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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
一章
43/111

第2回イベント5日目 前半

 次の日ログインすると、まだほとんど人がいないのもあって結構静かですね。

 どうやら私達の知らない間は、他の人達が拠点の見張りをしているらしい、しばらく拠点範囲内をウロウロとしてると、端の方で何かを並べてる人を見つけた。


「あの……」

「ん?ああ、お客さん?」

「あっいえその、ここって何をしてるんですか?」

「え、もしかして最近来た子かな?」

「一応昨日のお昼頃に」

「ああ、昨日私その時間あたりからいなかったもんねなるほど」


 なんか1人で納得してるけど、要は初めて見る人に新しいお客さんかと思ったけど、そもそもここに来るのが初めてで自分のお店すら知らなかったから意見が食い違っているみたいだね。


「あのそれでここって」

「あぁそうだったね、ここは僕の畑で取れた野菜を売ってるんだよ」

「畑?」

「ふふん!実話ね、私は前回のイベントで島を手に入れているのだよ!」

「へぇー」


 てことはこの人も、そう思いながら私はこの人の作ったらしい野菜見ていくと、結構色んな野菜が置いてあった。


「これって、種とかどうしたんですか?」

「ふふん、そこは私の企業秘密、だけどお得意様になってくれたら~、お安くしとくよ」


 なるほど、企業秘密ね、流石に教えてはくれないかな。


「わかりました、それならこれ以上は聞かないことにします」

「うんうん、それがいいよ。そんで何か買ってく?」

「それなら」


 私は並んでいる野菜の中から、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、キャベツ、それからトマトを多めに買った。


「へぇ、やっぱりメイドだから料理は得意なのかな?」

「さぁ、自分だとよく分からない」

「ははは、確かにそうかも!なら私も頂いていいかな?材料はこっちで出すからさ」

「いいですけど、えっと……名前って」

「ああごめん、確かにまだ名乗ってなかったね」


 そういうと目の前の女の子ー多分同い年か少し上くらいだと思うーは、何故か手に桑を持って自己紹介を始める。


「私の名前はユウナ、この燦々と輝く太陽の元に生まれて、野菜を愛した1人の農家(ファーマー)よ」


 どう反応したらいいんだろう、結構いい人かなって思ってたんだけど、また変にキャラの恋人だね。


「えっと、私はライム、それでユウナさん、好き嫌いとかってありますか?」

「ライムちゃんね、あと私はユウナでいいよ、それからこと野菜に至っては食べられぬものはないわ、それにあなたがた作りたいもの、なんとなくだけどわかったし」

「それなら良かったです」


 それは羨ましいな、私も好き嫌いはない方だけど、野菜で苦手なものも確かにあるからね。

 だけど、やっぱりこの材料だと簡単にわかるのかな?


「それで?どこで作るの、ここにも一応調理場ばあるらしいけど、皆そこまで食事を重要視してないから、誰も使わないのよね」

「いえ、ここで大丈夫ですよ」

「え?」


 そう言って私は、メイドのキッチンを異空間から取り出す。

 するとユウナは結構驚いた表情してる。


「こ、これ……キッチン!?」

「そうですね、私の職業、メイドのスキルです」


 そう言って私は、早速買った材料と、自分の分だとユウナから貰った材料を刻んでいく。


「ははは……手際いいのね」

「まぁ、ゲームですから」


 だけど確かに、いくらゲームって言っても、音速を軽く超える包丁さばきなんて見たことないよね。

 途中からは分身も使って作業を分担しながら調理していった。


「お?早速美味しそうな匂いがしてきてるね」

「ユウナ、そろそろ私の知り合いが来るけど、一緒でいいかな」

「いいよいいよ、ご飯は大勢で食べるものだからね」


 ユウナは野菜への愛情が強いけど、それを除けば優しい人だ。

 あとは煮込むだけになったから、2人で少し話しながら座ってると、ようやく皆もログインしてきた。


「えっとライム、そっちの人は?」

「ユウナ、このイベント中は出店で野菜を売ってる農家さん」

「どうもー、ユウナって言います、気軽にユウナって呼んでね、職業は今ライムちゃんが言ったみたいに農家やってるよ」

「ああ、俺はラムネ、剣士だ。そんで隣から聖職者のフィロに格闘家のビルド、そっちは左が魔法職の氷菓、でその隣がタンクのトムヤムクン。こっちこそよろしくな」


 というわけで全員が挨拶終わったところでタイミングよく料理もできたから、一人一人器によそっていく。


「なにこれ美味しい!?ライムちゃん凄い!」

「あはは!ユウナはわかってるな!私もライムの料理は好きだ、何杯でも行けるぞ!」

「そんなに掻き込む様な物でもないでしょ、それに私の料理が美味しかったなら、それは元の材料を作ってくれたユウナの腕がいいから」

「ははは、そんなに褒めたって~畑で取れた野菜しか出てこないよ?」

「私はそっちの方がありがたいですね」


 すると匂いにつられてか、周りから沢山の人の気配がする。

 どうしようか、そう思ってるところに、1人だけ真っ直ぐ近ずいて来る気配がある。

 後ろに振り返ってみると、どうやらリズさんだったらしい。


「えっとライムちゃんに、皆もお揃いね」

「何かあったんですか?」

「いや……そのね、少し言いにくいのだけれど、さっきから皆が食べてるそのスープで少し騒がしくなってね、なんでもいい匂いに釣られて来てみたら美味しそうなものを食べてるのを見て、あれはどこに行けば貰えますかって話が結構来てて……」


 なんか結構言いにくそうにしてるけど、なんとなく言いたいことはわかる、多分私に同じ料理を作ってほしいってことだと思う。


「それでね、ライムちゃんにその……みんなの分料理を作って貰えないかなって」

「あぁ、やっぱりそんな感じですか、私はいいですけど、皆さん他に料理のできる人はいないんですか?」

「なんか色々と申し訳ないんだけどね……実は今のこのゲームの現状って料理スキルを持ってる人が3桁もいないの、その上空腹だからって問題に思う人も少なくて……本当にスキルレベルが高い人なんて片手で数えられるくらいよ」

「マジか」

「ライムがいたから気にしなかったけど、結構そんなもんなんだな」

「まