全員集合 前半
昨日は図書館の手がかりが何も掴めずにログアウトする事になってしまったけど、今日は何かしら見つかるといいな。
それと今日からは愁と健二も参加できるし、初めに2人のレベル上げを手伝うとして、その後に図書館の手がかりでも探しますかね、愁ならきっといいヒントくれるだろうし。
「へぇ、その図書館の文字を読めるようにするためね」
「なんかわかる?」
「まだゲームしてないんだから分からないって、あとお前……俺の焼きそばパン食うなよ」
「パンは美味しい」
これは私が悪いのでは無い、私の前に美味しそうなパンを置いておく愁が悪いのだ。
「それじゃ私も〜」
「やらんぞ」
「ですよね」
「早い者勝ち」
「違うぞ?」
すると隣のクラスから健二が来た、随分と遅いね何してたんだろ。
「おせぇぞー健二!」
「悪い悪い、それとそのゲームの事だが皆はどんな職業にしたんだ?」
「いつもの貧乏くじ、流石だな健二」
「おい瑠璃言い方な!」
まぁ瑠璃が言うのも仕方ないでしょ、健二は毎回私達の足りない部分を補う様に回ってくれる。
しかし今の私達か、私は前衛はもちろん今後は支援や遠距離にも対応出来るように頑張るつもりだけど、真奈は多分筋肉一択だし、瑠璃は魔法一本、愁は多分アレ目指すだろうし、そうなると足りないのってやっぱり防御力かな。
その辺を健二に話してみると考えてみるとの事、この後の参考のためにある程度知ってる職業なんかも言っておく。
放課後は恒例の全力ダッシュで家に帰ってから、やる事やってゲームにログインする。
今日は早めにログイン出来たから、噴水前に待っていると、すぐに2人らしいプレイヤーが近付いてきた。
「またせたな、お前だけか?」
「2人は少し図書館のことで、呼べば来る」
愁は紫色の長髪を後ろで一本にまとめて、前髪で片目が隠れている、というか見た目というか構えというか、もう初めから目指す気満々のようです、あるといいね進化先に。
健二は全くと言っていいほどいじってないようで、普通に黒髪黒目のいかにもな日本人の見た目だった。
つまらないね〜。
「ゲームなんだしもっと遊べばいいのに」
「それ言うならお前もな」
「冗談はそのでかい図体だけにしてくださいよ」
「鎧な!これ鎧のせいだから!」
そもそも私の銀髪も蒼い瞳も元々のもの、母さんからの遺伝だから仕方ない。
私はリアルでもゲームでもある意味ファンタジーしているのだ。
「それで図書館だっけ?」
「その前にレベル上げでもしよう」
「なら行くか、アイツらも呼んどいてくれ」
それから2人を呼んで待つこと数分、何か騒がしくなってきたと思っていると、遠くから迫る影が2つ、言わずもがなだが、問題はその奇行である。
片や街が破壊されない事をいいことに、地面に格闘技使って突進してくる脳筋に、片や街中で魔法のバフをかけながら全力疾走の爆弾魔。
さて、このカオスな状況誰が止めに入るのやら。
流石にここまで悪目立ちしている2人と知り合いとは正直なところ言いたくない。
なのでこう言う時はいつも通りの適材適所というわけだ。
「ゔ」
「あ゛」
「人に迷惑はかけるなってよく言ってるつもりだったが、どうやら説教喰らいたいらしいな」
「トムヤムクン私達は先に行ってよ」
「よしライム、見張りをするか同罪か選べ」
「見張ってますはい」
「(俺は結局どうすればいいんだ?)」
その後ラムネによるお説教は暫く続いたけど、流石に時間を無駄にする訳にもいかないため、途中で止めてもらっていざ街の外に。
ラムネが公共の場で説教してる間、私は2人が逃げ出さないように見張りながらただ傍にあったベンチに座っていて、何をするのか分からないトムヤムクンもとりあえず隣に座って待っていた。
説教してる本人は怒ってるはずなのに何故か笑ってるように見えるし、怒られてる本人達に至ってはゲームの中なのにすごい老けていた。
時間とかもあるからってことで助け舟を出すとすぐに元に戻ったけどね。
初めて街の外に出た2人の反応はバラバラだった。
「へぇ、随分と作り込まれてるのな」
「それに活きのいい動物の気配がする」
