表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
一章
54/111

第2形態は敵だけの特権じゃないから

(氷菓視点)


 私は魔法でそれに浮かぶと、そのまま魔法陣を作り出した魔族に向かって向かっていく。


「取り敢えずご挨拶に『魔力妨害』」

「な!?」


 周りで飛んでる魔法に自分の魔力を隠して進んできたからね。あなたの魔力察知にも引っかかって無いんじゃないかな。

 結界はそのままに、慌てて周囲を確認する魔族の魔法使いさん、周囲に視線を動かし続けて暫くして、ようやく私を見つけたのか警戒しながらこっちを睨んでくる。


「あなた何者、こんな魔法が飛ぶ中で私に近ずいて来るなんて」

「何者でもないよ、ただの何処にでも居る魔法使い。今はあなたと遊びたくてここまで来たって訳」

「遊ぶ?人間が私と?あなた私が魔族だって知ってて言ってるのかしら?」


 ふむ、なんか気に触る様な言葉でもあったのかな?でも私職業とかレベルは負けてるかもしれないけど、ステータスで勝ってると思うから、後は私個人の技量だし、実際負ける気はしてないんだよね。


「どうせあなたも……」

「何か言った?」

「何でもないわ。いいわよ、相手になってあげる。確かに周りの人間よりは増しみたいだけど、それでも私程じゃ無いわ。泣いて許しを乞うまで遊んであげる」

「随分と優しいお誘いだけど、残念だけど私にはそんな趣味ないわ」


 そんなわたしの言葉の後は、お願いにまずは魔力弾での撃ち合いが始まった。


「なかなかやるみたいね(何なのこいつの魔力弾の数)」

「お褒めに預かり光栄ですよ。それではもう少し激しく行きますか」

「ッ!?(頭のおかしいんじゃないの!!)」


 開始から暫く続いた魔力弾出の撃ち合いは、最初こそ互いに相殺しあっていたけど、私が攻撃の数を増やした瞬間からその拮抗は早々に崩れて、今は私が撃ち出す魔力弾に対して必死に対処している状況だ。


「クッ!(魔力弾の撃ち合いだけだと分が悪い……)転移!」


 すると魔力弾だと不利だと判断してか、相手が転移して距離が開ける。


「はぁ…はぁ…認めてあげるわ、魔力弾の撃ち合いは私の負け。おそらく今の私じゃそもそも勝ち目が無いわ」

「じゃあ降参でもするの?」

「まさか、そんな事する必要無いわ。だって私にはコレがあるんだもの!」


 そう言って魔族が取り出した何か。見た目は何かの根っこみたいだけど、色は血に染ったように赤黒く、更にその何かはまるで生きてる様に脈打っている。

 気になって鑑定しようとしたけど何故か不発、今までには無いパターンだけど、それだけでその存在がやばい物だってよく理解できる。


「それが何か知りたい見ないだけど、残念。コレは私達の中に眠る極限の力を引き出す為の物なの。これで貴方もお終いよ」


 そう言いきって直ぐに、その何かを自分の口に含んで飲み込んだ。


「さあ!これであなたはッ!?」

「?」

「ウッ……があぁぁ!!なん……で……」


 なんかよく分かんないけどいきなり苦しみ出した事に少し困惑しながらも、今の状況の観察をしていると、さっきから苦しんでいる魔族の魔力が急激に膨れ上がってるのが分かった。


「はぁ、はぁ……はは、はははは!素晴らしいわ!まさかこんなに!」


 魔力の膨張が収まると、さっきまでとは見た目が変わって、白かっか肌は日焼けで焼けたみたいに真っ黒に、瞳の色もさっきまでは黒かったのが、一目見ただけで分かるくらいに紅く染ってる。その変化の中でも一番目立つのが、額から目、目から多分心臓まで続いているんだと思う、まるでひびが入ったグラスみたいに、一直線に亀裂の様な黒い痣が出来てる。

