使用人は思いの外人気?
午後から他の皆んながそれぞれ自由に動く中で、私は何故かもう一つ午後の部ということで、リズさんとギルド拠点内のホールで別枠の募集で来た人の相手をしている。
そしてその部門とは何かと言えば……。
「思いのほか集まったわね使用人部門」
「えっと、何ですか?使用人部門って」
「ん〜、多分ライムちゃんが思ってるよりも、ライムちゃんってプレイヤーは有名で人気なの」
だからイベントなんかで私の活躍する姿を見て、それで憧れを持ってくれる人は結構多いみたいで少し反応に困る。それも今この場所に30人以上は集まってるみたいだし。
私でなくても、ラムネや氷菓はこの前のイベントで活躍してて、それにあの見た目の変化、ラムネは知ってるけど、氷菓のあの見た目が何だったのかは少し気になる。
「それじゃあこれから使用人部門を始めるわよー!」
「と言っても何するんですか?」
「ライムちゃんにはここに居る皆をメイド、若しくは執事に転職させるのを手伝って欲しいのよ」
「あれ?でもそれだと」
「そうね。ステータスダウンを一時的ではあるけど受けるわね」
このゲームはキャラを作り直さなくても、その転職先の職業に合わせたステータスに数値が置き換わって、ランクダウン的な感じて下の職業に転職する場合は、ステータスだけじゃなくてレベルも下がる。
けどそれをしてでもやる意味は、スキルをそのまま持ち越せるから、中には何回も転職して沢山……は分からないけどスキルを多く持ってる人は多分何人かは居ると思う。
「でもこのためだけに転職っていいんですか?」
「一応許可は取ってるわ。だからライムちゃんは皆を家事ギルドに連れてってね」
このまま居てもどうしようも無いし、気にしなくても大丈夫なら別に気にしなくてもいいか。
「わかりました。それじゃあ皆さん着いてきてください」
改めてこの街の中をこんなに人を連れて歩いた事なんて無かったから、色んな意味で新鮮ですね。
それとこの街のギルドマスターがどんな人なのか、そんなことを考えながら歩いてたら、あっという間に家事ギルド前まで着いてしまった。
「それでは皆さん、この家事ギルドでクエストして、料理、裁縫、掃除の3つをしてもらう事になるとおもいます。それをクリアして、スキルを3つとも取得出来れば、多分使用人系の職には転職出来るはずです。頑張ってください」
そう言って送り出してから私も中に入ってみると、受付の人に呼ばれたのでそっちに向かう。
「ランクアップ?」
「はい。ライムさんの家事ギルドへの貢献度が一定以上のため、実は今すぐにでもランクアップしないといけないんです」
どうやら前の町を出た後に、私のギルドへの貢献度を見えみると、今のランクのままなのはギルドとしても問題らしくて、だから私が家事ギルドに来たら、直ぐにでもランクアップしてほしいとの事、なのでここは素直にランクアップしておく、そうすれば今までよりも待遇も良くなるみたいだし。
「ところで、私そこまでこのギルド貢献した覚えはないですよ?」
「私達の家事ギルドは、実はつい最近出来たばかりなので、そこまで明確な目標は無いのです。なので他の専門的なギルド、それこそ料理ギルドや裁縫ギルド等のようなクエストも特に用意はしておりません。ですから誰かに料理を振舞ったり、洋服を作ったり、そう言った誰かのための行動を私達は基準としています」
なるほどね。それなら私は結構な人にご飯作ったりもしたから、ランクが上がるのも納得です。
しばらくすると、スキルを取りに向かった人達が戻って来て、早速転職のために冒険者ギルドに向かった。
この街にある冒険者ギルドは結構大きな建物で、うちのギルドホームより少し小さいくらいかな?まあ、うちのギルドホームは現状かなり大きな部類だと思うけど。
正面の大きな扉を開いて中に入るけど、内装自体は最初の街の冒険者ギルドとそう変わらない。
「ご要件は何でしょうか?」
「この人達の転職をお願いします」
「承りました。ではそちらの皆さんはこちらへどうぞ」
冒険者ギルドのクエストを見ながら暇を潰して待つこと数分、転職が終わったと思う人達が戻って来た。
「ライムさん、転職終わりました」
「そうみたいですね」
「それでライムさん!」
「はい?」
転職が終わったことを知らせに来た女子二人が、何かを言いたそうにして、一息ついてから意を決したように話し出す。
「それで……その……」
「メイド服ってどうしたんですか?」
そんな事?それなら職業について調べればすぐに分かるけど、ここにはあのオカマギルマスはいないし、別に隠す必要も無いわけだからいいかな。
「メイド服は自分で製作するのをオススメします。メイドは自分で製作したメイド服の着用時に限り、自身のステータスに補正がかかるので」
「なるほど……」
「でもそれなら今すぐって訳には行かないか……」
「製作は兎も角、材料の調達と材料の加工は手伝いますよ」
「「本当ですか!?」」
やたらと食い気味に聞いてきた二人に、私は約束すると言って、その時には他の人もついでに連れていくことにした。
次の日の日曜日。今日はは昨日約束した通り使用人部門の人達と材料の調達、は正直もう必要無いから、既に加工してある材料を渡して家事ギルドにある裁縫室に向かう事に。
「ん〜、作るならライムさんみたいな可愛い感じがいいなぁ……」
「そうね……それならメイド服のデザインを統一しませんか?」
「「それだ!!」」
女性陣のメイド服作りはなかなかに盛り上がっているみたいで、男性陣も執事服の製作には力を入れているみたい。
「やはりここは無難なデザインで統一するべきか?」
「作る側としてもそれが楽だし、下手にいじるよりはまだいいんじゃないかな」
「だな、それでいこう」
どちらも作る服のデザインを決めたみたいで、熱心に布を切り分けたり縫い合わせたりと作業を進めていく。
待っている時間は、迷宮に送り込んだ分身隊が手に入れたアイテムを流しながら確認していく。
私の分身は現在進行形で100階層より更に下、数えるのが面倒だから後で暇な時にでもそれは確認するとして。
「ふむ……」
スキルやステータスに制限をかけるなら、そろそろ武器の方の強化にでも入ろうかなと思ったけど、やっぱり余裕もって攻略出来るような階層じゃ、私のスペックを底上げ出来るような武器の素材は見つからないか……。
「迷宮内の攻略は続けるとして……外ももっと探し回ってみますか」
取り敢えず今は探すしか出来ないし、今知っている中でも幾つか心当たりはある。
今後のやりたい事を少し纏めて、アイテムボックスの確認を終わらせると、完成した給仕服を着た皆が戻って来た。
「お待たせしました」
「どうですか?」
「皆さん戦闘がしやすいように、少しアレンジはしましたけど、ライムさんみたいなデザインで統一したんです」
なるほど、確かに同じギルドで給仕している者同士、ある程度の統一感はあった方が面白いですね。
「俺らもよく出来てるだろ」
「こっちはあまりアレンジはしてないけど、女性陣と同じで統一してみたんです」
男性陣の執事服も、見た目はよくアニメとかマンガで見るようなデザインだけど、それも統一されているとなかなかに映えますね。
「それでは戻りますか。それからまた後日ギルドに集合出来る人は集まって欲しいみたいです」
それだけ言って今日はもう自由に探索とゴロゴロをログアウトするまで続けて、その日はそのままログアウトした。




