第2回イベント6日目
次の日ゲームにログインすると、拠点の人達が少しざわついてるのに気づいた。
「何かあったのか?」
「とりあえず聞いてみよ」
何かあったのは確かだろうし、近くにいる人に聞いてみる。
「何かあったんですか?」
「それが、実は昨日の夜中からだと思うんだけど海が荒れてると報告があってね、それで朝になってみるとこの島を囲むようにぶ厚い雷雲が空をおおっていて、明らかな異変に皆慌ててるんだ」
なるほどね、ここに来て急な環境の変化、それだけなら良かったんだろうけど、日を追う事に強くなるモンスターの話を昨日聞いた後にこの状況、皆が慌てるのもわからなく無い。
「そこまでよ!皆一旦落ち着いて!」
するといつの間にかログインしていたみたいで、大声で呼びかけるリズさんがいた。
「今のこの状況で慌てるのも仕方ないかもしれない、でも慌ててたって仕方ない、今ある情報を整理して現状の把握をするわ!何か知ってる人達は集まって!それから……」
すると周りを見渡して誰かを探しているのか、忙しく顔を動かすリズさんと目が合った。
するとリズさんは、私とビルドを見つけるなりかけ気味に近ずいてきて、その勢いのまま手を掴まれる。
「良かった、2人にも聞きたいことがあるの、出来れば他の皆にも聞きたいけど、いないなら仕方ない一緒に来て」
どうやらリズさんの探し人は私達だったみたいで、昨日来たテントまで連れてこられた。
「それじゃあ今から、この事態について話し合うわけだけど、昨日私が居なくなってからの変化について知ってる人からまず聞きかせて」
そうして出てきた情報は、さっき私達が聞いた環境の変化に加えて、一部のモンスターに謎の結晶のようなものでできた突起物が額から伸びていたことがわかった。
「昨日まではなかった事ね」
「それとその突起のあるモンスターだけど、どちらかと言えば小さい奴らや比較的に弱いモンスターから生えてる感じだった」
それを聞いて思ったのは、ラムネが昨日伝えた3つ目の変化、モンスターの身体のどこかに出来てる黒ずんだ箇所、その箇所が見つかるモンスターの傾向と似てること。
それをリズさんに伝えてみる。
「なるほどね、昨日言ってた身体の黒い場所、それが見つかるモンスターと傾向が似ている」
「なら強いモンスター達には何も起きてないのか?」
「いや、そういう奴も同じだ」
そう言った人の方を全員が見ると、昨日の元攻略組の人がいた。
「それは外見は変わらないけどステータス的な変化はあるって事かしら」
「ああ、現状は分からないが、これまでの奴らは外見に何ら変化はなかった、それなのにステータスは明らかに上がってる、そんな感じだった」
「貴重な情報ありがとう」
「こんな情報も役に立ったなら良かったよ」
その後、今確認できているモンスターの現状についての情報を整理してると、ようやくラムネ達が入ってきた。
「なんか色々あったらしいな」
「そのせいで外は混乱気味」
今まで話していた内容を軽く説明している間に、リズさんの情報整理の方もとりあえずは終わったみたいで、話の続きに入った。
「それで今度は、その変化したモンスターの対処についてなんだけど」
そこで一旦話を止めたリズさんは、振り向いて私達の方を見つめてから聞いてくる。
「現状を正確に判断して、今この拠点で最も強い皆に聞きたいんだけど、昨日戦ったモンスター、あれ以上のが出てきた場合に対処はできるかしら」
なるほどね、聞きたいことってそういうこと、それについては問題ないね、今でも全力は出せてない状態なのと、今までのペースで強化されるなら多分全力を出す機会もないんじゃないかな。
「それについては問題ない、今だってある程度全力を持て余してる状態だ」
「それが聞けて安心したわ」
「マジかよ……」
「アンナの相手にまだ余裕って……」
私達のことをすくならからず知ってるリズさんとは違って、周りの人達は結構驚いてるみたい。
「それでなんだけど、今日からこの拠点の防衛に回ってもらっていいかしら」
「それなら特に問題はない、誰か一人を残して探索しても大丈夫だと思うぞ」
「そ、そうなの?それなら島の探索もできる限りお願いするわ」
「了解」
そういうわけでテントを出てきたんだけど、その後の誰が残るかの話で、何故か私がまっさきに候補に上がったんですよ。
「何故?」
「いやライムは分身とか転移とか使えるし、料理なんかでも残るのはほぼ確定だろ」
「まぁ、この状況じゃライム以上の適任はいないだろうな」
「そういうことなら私も残るよ回復は必要になるかもしれないから」
「そっか、それなら頼む」
「うん、ラムネくんも頑張ってね」
一緒に残ってくれたのはありがたいんだけど、イチャつくならよそでやってね。
それとフィロさん、一応ビルドと氷菓とトムヤムクンもいるよ?
その後4人プラス連絡用の私の分身が出発して、残った私とフィロさんは、割とのんびりしていた。
「そういえばライムちゃんって、どうして私のこと呼ぶ時にさん付けなの?」
「それは親からの教えと、後はそのまま」
初対面の人に対して呼び捨ては良くない、誰でも1度は言われたことがあると思う。
「それなら、今度からはフィロって読んで欲しいかな」
「わかった、今度からはそう呼ぶ」
確かに今まではさん付けしてたけど、それだとフィロにだけ他人行儀過ぎたのかも、今度からはフィロって呼ぼう。
「やっぱりライムちゃんもビルドちゃんも小さいから、なんだか妹みたいだなー」
そう言いながら、それこそ妹の相手をするみたいに撫でてくるフィロ、なるほどそんなふうに思ってたんですね。
「………」
「どうしたの?」
「フィロさんが私をどう思ってるかよくわかりました」
「へ?」
「フィロさんとはしばらく話しません」
「ご、ごめんね!?そんな意味で言ったんじゃないよ、ええと、そう!私兄妹だと一番下だから、二人を見てると妹ってこんな感じかなって思っちゃって、だから……」
「はぁ……冗談です、それと少し疲れました」
そう言ってフィロの膝上に頭を乗せて力を抜く、そんな私をフィロは小さく笑いながら撫でてくる、これだとまるで昨日のビルドと同じだね。
でも今更起きるのもめんどくさい、だからそのままゆっくり目を閉じる。
それを見てフィロはまた小さく笑った気がした。
その後はしばらくしたら目が覚めて、周りを確認してみるとラムネ達が戻ってきてて、何故か全員が面白そうにニヤついてるのを見て、なんでそんな顔してるのかわかった途端に自分でも驚くくらい顔が暑くなった気がした。
「やっぱライムは可愛いな!」
「もう少し寝てても良かったぞ?」
「なあフィロ、どうやってライム懐かせルッ!?」
「変なこと聞くな」
「あぁ……どんまい」
ビルドはなんでか自慢げで、そこをラムネが煽るように言ってきたと思ったところに、氷菓はなんか変な事を聞こうとしてたからデコピンしておいた。
最後のトムヤムクンの同情で、私は逃げ場を探すようにまたフィロの隣に戻ってしばらく顔を埋めることに。
探索では特に変わったことはなかったみたいで、リズさんにはもう話してあるらしい。
朝からずっと情報だったり、人だったりをまとめたりしてて、改めてリズさんのことを凄いって思った。




