第2回イベント7日目 前半2
するとフィロが立ち上がったことでこっちも向こうにバレちゃった。
まぁお兄さんだしいいけど。
「あれ?フィロだ、おーい」
「お前は馬鹿かシスコン!」
「レーゼもそうでしょ」
「俺は別にそんなつもりは無い」
「でフィロあっちは?」
「えっと、あっちはレーゼ兄さん、フロスト兄さんと双子の兄弟で私のもう1人の兄さん」
「なるほどなるほど」
それでなんでフィロのお兄さんズがここに来てるのか聞いてみると、どうやら私達と同じ状況みたいで、向こうも今から探索しようとしてたらしいんだけど。
「まぁ人が多くて強行突破しようとしてた」
「こいつはなんでこんなに突っ走るんだ」
もう1人の兄さん、なんだか凄い共感できるなぁ。
「んで?あんた達とは協力、て事でいいのか?」
「ああ、それで大丈夫だ」
どうやら一応は協力する方向でいいらしい。
早速洞窟に行きたいわけだけど、その前に湖の水が邪魔だからね。
「ビルド」
「任せろ!」
「何するんだ?」
「まぁ見てれば」
「そいやぁ!」
「……!?」
「おお!」
ビルドの掛け声の後、拳が振られた場所から前の水が綺麗に消えていた。
2人の反応は真逆で、方や純粋に驚いてるのに対して、方や凄い興味深そうに見てる。
「これで行けるぞ!」
相変わらずの怪力に呆れながら、水が元に戻る前に中に急ぐ。
「へぇ、中までは水没してないんだな」
「それと歓迎だね」
「それもご退場のな」
さっきまではあんなにバチバチしてたのに、こういうところを見ると本当に仲が悪いわけじゃないみたいだね。
出てきたのは腕が刃物に尖ってるゴーレムだった。
だけどそのゴーレムも、張り切ってるお兄さんズの前にたったの数秒で撃沈、幸先よく進んでいく。
「それにしてもフィロ、いい仲間を見つけたみたいだな」
「そうでしょ、もう兄さん達に迷惑はかけないよ」
「そうかなぁ」
「まぁ、まだまだ頼ってくれてもいいけどな」
ああなるほど、この兄弟どっちもシスコンだ。
時々襲撃されながら、そんな話もしつつ、なんだかんだ結構なペースで進むこと数分、やたらと丈夫そうな扉の前に着きました。
「やたらと丈夫そうだな」
「音聞く感じ結構分厚い」
「なんでそれが分かるのかは聞かないでおこう」
失礼な、逆に壁を叩いて厚いか薄いか位はわかるでしょ、それと同じことだよ。
「でもライムが五感鋭いのはホントだぞ!」
「そう?」
「だってライム、一緒にご飯食べに行く時、上から降りないでその日の料理全部当てるだろ」
「でもビルドも当たるよね」
「ドアの前でだし、たまに外すぞ」
まぁそんな話は正直言い訳で、結局開けないのこの前の扉。
公平な話し合いの結果比較的に安全なトムヤムクンが扉を開けることに。
「公平さあったか……?これ……いいけどさ」
流石はトムヤムクン、自慢の防御力を活かしてどんどん扉を開けていく。
「結構重たいんだが?」
と言うわけで。
「イダダダダダダダダダ!?潰れるって(防具が)てか潰れてない(防具が)!?」
「あかないぞ?」
「押してダメなら引いてみな?」
「わかっ、た!」
「俺を引くなバカやろ〜〜ー!?」
実際は痛くないだろうに叫ぶトムヤムクンと、あかない扉を見てニヤケながらアドバイスをする氷菓の言葉を真に受けて、思いっきりートムヤムクンをー引っ張るビルド。
こうして私達から数メートル後方、トムヤムクンは放物線を描くことなく、綺麗に一直線で壁まで下がって行った。
「あいつ大丈夫なのか?」
「寧ろ壁の方が心配なくらい」
「マジか……」
まぁそういう反応も分からなくわないけど、ただどっちもステータスがね、方や筋力、方や防御力の特化型だからこんな状況は良くあること。
すると氷菓が扉の前に進むなり扉に自分の魔力を流し始めた。
「まぁ、普通こんな場面なら魔力流せばなんとかなると思うけどね」
「「それが分かってるなら早く言え!」」
いつの間にか戻ってたトムヤムクンと、なんかレーゼさんも反応して、大声でツッコミ入れてるけど、仮にも今は潜入中だからできるだけ静かにね。
という訳で開いた扉の先に全員が進むと、開けた扉は閉まってしまった。
これは大変そうな予感が。扉が閉じてからしばらくすると、壁にかかってる松明が次々に灯りをともすアニメでよく見る展開に、そしてこの空間の中央に立つのは、この島でも何度か見た竜だった。
それも、今までの竜達が霞んで見えるくらいに大きな存在感を目の前の竜から感じる。
『ふむ、これで何度目か。人間達よ、ここに貴様らの求めるものは無い、直ちに立ち去れ、さもなくば』
「なるほどな、道理で攻略も出来てないわけだ」
話が通じるなら、なんとか話し合いで解決できないかな。
「なあ、俺らは別に戦いたくて来た訳じゃない、ただこれから起こり得ることを少しでも知るためにここに居る」
『確かに、お前達は今までの者らとは違うらしい』
「なら」
『しかしできません、証なき者に、私はここを明け渡すことはできない、それがあやつからの最後の頼み』
うわぁ、フィロのお兄さん凄い怖いもの知らず、ただそれでもダメみたい。
すると少し視線を下に向けながら、何かを探してるのか、何も言わずに視線だけを素早く動かしてるラムネ、それが次の瞬間には見つかったのか、腕を前に出して何かを掲げるラムネ。
「なあ、違ったらそれでいいんだが、証ってこれのことか?」
『!?お主それをどこで!いや、それを持ってるということはあそこへ行ったのだろう』
「あぁ、1人?で納得してるところ悪いんだが、結局証ってのはこれでいいのか?」
『あ、あぁ……それで問題は無い。確かにそれはあの男が書いたものだ』
ラムネが竜に向けて見せてた紙、あれって確か前の探索で誰かがその手紙を見つけた人宛に書いたものだったとか、後目の前の竜が言う証はその手紙でいいらしい。
「それじゃあ何か教えて貰えるのか?」
『そうだな、ただ私も外の状況について、何も感知してない訳では無い、そなたらの拠点にでも行ってから話そうか』
とは言っても、多分ここに居る全員が思ってる事だと思うけど……。
「お前その姿で外に出れるのか?」
『なーに心配は要らん、これでも私は……数百年は生きた最上位の龍なんだぞ」
なんと目の前の龍がまさか、数百年も生きてる最上位の龍だったなんてね。
なんてのは今はどうでもいい、今の私は本来のステータスをフルに使って、目の前の少女の姿になった元龍をよく見る。
やっぱり何も着てないよね!?