今のラムネの言葉には正直驚いてる、既に気配察知を使えるのかとも思ったけど、多分リアルの方でも出来る完全なセンススキルだね、やり方は違うけど私も出来る。
「さて、これはパーティー戦をするのか?」
なんかとってもいい笑顔で振り向いてきた。
どうやら初陣で1人で暴れてきたいらしい、別にそれは気にしてないから任せると言うと、近くを通りかかったウルフの群れにあえて向かっていった。
「なぁ?流石に俺は初めは無理だぞ?」
「まぁ初めはその辺のリトルボアとぶつかり稽古でもしたら?因みにボアから苦しそうな声がしたらトムヤムクンを倒します」
「それもう反撃するなって言ってない!?」
その通りだ、しかしトムヤムクンは私の事は勿論メンバーをよく見て理解してるから、今までの流れとかでちゃんとこっちの考えを理解してくれる。
あれ?言ってて気持ち悪いと思ったぞ。
「なんか今貶された気が……」
「ハッハッハー!モンスターなんていくら来ても無駄だー!」
「ふふふ、これも魔法を覚えるため、人類の成長に犠牲は付き物」
「……やっぱりぶつかり稽古しようかなぁ、てライム!?」
「はぁぁ〜………」
もふもふ達よ、せめて来世では幸せに生きるんだよ。
「もっと斬らせてくれよ」
「ふふふ、逃げ場はないわよ」
「さぁ来いよ!まとめて相手してやんよ!」
「はぁぁ〜……」
「待って!?カオス過ぎすからちょっと待って」
早速作られつつあるカオスな空間、始まりの街付近の平原には今、モンスターの頭と身体が綺麗な断面でお別れしちゃってる死骸に、もはやなんのモンスターかも分からないようなミンチ肉の山、骨だけを残して炭となったモンスターの成れの果て、そしていつものように首にナイフを一撃入れられた後の死骸、そんな中1人草むらから飛び出してくるボアとぶつかり稽古してるトムヤムクンがいた。
『短剣のレベルが20に到達しました。スキル【連続切り】を取得しました。』
『短剣のレベルが25に到達しました。スキル【短剣の心得】を取得しました。』
『暗殺のレベルが15に到達しました。スキル【暗殺者の瞳】を取得しました。』
『水魔法のレベルが5に到達しました。スキル【ウォータースラッシュ】を取得しました。』
『風魔法のレベルが10に到達しました。スキル【エアランス】を取得しました。』
『土魔法のレベルが10に到達しました。スキル【ストーンランス】を取得しました。』
『土魔法のレベルが15に到達しました。スキル【ストーンウォール】を取得しました。』
こんな感じて過ぎていった全員集合の初日の前半、私には可哀想なモンスター達の斬殺死体、ミンチ肉、黒い炭の山を、せめてもと埋葬するしか出来なかった。
少し話が変わるけど、私がこのゲームを初めて暫くして、たまに要らない、必要ないと言って解体もされずにエリア内に残されるモンスターの死体がある。
始まりの街だからね、どうせその付近で手に入る物なんてたかが知れてるのだろう、それでも放置されている可哀想な動物達を、せめてもの弔いとして、土に埋めて帰してあげているのだ。
因みに私の魔法スキルはそんな都合もあって当然のように土魔法が現在スキルレベルがぶっちぎり状態だ、穴を掘る魔法はまだないけど、そこら辺にいい墓石がないっていうのもあって土属性の初級魔法『ロックバレット』で小石程度ではあるが、積み上げておくのである。
「魔法だからすぐに消えちゃうんだけどね」
まぁ気持ちの問題なんだよね、ないよりマシ、ただの気晴らしです。
それよりもだいぶレベルが上がって来てるなぁ、確かクレイさんの情報だと、今一番攻略の進んでる人でレベルが24、リズさん曰く進化手前の可能性があるかもらしくもしかしたら進化を1番にするプレイヤーって言われてるらしい、スタートして間もないけど、私も地味に背中見えてきたかな?
名前 ライム 短剣使い Lv9→15
生命19→25
魔力58→70
筋力19→25
防御19→25
敏捷33→45
器用173→185
スキル
短剣Lv18→26、暗殺Lv13→19、気配察知Lv14→21、料理Lv1、裁縫Lv1、掃除Lv1、錬金Lv1、火魔法Lv4、水魔法Lv4→8、風魔法Lv5→12、土魔法Lv6→17、光魔法Lv5→8、闇魔法Lv2