりしたいと言って追い出した。おかげで今のことろは平和そのものだね。
「ねぇライム、図書館ってどこ?」
「今向かってるのが魔導議会、そこにはこの国の王様、魔導王とか言うのが住んでるらしいけど、これは興味無いですよね。図書館は、その脇にある学園から連なるように伸びているあの大きな建物ですよ」
最初に聞いた時は、一般人と学生を同じ場所に居させても大丈夫なのか気になったけど、魔導王とか言うのが、その辺を厳しく取り決めてるから、馬鹿な事をする貴族連中はいないんだとか、まぁその子供まで行き届いてるかなんて知らないけど。
こんな世界じゃよくある話だけど、貴族連中はこのゲームの世界でも実際に自己顕示欲が強すぎて困る。
私達のギルドに、一体どれだけの刺客を送り込めば気が済むのか。
まぁ、一般の利用者でも、よっぽどの馬鹿でない限り、ただ静かに本を読んで終わるみたいだし。
と言うか見てて思ったけど、その問題を起こす馬鹿が逆に気になったけど、なんでそう言うのが居るのを知ってるのか、多分見たんでしょうね。
一人頭の中で掲示板を見ていた時のことを思い出していると、馬車はやたらと威圧感というか神聖さと言うか、議会というのにも納得な外観をしている巨大な建築物、件の魔導議会という組織の本山の前で止まっていた。
「お待ちしておりました」
最早城と例えてしまっても誰も疑問に思わなそうな程に巨大な建物、その扉の前では、迎えに来たであろうメイドさんが、静かに礼をして待っている。
「やっぱり本職は凄いね」
「そりゃそうでしょ」
そもそも私は、メイドになりたかったんじゃなくて、メイドの多方面への適性が明らかに可笑しかったからなってみただけで、別に本職の人と比べられても、そりゃあ見劣りするでしょ。
建物の中は、外から見ていた以上に、一つ一つのフロアが大きく作られていた。
内観は……某有名魔法使い映画に出てきた銀行みたいなのを連想してしまう。
「グリンゴッツぎ……」
「止めなさい」
考えてる事は同じなのか、わざわざ口に出そうとした氷菓を止めておく。
しっかりついて行きつつも、2人で漫才のようなことをしていると、
「おっと……」
「すみません、大丈夫ですか?」
「いえいえ、こちらも前が塞がっていましたので」
「分かりました。こちらも先を急ぎま……御2人ともどうされました?」
「「いえ、お気になさらず……」」
タイムリーすぎる出会いに、私と氷菓の言葉がシンクロしてしまった。
と言うか……居ちゃったよ小さいおじさん!?
それから2人して悪ノリして、結果的にいえばツッコミ役がいないがために収集がつかなくなって、待機所に通されるまで続けていた。
「「疲れた……」」
全く変な体力を使わされたものです。
「あー!!」
今度は何なのか、取り敢えず声の方に視線を動かすと、見るからに死霊使いですみたいなオーラを放ってる女の子と、それとは真逆の真っ白な法衣を着たお姉さん的な雰囲気の2人がいた。
「あなた何時かのメイド!」
「あなた方で最後ですかね?」
法衣さんの方は今回の褒賞についてだと察せるけど、死霊さんの方は何を言ってるのかな?
「まさか忘れたの!?レーゼと一緒に助けてあげたのに!?」
「あ、あの時のなんか騒いでた子」
「シーフォーンー!!」
いや、どう見てもシフォンとはだいぶ離れた、なんと言うか禍々しい雰囲気はするけど、決してそんなメルヘンな雰囲気はしない。
「まずは自己紹介をしましょう。私はメルフィー、ギルド輝く聖剣に所属しているわ」
「シフォン……闇夜の剣所属……」
「氷菓、所属ギルドはリベルシング」
「同じくライムです」
見た目道理の性格なのか、この場を纏めて自己紹介をするメルフィーさん、そこまで歳上には見えないけど、何でかリズさんと同じ苦労人なんですかね?
と言うか、2人してフィロのお兄さんのギルドに所属してるんですね。
暫く4人で話でもしながらのんびりしていると、ドアがノックの後に開かれて、用意が出来たことを知らせに来た。
「ご案内致します」
いよいよ始まるんですね。
退屈で面倒ですけど、王妃様からも出来るなら真面目にって釘を刺されちゃいましたし、少しだけしっかりやりますか。




