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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
二章
76/111

家出少女はお姫様

 今日行われたギルド結成を団員達に向けた宣言が終わって、今はこの後にリズさんの方が主催する、お祝いの席の方で出す料理の食材を買い出したり、案の定迷宮から産地直送とかをしていたんだけど。


「おいメイド。私を助けることを許すぞ」


 どうしてこんな事になっているのか、少し前に話を戻すと、始まりは多分ギルドを出て商業区を歩いていた時からだと思う。




 その時商業区を歩いていた私は、街中にいる国の兵が少し騒がしくしている事に不思議に思って、周りの住民達に聞いてみた。


「あの」

「ああ、ライムちゃんじゃない、どうしたの?」


 ちなみにこの国の住民達とは割と仲がよかったりする。

 この街に着いてから、家事ギルドの貢献度稼ぎの一環としてだけど、少し住民達の困っていることを解決したり、お手伝いしたりと、色々とこの国を探索と観光ついでにやっていたら、いつの間にかこんな感じで評判がとても良くなっていたのだ。

 今ではここの奥様方の会話から国のあんな噂やこんな噂まで聞けたり聞けなかったり。


 それはそうとなんで騒がしいのか聞いてみないと。


「街の兵士達が少し騒がしくしていますよね。あれ何かあったんですか?」

「あれねぇ」

「はい」


「はぁ……はぁ……」


「私達にもさっぱりなのよね。他の噂だと、他の国とあまりいい関係が築けていないとか」


「はぁ……はぁ……」


「こんなにも平和な世の中になったって言うのに、戦争なんて起きなきゃいいけど」

「はあ」


 おばさんそれはフラグですよ。と言うかこの国って他国との国交どうなってるんですかそれ?

 でも、それだと国の兵士がこんな所で騒いでいるのには納得が行かないですし……。


「少し調べてッ」

「すまん先を急いでいるんだ」


 随分ど慌ててるみたいだけど、なんだったんですかね?


「なんだいあの子、ぶつかって謝りもしないなんて」

「気にしてませんし、別にあれくらいはなんでもありません。私もそろそろお暇しますね」

「そうかい、ライムちゃんも気おつけてね」

「はい」


 私はこの世界にとっては、仮にも異世界の神からの使いみたいな立場ですけど、そんなゲームの設定言ってもってところです。

 さて、さっきのあの子は何処に消えてしまったのか。


「フゥ……」


 広域気力感知、広域魔力感知の併用と、そこに時空魔法の属性を上手く乗せて更に感知範囲の拡大……こっちは元々街中全てが範囲に入ってるから必要ないか、それじゃあ精密性を向上を最大まで、この人混みの中からさっきの子と同じ感覚や魔力を持った人間を探す。


「………いた」


 けどなんなんですかこれ?この子の周り、既に誰からか包囲されてる。

 ただ私用で急いでいるだけの女の子にしては、随分ど周りが騒がしいみたいですね。


「ちょっと急ぎめッで!」


 街中でこんなスピード出す事なんてなかったけど、慣れれば案外楽しいものですね。


 視界を流れる景色を見ずに、ただ目標の場所に急いでみたけど、とても仲がいいようには見えませんね。


「こらこらお嬢さん、一体何処に行くのです?」

「ちっ、離せ!私を誰だと思っているのだ!」

「ひゃひゃひゃ!おいおい震えてんぞ?」

「旦那ァこいつもう殺していいか?」

「ダメだ、こいつには利用価値がある」

「ちぇ」


 なんでしょうねこのお馴染みの天界、見てしまった以上は放ってもおけないし、仕方ないですね。

 女の子を抑えている下っ端だと思うヤツから。


「フッ!」

「ぎゃあ!?」

「だっ、誰だテメェ!」


 誰だって、そりゃあ。


「ただのしがない普通のメイドですが?」

「何処に一瞬で背中に回って蹴り飛ばすメイドがいるんだよ!?」

「ここですが?」

「てめぇ……舐めてんじゃねぇぞ!おいお前ら!そいつを殺して早くガキを連れてくぞ」


 当たり障りのない返答だったんだけど、何をそんなに怒っているのか、もしかして今蹴り飛ばした男の人は兄弟さんかなにかなのかな?


