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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
一章
49/111

第2回イベント7日目 中盤1

(ラムネ視点)


 なんでか隣に座る光龍は、全員が話を聞くために視線を向けたのを確認した後、少し置いてから話を切り出す。


「まず話をする前に、申し訳ないが私は相手の能力がどんな物なのかをあまり知らぬ」

「はあ!?」

「君ふざけてるのか!?」

「そうだそうだ」

「ふ、ふざけてなどおらん!私は真面目に……」


 はぁ、しょうがないなぁ。


「どうだかなぁ!攻略組の奴らがいたんだろ、もしかしたらそいつは俺達を錯乱するために送られたーー」

「おい……少し黙れ」


「怒ってる怒ってる」

「あれは……ガチだな」

「ラムネの悪い癖」

「まぁそれがラムネのいいとこでもあるし仕方ない」

「かっこいいね」


 あいつら一々茶化してこなきゃ生きられないのか?

 あとライム、お前は人のこと言えないと思うぞ。


「なんだい君は!俺はこの場の皆のために……ッ!」

「そう思うなら、少しは話を聞いたらどうだ?少ない情報だからって、それを聞かずに切るのは、味方のためにはなんねぇだろ」

「なぁ!?クッ……!」

「やめなさい」

「リズさん!?だけど俺は!」

「私はやめなさいと言ったの、それに今のはラムネくんの言い分が正しいわ」

「す、すみませんでした………」

「はぁ、いいわ。職業的立場から言わせてもらうけど、私達にとって情報は何よりの宝、何をするにもまずは情報が必要なのよ、仮にその子が攻略組からの刺客だとして、その話の真偽は私が責任をもって決める。この世界に生きるもう1人の私であり、一商人のこのリズの名に誓ってね」


 マジか……リズさんって結構真面目で大人しそうな人かと思ってたけど、実は結構度胸のある人だったんだな。

 周りの奴らも、流石に今の聞いたあとだと口は開かないか。


「それじゃあ、話の続きをしたいんだけど、その前に名前を聞いてもいいかしら」

「な、なまえ……名前は………ない………」


 名前のことをリズさんに問われた時、隣にいるから分かったけど、何をそんなに怯えてるのか。

 それから周りでは沈黙が続くなか、顔を下に向けながらも、確かに震える手で、助けを求めるような、元があの龍だとは思えない、それこそ本当に小さな人間の子供みたいに、俺の袖を引っ張りながら、それで何とか声に出す。


「なま…え……ない………」


 これはあれか?俺に自分の名前を付けてくれってことか?マジで言ってるのか……。

 少し困って後ろを見ると、何か冷たい目線の中凄いニヤケ顔の氷菓と、なんでフィロはそんな顔してるんだ?なんでそんなに悲しそうな顔してんの!?

 内心混乱しながらも、頭では何とか名前を考えてると、ライムが何か手に持ってるのに気付いた。

 あれって確か銀の代わりに鉄で作った食器、なんでそんなもん今持ってんだ?


 言いたいことがわからなすぎる、銀の代わり、銀………銀?

 多分そういうことか、まあ違ってても、そのおかげで良さげなのは思い付いた。


 俺は軽く笑いながら、目の前で震える、大きくて本当は小さい龍の頭に、掴まれてないもう片方の手を置いてから、しっかりこっちを向いたのを確認してから、俺は考えた名前を付けてやる。


「それなら、お前の元の姿から、銀を変えてシルヴィはどうだ……て、どうした?」

「は……これは、違くて」


 何を思っての涙かは知らないが、流石にこのままなのも仕方ないしな、俺はそのままシルヴィの背中をさすってやる。

 てかこれ余計に止まらないんじゃ………。


「浮気かな?」

「う、うわ!?はぅ……」

「おっとフィロ、大丈夫?」

「浮気はお兄さん感心しないなぁ〜」

「後で殺す……!」

「まあ、お前にしてはいい名前だったよ」


 こいつらぁ………!!

