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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
一章
56/111

未来への約束を

(ラムネ視点)


 全力でぶつかった戦いは、相手の撤退によって終了。結果的に見れば引き分け、だけどステータスがもし同じだったら?恐らく俺の負けだっただろう。

 そんな思いから、悔しさが胸中から溢れて、それを当たり散らすように、すぐ脇に生えていた木をただ思うまま斬り倒す。


「クソ!」


 こんな所に何時まで至ってしょうが無いと自分に言い聞かせて、俺は拠点まで戻って来た。


「ラムネ!戻ったのか!怪我は無いか?」

「……」


 そう言って戻って来た俺を迎えてくれたシルヴィ、俺が黙ったままなのを心配したみたいで、少しあわあわしだした。


「ど、どうしたのだ?やはり何処か……」

「すまん」

「へ?」


 約束を果たせなかった事に対しての罪悪感と、どうしようも無い悔しさからか、口から自然と出てしまった謝罪に、いきなり過ぎたか変な声で首を傾げるシルヴィ。


「約束を果たせなかった……」

「ははは!そんな事か、それならもう良い。たとえ片腕1つだろうと、一矢報いてくれた事に変わりわない、これならあやつも文句は言うまい……」


 そう言ってシルヴィもそれ以上は何も言わなくなり沈黙が続く中、リズさんが静かに人払いをしていた。


「はぁ、何時まで下を向いておる。早く行くぞ、早く報告とやらを済ましに行かねば、リズが怒るからな」

「そうだな、それじゃあ行くか」

「ああ!」


 その後だった。テントに向かおうと進み出した直後にシルヴィがいきなり倒れだしたのは。


「シルヴィ!?」

「ははは……すまんなラムネ、どうやらこれまでらしい」

「何言ってんだよ」


 訳がわかんねぇ、何がこれまでなんだよ!


 さっきの戦闘で荒れた思考は、この状況にただ混乱するだけだった。見るとシルヴィは、足の方から光が散っていて、それに続いて徐々に薄くなり、最後には溶け込むように端から消え始める。


「フィロ!」

「は、はい!待って下さい!今何とか……」


 回復魔法をた読む為にフィロを呼んで、それにすぐ様反応してくれたフィロが、直ぐに回復魔法を発動させようとすると、それを手で抑えて止めるシルヴィ、何して………。


「無駄だ。私の身体はもうここに無い、こうなっては回復魔法も効かん」

「そんなのやって見なきゃ」

「ありがとうな、でも無理だ。私の存在を留めていた器も、それを動かし続けた私の力も……もう限界なんだ……」


 ダメだ、頭が回らない。こんな事になってるのに、何か無いのか、この状況を何とかできる何か。

 すると誰かが歩いてくる音がして、そっちを向くと氷菓が近ずいて来て、真剣な顔でシルヴィの手を掴んだ。


「『トレース』これでまだ暫は時間が出来る」

「驚いた……だが感謝する。ラムネ、私が消えるのは変えようが無い、だから最後だ。」


 未だに混乱している俺を見て、それでも話し始めるシルヴィに、俺は今だに整理のつかない思考を止めて聞くことに集中する。


「最初にお主と会った時には……私はもう既に死んでる様なものじゃった。最後の最後、ようやっとあやつの仇を討ってくれた」

「何言ってんだよ……俺はまだお前の……」

「ははは……さっきも申したが、たとえ片腕だけだとしても……それだけでも十分じゃ。これで私はあやつの元に……笑って行けよう」


 そう言って笑うシルヴィの身体は、既にお腹の辺りまでが消えていた。


「それとな、最後にお願いじゃ」

「なんだ?」

「今私の核になっている魔石で……お主の武器を作ってはくれぬか?」

「なんでそんな……」


 訳が分からなかった。また混乱し始めた思考の中、シルヴィは笑ってきた。


「全く……ラムネは私が居ないとダメだな。しょうが無いから、お主の武器として、お主を傍で支えてやるんじゃ……何も出来なかった私からの………最後の贈り物じゃ」

「クッ……!」

「そう悲しそうな顔をするな………たったの一時じゃった……それでも私は、最後にラムネや皆と一緒で楽しかったのじゃよ…………だから……さようならじゃよ………」

「シルヴィ!?」

「これからのお主らの旅を、あやつと一緒に見ていてやる。それで何時か、約束を果たしてくれ、決して忘れるなよ………私は何時だってお主の傍に……心の中に居てやる」


 そう言ってシルヴィは、消える寸前に俺に顔を近ずけて……。


「チュ……ははは……こんなタイミングで申し訳ないな。好きじゃよ……ラムネ……」


 とても柔らかな感触で、体温なんて全く感じたいのに、それでもどうしてか暖かくて……消えてしまうその最後まで笑っているシルヴィに対して、俺は少し苦しげな笑顔を浮かべて、それでも返すべき言葉は確りと。


「あぁ……俺もだ。お前は俺にとって、最高の相棒だよ」

「………」


 そう言った俺に、シルヴィは何も言わず、仕方がないと言うように笑った。だけど今の俺にはその笑顔だけで十分だった。それだけでも十分な位に俺は………。


「全く、男なんだしさ。そう言うのは最後まで我慢したら?」

「………」


 近くでそれを見ていた氷菓からそんな事を言われちまった。気が付けば俺の頬には、自分じゃ止められないくらいの勢いで涙を流していた。

 この感じ、何時だったか………俺は本当に、何も変われてないな……何時だってお前らを支えようとして、実はどっかで支えられて………。

 そこまで考えた所で、俺は自分の涙を拭い前を向く、いつの間にか手に握られていたシルヴィの魔石をアイテムボックスにしまって、リズさんの居るテントに向かって歩き出す。


 俺のこの世界での目的、その1つが今決まった。

 俺はあの魔族とまた会って、そんで今度こそは正面からたたっ斬る。


 そんな思いを心の中で固めている中もイベントは進み、未だに残っているイベントモンスターの残党を処理して、気が付けばイベントは終わっていた。

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