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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
一章
48/111

心の傷と刻む思い

(光龍視点)


 ここ数日、私の前に奇妙な生き物が現れるようになった。

 見た目は確かに人間、だが私にはわかる、この者達は私の知る人間とは違う、そもそもこの世の者かも分からん、そう……分からん、何も分からんのだ。


 これも少し前からだ、外から異様な魔力を感じる。

 そして私はこの魔力がどこの、どんな者の魔力なのか知っている。

 忘れられない、長くともに戦い、隣に並んで生きてきたあやつを、私の大切な者を奪った敵の……。


『くっ………!!!』


 あぁ………出来ることなら今すぐ奴の元に行き、そのまま焼き殺してやりたいくらいだというのに………それなのに……私はここを離れられぬ、離れてはならぬ、あやつの最後の、最初で最後の命令だ………。


 数百年前のあの日、あやつは初めて私に命令をした。

 そしてその日の出来事は、私に大きな後悔を残して、今でも目を瞑るとその感情と記憶が、私の心に、身体に溢れてくる。


「なぁ…◆◆◆◆、今回の戦いは流石にキツそうだな」

「?……そうだな、しかし主そんなものーー」

「だからな◆◆◆◆、お前にはこの島の封印を守っていて欲しい」


 何を言っておるのか、それでは私は、主の隣には誰がいてやるのか。


「ははは!なんて顔してんだよ、大丈夫だ、俺にだってお前の力は使えるし、この島の封印の守護を任された時に国王から貰ってるこの槍だってある、何があってもお前やこの島の人達にはーー」

「そうでは無い!そうでは……」

「すまない、それでも……わかってくれ」

「ッ!?………クッ!」

「◆◆◆◆!?◆◆◆◆ーー!!」


 それから私と主は、互いに言葉を交わすことはなかった。

 何も言わず、何一つ謝れぬまま、その日を迎えてしまった。


「ぅ………ここ、は……」


 気が付けば私はくらい中で目を覚ます。そんな私の覚醒を察知したことで、壁にある松明が一定に点灯したことで、私は自分が、今どこにいふのかをよく理解した。


「な!?………この魔力は………」


 嫌な予感がした。私の龍としての感が、私に向かって何かを訴えてるような、そんな感覚が。

 そしてそれと同時に、私はこの空間の出入口の扉に急いだ。

 しかし………。


「なぁ……なぜ開かぬ。ッ!開け!開かぬか!」


 どれだけ叫ぼうが、どれだけ魔力を流そうが、目の前の厚い扉は反応すらしない。


「それなら!『光龍の吐息ライトブレス』!!」


 何度叫ぼうが、何度打とうが、自分の力では目の前の扉が壊れないのは知っている。

 なんせこの扉や空間を作ったのは人間ではない、私程度の龍でどうにかなる物出ないことは、分かっている、分かりきっている!


「開け!開け!開け!」


 時間が経つにつれてその力を強める魔力の反応に比例していく自身の焦りが、余計に私を不安にさせて、その度に焦りはますの繰り返し。

 しばらくすると、戦いの余波がこの空間まで伝わってきた。


 しかし私は未だに扉を破れずにいる。そればかりか感情的になって魔法を使ったせいか、既に魔力は枯渇寸前、視界も霞むし、頭もクラクラする。

 だけどそれでも、行かないと……。


「頼む……開いてくれ………。私は、私は……」


 どんなに意識が続こうと、魔力が枯渇寸前なのは事実、私の身体はそれに逆らうことか出来なかった。


カランッ……


 限界が近い私の耳に、不意に何かが転がる音がした。

 少し目を開いて見ると、目の前に小さな黄色い石が落ちている。


「◆◆◆◆」

「!?、ある……じ………」


 私は自分の主が、主が自分をいつもの様に呼ぶその声に、重たい首を動かし扉に視線を向けるが、そこに主の姿はない。

 そんなことは分かってる、分かっていても見てしまう。目の前に転がるそれは、使用した者の声を記録する特別な魔道具だから。


『◆◆◆◆……この前はいきなりで済まなかったな。だけどやっぱりな、お前は失いたくないんだ。ずっと一緒だって約束してたのにな、こんな勝手なことして本当に済まない』

「あるじぃ………」


 目の前の石は、全く動けずにいる私に、私の大切な者の声で、その言葉を一方的に伝えてくる。


『それでな◆◆◆◆……恨んでくれても構わない、憎まれたっていい。これは俺の、自分勝手な我儘で頼みで……それで、初めての、最初で最後の命令だ。◆◆◆◆、生きて、生きていてくれ』

「いやぁ……嫌だよ………」


 誰も居ない空間で、誰にも聞こえない、届きもしない、それでも重たい首を必死に動かし否定し続ける。


『戦いのことなら何とかする、してみせる!だから心配すんな。それとな、実は家に手紙を残してきててな、いつかそいつを見つけた奴が、きっとお前も見つけ出してくれる、もしそいつがお前を大切にしてくれるなら、そん時はそいつと一緒に敵でも討ってくれ。悔しいことだが、俺達じゃあいつは倒せないからな』

「グズッ……グズンッ…………」

『こんな話ばっかじゃしょうがないしな、最後に一つだけ………はぁ………好きだぞシルヴィ』

「あ゛ぁぁーーー!!あぁ……あぁぁぁぁ………!」


 どうやら石に記録されているのはそれだけらしい、そしてそれを聞き終わる頃の私は、抑えようもない涙を流して、ただ泣くことしか出来なかった。

 気が付けば私の意識はなく、起きた時にはまたくらい中地面に転がっていた。


「終わった………。おわ、ちゃった…………」


 地上から何も感じることができない、あれだけ酷かった揺れもない、それだけでわかる。

 そしていつも自分の隣にいた者は居ない、起きればまたこの空間、その現状がさらに私に突き刺さってくる。

 私は失った。大切な者を、失いたくない者を、その心が私を押しつぶす。


「ぜったいに……絶位に許さないから!」


 気が付けば、頬からは涙が流れ、地に着けたままの手を無意識に握り、私は叫ぶ。

 その言葉は、自分を置いていった主にでもあり、その主を奪った敵にであり、そして何より、その時何も出来なかった私自身に!


 それからは、いつか訪れるのだろうその時を、復讐を誓って待つことになった。


 それから数百年か、そして今日もまた私の前には奇妙な何かが、しかし驚いたのは、その者が、あやつの言っていた手紙を持っていたこと。

 その事に私の心は、どこか開放されたような、そんな気持ちだった。

 そしてそれと同時に湧き上がる殺意も。


 はは……、遅いぞ主………。


 その後私は、数百年ぶりに地上に出ることに。

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