 てか浮気ってなんだよ、俺はまだ誰とも結婚どころか付き合ってもねぇぞ。

 なんでそんな有ること無いこと言われた挙句に、フィロの兄から殺されなきゃならねぇんだよ!?


「スン………」

「落ち着いたか?」

「す、すまぬ、もう大丈夫だ」


 まだ大丈夫そうには見えないが、この様子なら今のところは大丈夫だろう。


「その……リズとやら、済まなかった。もう大丈夫だ」

「そう、それじゃシルヴィちゃん、さっきの続きからお願い出来る?」


 ただシルヴィよ、立ち直ったのはいいが手を握っておく必要はあるのか果たして……。

 それとさっきから背中に殺気を感じるんだが……、こっちは気にしても仕方ない見ないようにしよう。

 何とも言えない空気で板挟みにされてると、シルヴィは更に燃料を追加する。


「分かった。私の名はシルヴィ、龍の中でも最上位の光龍で、ラムネのパートナーだ」

「は?」

「お?」

「へぇー」

「パー……トナー」

「ほう……」


 待て待て落ち着こう、何かの聞き間違いかもしれないしな。


「なあ、シルヴィ……いまなんて?」

「ぱ、パートナー………だ、ダメ……か?」


 なんでそう上目遣いで聞いてくるだ?


「なるほどね、それでシルヴィちゃんの持ってる情報って何かしら」

「私が知ってるのは、相手が魔族の幹部という事と、時空魔法を扱うという事くらいだ」


 リズさん……この状況で話進めるんですね。

 だけどもう時間も無いだろうし、今は話を聞くことにしよう、話はその後だ。


 その後もいくつか思い出しながら話してるのを聞いてわかったことって言ったら……相手が魔族でしかもその幹部、時空魔法を使った戦闘をして来て、当時のシルヴィの相方が全力で戦って負けてるってくらいか………正直何とかなりとうな気はするんだが。


「あまり甘く見るな、例え仮に、万に一、億に一だが、お前があいつよりステータスで勝っていても、相手は当時から強い上に、その後200年も経つんだ、魔族の寿命から考えてもまだまだ現役のはず、あの日と同じわけが無い……」

「はぁ…………心配ありがとうな」

「う、うむ………」


 ああ、随分と懐かれたものだな、それに比例してフィロの兄さんからの視線も随分と鋭くなった気がする……。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……………ブツブツブツブツ」

「まぁまぁ落ち着いて……」

「殺す!」


 怖!?