「あまり手荒では困りますよ?」

「うるせぇ!この際擦り傷程度は了承してもらうぞ」

「仕方ありませんか」


「ん?」


 武器を構えて近づいてくる荒くれ共に対処しようと思ったんだけど、なんでか服を掴まれてしまった。

 しょうがないですね。それならこのままやりますか。

 私は女の子の手を取って繋ぎ直す。


「少し待っていて下さい」


 そう言って女の子を抱き寄せて視界と、そして聴覚も風魔法の応用で音を聞こえなくして準備完了。


「『魔魂装』」


 スキルの力は私の力、私の能力はスキルの能力、器用と敏捷に優れている私のステータスで、魔魂装みたいな物質操作系のスキルを使えば、それだけでも驚異になる。

 私達を取り囲んでいる男達、その背後にあっさりと出現させた魔魂装は、そのスピードという名の力をそのまま威力に変えて牙を剥く、一瞬にして数十人の男が気絶したわけだけど。


「さて、あなたはどうしますか?このまま戦うなら……容赦はできません」

「……、それはまた随分と寛大なお心ですね」

「さあ?この子がいないのなら別ですけど」

「そうですか。ではこの場は退かせて頂きましょう」


 そう言って男は一瞬で消えてしまった。多分空間転移、それもある特定の場所への片道切符ですね。


「行先は……」

「んッ!」

「えっ、ちょ?」


 一体なんなんですかこの子は?


「衛兵が来てますよ。助けてもらわなくていいんですか」

「………」


 こんな私よりも小さな女の子が……国の兵士達を頼れない理由がある程に追い込まれているなんて、やっぱりさっきのあのおばさんの噂話、割と本気な方で考えた方が良かったかな……。


 しばらく引っ張られ続けて、本格的に裏道の奥まで入ってきたところで、唐突に振り向き、その頭に被ったマントを外す。

 そして……。


「おいメイド。私を助けることを許すぞ」


 これはどうしたらいいのか、とりあえず聞くことは。


「その前に、あなたは一体何者ですか?」

「なっ、何故だ?私が助けていいと言っているのだぞ!?」

「信用問題です。例えあなたでなくても、国の兵士に追われているあなたを、ここで無条件で助けた場合、最悪私達は国を追われることになります。わかって頂けますか?」


 ギルドを作った今、下手に厄介な事情を抱えて迷惑をかける訳にもいかないし、動くなら最低限の事情は聞かないといけない。

 さて、どうするんですか?


「わ、私は……ッ、私は!この国の第三王女ティアライト・リネルティス」


 なるほど、第三でも王女は王女です。城内から居なくなったとなれば、それはさぞ大騒ぎでしょうね。

 それならさっきからの()()()()にも納得がいった。


「王女様でしたか。それで、どうして兵から逃げてるんですか?」

「そ、それは……」


 この子が本当に王族であるのは、さっきの襲撃、それと今もずっと視線を向けてくる相手の視線が証明している。

 なら、助けるかどうかは理由しだいだけど。


「お、お父様が悪いのだ!私は嫌なのだ……いくら相手が王子でも……知らない奴となんて嫌なのだ!」

「ん?」

「私は絶対に嫌だ!御付き合いなんてしないぞ!」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。


「はぁ……分かりました」

「へ?」


 なんなんですかね、この既視感。

 でも、それなら私は助けてもいいかな。どうせ直ぐにお迎えも来るでしょうし。

 こういうのは面倒であんまり好きじゃないんだけど。


「この国の第三王女、ティアライト・リネルティス王女様。私、ライムは、私の力の及ぶ事で宜しければ、あなたを守ると誓いましょう」

「う、うむ!こちらこそよろしくな!」


 そうと決まったら一旦戻りますか。


「じゃ、行きますよ」

「行くって何処に?」

「私のギルド、その拠点にいると思うギルマスの所に」


 連れていくにも先ずは一言断りくらい入れておかないと後でなんか言われるのが面倒です。

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