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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
一章
55/111

第2回イベント 最後の戦いは

(ラムネ視点)


 あいつらにそれぞれ指示を出した俺は、戦力が少なくなって逃げ惑っている攻略組の連中を、容赦なく殲滅している魔族の軍団長らしい、人間の歳で言えば中年位の見た目のおっさんに猛スピードで突っ込む。


「ぬッ……!?」

「へぇ」


 意識の外から割と全力不意打ちかましたと思ったんだけど、まさか攻撃を中断して振り返ってそのまま防ぎに来るとか。


「ふむ、私が感じた強い気配の主か、だが1人で突っ込んでくるとは」

「別に、あんた1人くらい俺でも大丈夫だと思っただけだよ」


 今のを聞いた感じ、初めからずっとマークされてたんだろうな。それもあんだけ派手に戦闘しながらも注意を向け続けてたって事だ、どうやら相当余裕があったらしい。


「先程の人間と共闘しないのを見るに、お前達は別の組織なのだろうな」

「ああ。どうも手遅れだったみたいだが、そこで首が飛んでるやつも別に助ける気は無かったからな」

「そうか。だがお前如きでは、この首……取ることはできんぞ」

「不意打ち1発防いだくらいで、随分ど下に見られたもんだ」


 そう相手に返しながらも、視線を逸らさず、手に持つ剣に自然と力が入る。

 確かにこのおっさんの言ってる事は正しい。

 さっきの不意打ちも、思い出してみれば防ぐ時、目を動かす所かこっちを見てすらいなかった。

 はっきり言うがこのおっさん、滅茶苦茶強い。


 それから暫く互いに剣を構えて打ち合い続ける。打ち合って分かるのは、ステータスで優位に立っていること、そしてそれをものともしないくらい、このおっさんの剣術の技術が桁違いな事。


「どうした?先程の威勢の割に攻めあぐねてる様だが」

「うるせぇ、そっちだってさっきから防いでばかりだろうが」

「ならばこちらもそろそろ攻めるとしよう」

「は……!?」


 目を離してはいなかった、瞬きだって殆どして無かった。それなのに気が付けば、目の前からおっさんが消えた。


「何処から……そこかッ!?」

「ほう……」


 こんにゃろ……。こっちが気付いてから防ぎに入るまで待ってやがった……。


「ハアッ!」


 思い切り踏ん張って相手を弾いて距離をとる。正直ここまでだなんてな、完全にこっちの完敗だよ。

 それにこの感じも懐かしい、まるでじいちゃん相手にしてるみたいだ。

 そんな懐かしさに浸りながらも思考を一旦冷静にさせると、いきなり何処からか攻撃が飛んでくる。


「あいつら……」

「また来たか」


 俺が戦ってる所をずっと見てたのか、不意打ちのつもりだろう攻撃が周りから次々に飛んでくる。

 確認しなくても分かるが攻略組の連中だな。たく、人が必死に戦ってるっつーのに水差して来やがって。


 だがいくら攻撃されてるからって、それで待つような事はもうしない。

 俺は深く息を吸うと、意識の全てを戦いに向ける。これまでの打ち合いの全てを、そして今も尚攻撃を捌き続けるおっさんの動きを見て、その全てを使ってこの一瞬の内に反復と実践を頭の中で繰り返す。

 時間にして見ればたったの10秒足らず。だがそれで十分、それだけあれば最低限だけだが対処してやる。


「ハァ………スゥッ『龍人化(ドラゴノイド)』!」


 スキルを発動させた俺は、身体から光を放ちながらその見た目を変化させる。

 額から刀の刀身を連想させるほど鋭利な角が2本生えて、身体の至る所が人間の皮膚から鱗に変わり、爪も少し鋭くなった。


「むっ……」

「周りの奴らには悪いが……こいつの相手は俺がもらう」


 まだ完全にコントロールができていないからか、少し視界がおかしく思うがこの程度なんの問題もない。


 そう言って周りの魔法や弓矢、衝撃なんかを全て斬って弾いて躱して、ただ目の前の相手に向かって突っ込む。


「フッ!」

「ハア!」


 お互いの武器を激しく動かしながらも、周りから飛んでくる攻撃を、さっきと同様に全て斬り伏せながら、前に出て斬り掛かる。

 それは相手も同じで、互いに周りからの攻撃を寄せ付けず、それでも剣速は少しずつ早くなっていく。

 自分と相手とのステータス差を全力で使い、今も打ち合いながら頭の中で受けた攻撃を頭の中で反復する。

 今目の前に居る強者を倒す為に、その相手の動きを全て観察して、更にその動きを捉えていく。


「ハア!(この小僧、我の動きを観察して?面白い!)」

「チッ……ハア!!」


 いきなりその場で回ったかと思えば、次の瞬間に剣の速度が一気に早くなった。

 こうなったらもう有って無いようなステータスの差で何とか食らいつき、それでも必死に対応する。

 そんな時間が長い事続き、気が付けば周りからの攻撃も無くなっていた。


 そして気が付けば日が落ち始めたのを、差し込む夕日の色で理解した時だった。目の前に居た魔族のおっさんがいきなり消えた。

 それに対して瞬時に警戒と周囲の確認を行うすると、相手は空の中で、剣を振り下ろした体制で固まっていた。


 するともう1人の魔族何処からか現れた。


「ヴィディガ様、任務完了です」

「そうか……名残惜しい所だが仕方ない。全軍、残ったのもは直ちに撤退せよ!!」


 いきなり現れた魔族に何か耳打ちされたあと、この島全体に聞こえそうな程に大きな声で言った。撤退すると……撤退?


「ふざけるなよ……?」


 俺は力任せに飛び上がり一瞬で魔族の背後に回り込む。


「なっ!?ヴィディガ様!」

「くっ!」

「ハア!!」


 今までの戦いから、相手の動きを完全に読み切ったと思った俺の剣は、魔族の首を跳ねるかと思ったが、あと少しの所で剣で流され、それでも食らいついた結果、俺はおっさんから右腕を奪う事に成功した。


「ぐぅ……はあぁ!」

「ウッ!?」


 それでも一瞬苦しんだ顔を見せただけで、すぐさま反撃で腹にもろ蹴りを貰っちまった。


「クソ!」

「またいずれ会う事だろう」

「待て!」


 そう悪態を吐きながらも、蹴られた勢いと重力落下の加速で生じた衝撃に、復帰出来ずふらついてる俺に、そう言い残して魔族共は消えてしまった。

 定番の様の様な台詞は吐いてみるが、当然待ってくれる訳はなく、その言葉は虚しく森に響くだけだった。


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