 あそこまで行くともう完全に危ない人じゃんか………。


「それでシルヴィ、お前の知ってることはこれくらいか?」

「そうだな、私の知ってることはそれくらいだ………」

「どうした?」

「いや、これはなんでもない、ただ後で話したいことがある」


 良くは分からないけど、取らりあえずあとのことをリズさんに任せてテントを出る。


「おいお前……うちの妹に手ぇ出すだけじゃなく他の女とーー」

「ハイハイ僕らは戻ってこの事を皆と話し合わないと」

「おい待てまだ話は」


 フィロの兄が何であそこまで怒ってるのかが全くわからんのだが……。

 するとまた袖を引かれるから振り返れば、今度はフィロ本人だった。


「えっと、どうしたんだ?」

「なんでもない」


 えぇぇ………、なんでか知らんが一向に離してくれそうにないんだが。

 なんだこの滅茶苦茶重たい空気、俺にどうしろと……。


「フィロ、取り敢えず一旦お昼、ラムネはその後」

「わかった……ごめんねライムちゃん」


 だいたい予想はできるけど、2人して随分と仲良くなったな。

 それはそうと俺も一旦落ちるか。


「なあ母さん」

「なんだい?」

「いゃ……飯食べてる間で少し聞いてくれないかな」

「一体どうしたんだか……話してごらん」


 それから話していると、母さんは時折優しげな顔をしたかと思ったら、次の瞬間には見ればわかるくらいおっかない顔するし、なんなんだか。

 話してみた結果を言えば……。


「それは愁あんたがいけない」

「え?」


 自分の親からも同じ反応を返される始末、正直何がダメなのか分からないんだが……。


「はぁ……全くあんたって子は。なんでそうダメな所ばかり父さんに似ちまうんだかね……。私から言うことは、その子達とはしっかり話をしなさい」

「そのつもりだけど……」

「ならいいさ、あと柚葉ちゃんにはお礼言いなよ」

「分かってる」


 そっちは簡単だ、この後戻ったらまずは礼からだな。

 ゲームに入ると、丁度いいのか悪いのか、ライムがシルヴィと話しながらのんびり料理してた。


「なぁライム」

「何?」

「ありがとな」

「なんのこと?」

「なんだろな」

「なんだ?」

「はぁ……それが分かるなら、フィロの事もちゃんと見てあげて」


 ライムが知らない振りをしたのに対してシルヴィの方を見ると、ため息ついてそんなこと言われた。

 フィロのことね……、一緒にいる時はそこまで目を離してるつもりはないんだけどな……。

 ライムも、母さんも、言いたいことは多分もっと違う何か、なんだ……?


「なあ、ラムネ」

「どうした?」

「少しいいか?」


 今日はよく袖を引っ張られるな。

 引っ張ってるのはもちろんシルヴィな訳だが。


「ここでじゃダメなのか?」

「悪いけどラムネも来たし、そろそろ本格的に料理始めるから他で話してね」

「あ、あぁ。そういうことなら」


 理由が少し無理やりな気もするが、そういうことならしょうがない。

 俺はシルヴィに手を引かれるがままついて行くと、段々と人気がしなくなってきたな。


「ここら辺でも大丈夫たと思うぞ」

「………」

「何を話したいんだ?」

「ラムネ……私と契約をしてくれ」

「いいぞ」

「えぇ………」


 断るとでも思ったのか?


「別に契約一つくらいで大袈裟だな」

「違うんだ……私達の契約は……お主ら人間の契約では無い……」

「だけど前の奴とは契約してたんだろ?」

「それは人間の契約であって、私達龍の契約とは違かった」


 ここまで否定するんだ、普通の契約、要は俺達プレイヤーにもいるテイマーと召喚士の奴らが使う契約とは完全に違うんだろう。


「なら、何がお前を縛ってるんだ?話してくれると助かる」

「っ………龍の契約は……他のどの契約よりも強力だ……勿論その代わり、契約の時の身体への負担が大きい、そして問題はそこなんだ……契約の負担は、契約を行う龍の力によって変わる。私はこれでも上位の龍だ、かかる負担なんて正直分からない」


 なるほどな、それで断られるとでも思ってたわけか、残念だけど俺はその契約については全く知らなかったけどな。


「問題ない」

「え……?」

「問題ないって言ったんだ、早くやるぞその契約」

「ま、待って………中には契約で死んだ者もーー」

「大丈夫だ、俺はそんな親不孝はしないし、俺にだってやりたい事はある。だからこんな所では死んでやれないな」

「ゔぅ………」


 全く……、最上位の龍だとか、数百年は生きているとか言ってたくせに、どうしてこうも泣き虫なのか。

 俺はまた、シルヴィの頭に手を置いてから話す。


「今日俺は、お前の過去ごと敵を斬る」

「…………」

「そのためにお前の力を借りたい。シルヴィ……契約を頼む」

「約束だ……」

「は?」

「約束しろ!生きると!」

「杞憂だな、そんなに心配しなくたって死ぬ気はねぇよ」


 今まで溜めてきた反動なのか少し感情が不安定なシルヴィを落ち着かせること数分。

 ようやく落ち着いてきたのを見ると気持ちの整理は着いたみたいだな。

 さて……どんな苦痛だろうが、絶対に耐えて……それから敵をぶった斬る。

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