 だけどそれ以上に……。


「それ、死ぬ気なの?」

「あら?逃げなかったのね。そうよ、でもどの道この作戦が上手くいかなきゃ終わりなのよ、だからせめてあなただけでも道ずれにするわ。今後魔族の邪魔になるでしょうから」

「なるほどね」


 確かにこの変化は凄い、さっきまでの何とかなるかなって考えが今じゃもう浮かばない。

 仕方ない。向こうがその命を賭けて戦おうとしてるのに、こっちがそれに対して何の対価もなしってのじゃ、魔法を教えてくれた相手に失礼になるしね。

 これはその授業料じゃないけど、冥土の土産に見せてあげるよ。今のところは誰も使えない、私だけのユニークスキル。


「あらあら、どうしたの?あまりの力の差に諦めちゃったかしら。まあいいわ。もう此処は私の空間、今からあなたは何も抵抗出来ずに死ぬのよ。『魔力阻害』」

「……お?」


 今魔族の魔法使いが使ったスキルは私の妨害スキルの上位互換かな?私を対象にある程度の範囲が魔力の流れを乱されてる。


「さあ、落ちていく恐怖と一方的な暴力的魔法の雨の中、生きていられるかしら?」

「はぁ……『精霊化(スピリット)』」


 スキル名を呟いた私の変化は直ぐに始まる。見た目は今まで綺麗な黒髪だったのがまるで夕焼けのそらのような色合いに、瞳も元の黄色い瞳が髪と同じ色合いに、そして更には耳までもまるでエルフの様な長い物に。ステータスでは精霊と似た様な身体になった事で浮遊も可能。


「あなたまさか精霊だったの……!?」


 ふむ、いきなり見た目が変わったらこんな反応になるのかな?まあいいけど。

 質問には答えずに、目の前の魔族に向かって手を翳す。


「『ファイアボール』」

「そんなもの『魔力阻害』!」


 私の放った火の初級魔法のファイアボールに向かって、さっきと同じような対応をしてくるけど、そんな事はわかってるし、分かってておんなじことをする程私は間抜けでは無い。

 私の放ったファイアボールは、魔族のスキルによって掻き消されることなくそのまま進み続ける。それに驚いた反応をする訳だけど、今更分かってもそれは遅い。


 相手の意識を一瞬でも思考停止にした魔法は、本来の倍以上の威力を持って大爆発。空には巨大な花火が綺麗な光ではなく煙を散らす。


「がはッ、がはッ!?一体何が………、そもそもこんなの初級魔法の威力じゃなぃ……」

「そうね。私が使ったのは確かに火の初級魔法ファイアボール。だけど普通の魔法なんかじゃない、私が使ったのは精霊魔法」

「なあ!?」

「それで、降参する?」

「バカを言わないで、さっきも言ったけど、あなただけでも殺す!精霊魔法だかなんだか知らないけどね、当たらなければ意味が無いのよ!」

「交渉は失敗かな……」


 まあ、そりゃ断られるか。降参してくれたら研究に付き合って貰ったんだけど、この様子じゃ無理だね。


 そこから私と魔族の戦いが再開する。私はさっきのファイアボールに加えて最初の四属性の精霊魔法に、更に付与魔法で『追跡』の魔法を全てに施して乱射する。

 それに対して魔族は、躱せないと分かったら、今度は空中を高速で飛行する。

 必死に逃れようとしているのを悪いんだけど、正直ライムが速すぎるのを何時も見てるから、そこまで速いとは思わないし、そんな円を描くように逃げてると当てるのなんて簡単。


「なあッ!?」


 私の放つ逃げるのに必死になっている魔族に、私は追い打ちをかける。

 今も精霊魔法を放ち続けてる魔法陣の操作はそのままに、遅延魔法でストックし続けた分の精霊魔法を、向かう先を予測し、更に逃げ場を潰すように全方位からその全てを解き放つ。


 しかし私は油断はしない、こんな飽和攻撃じゃやられない知り合いが私にはいる。

 だからや油断すること無く次の一手を準備する。案の定魔族も、結界魔法に付与魔法、補助魔法辺りを掛け合わせての一点突破で難を逃れたらしい、お陰で私の魔法もぶつかり合って無くなってしまった。


「はぁ……はぁ……キッ!このバケモノが……!」

「生憎私なんかじゃ相手に出来ないようなバケモノを知っているものでね。その言葉は丁重に返させてもらうよ」

「そう……でももうそれも関係無いわ」


 そう言った魔族は、再びその内側の魔力を膨れ上がらせる。

 ただ違いがあるとすれば、さっきみたいな身体を作り替えるようなものじゃなくて、ただ純粋に魔力だけを己の内で膨張と圧縮を続ける。

 これは多分……。


「死になさい!」


 ただ単純に、簡潔に放たれた言葉と同時に、自分を中心に強烈な光と高熱、そして使用された嵐のような、圧倒的な破壊力を持った魔力の波、この攻撃で近くに居たプレイヤーはその大半が死に戻りしたかも。


「自爆か……」


 爆発が治まって、さっきまであった存在感が全く感じられない空中を見ながら、暫く目をつぶった。

 残念だけど、これくらいの威力じゃ私には届かないかな。それをただ一点に収束されたら流石にやばかったけど、たったの一発なら何とかできる。


 遠くを見ると、もう残ってないに等しいけど、未だに戦闘をしてる集団に加勢に行きますか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