それがわかった瞬間に、私はこれまでに無いくらい全力で動き出す。
その結果アイテムボックスに入れておいた服を一瞬の内に取り出して、これまた一瞬のうちに背後から上手く服を着せることに成功した。
よくやったよ私、頑張った。
「な、なんじゃ!?いきなり服が、てお主はいつから後ろに!?」
ほうほう、大分慌てていらっしゃる。というか今のでわかったけど、私達のステータスは、こんな最上位の龍みたいな馬鹿げた存在達にすら多分勝つことができるんだと思う。
だけどそれよりも。
「驚くのはいいですけど、ちゃんと服は来てください」
「あぁ、す、すまんな。久々にこの姿になったものだから、変身直後のことを忘れていた」
それは見てたこっちの方が驚いたよ、本人が忘れてたからっていきなり裸はやめて欲しい。
「ギャアァァァーーー!目がーーー!?」
「変態は死すべし慈悲はない」
「俺なんも言ってなくない!?てかマジでなんも見えねぇよ!?」
「あわわぁ!?今すぐ治します!」
そっちはそっちで何やってるんですか。すると軽く袖を引っ張る感覚が、振り向くとなんか申し訳なさそうにしてる元龍が。
「それともうひとつ言いにくいのだが、できるなら肩を貸してくれぬか」
「え?」
「いや、久々にこの姿になったと言っただろ、それで身体の感覚がまだなれん」
あぁ、そういうこと。それはいいけど転移で帰れるから別に貸す必要はないと思う。
というのを説明して少し驚いてたり、氷菓が外で寝てもらってる人達に細工するためとかで一旦外まで戻ったあと、拠点近くまで転移で戻ってきた。
直接拠点まで行かないのは、色々と人が増えたから、いきなり拠点に現れても混乱すると思ったから。
「へぇー、結構いい所だね」
「あぁ、壁もしっかりしてる、これだけ出来のいい拠点を作れるとはな」
「もう少し素直に褒めたら」
「俺は十分素直だ」
そうこう後ろで話してる間も、私達はリズさんの元に向かってるわけだけど……。
やっぱり目立つよね。それとこの中で特に目を引いてるのは、さっきから人の背中で寝てる上位龍だと思うんだよね……。
それと引き受けてからで申し訳ないけど、正直なところ、人を背負いながらの林道はきついということがわかった。
普段の自分とは判定が違うし、仮にも生きてる人?を運んでるわけだから、体感もなかなか安定しなかったし、後でこの課題も鍛え直して何とかしておこう。
「うむ、スピードがあってなかなかの乗り心地だたぞ……」
お世辞とかじゃない、と思うけど。やっぱり人の評価はあまりあてにはしない方がいいね。
私は自分が足りないと思うからやる、今まで通りそれだけだね。
時間が経つにつれてなんか幼児退行してる気がする光龍さんから褒められながらも、リズさんのいる大きなテントにはすぐに着いた。
「えっと、まずはおかえりなさい。それと誰かしら?」
「えぇと、こっちは私の兄さん達です」
「フロストです、いつも妹がお世話になってます」
「レーゼだ、いつも妹がお世話になってる」
ハイハイ妹のことでそんな睨み合いにならないでくれるかな、周りの人も困ってるから。
「こいつらには少し協力して貰ったんだ。それとライムの後ろにいるのが」
「ふふ、私はこの島を守護する光の最上位龍だ、今はこんな姿だが本来ならもっと大きいのだ」
「………」
「………」
盛大に滑る挨拶をし終わった後で申し訳ない気もするけど、今あなた私の背中におぶさってる状態なんですよね。
「もう下ろしても大丈夫ですかー」
「ああすまぬな、ここまで助かったぞ」
それはどういたしまして、それで結局話は聞かせてもらえるのかな。
「それで、結局この子は一体?」
「そいつが今回のイベントの鍵かもしれないんで、着いてきて貰ったんです」
「なるほどね、てことはそっちの2人もこのためにってこと」
「まあ、僕らはそこまで過激なプレイヤーではないですよ」
「だがらと言って、手を抜く気は無いがな」
「あぁ……話し始めても良いかな」
このままだと話が進まないと思ったみたいで、光龍さんは自分から話を聞くよに呼びかける。




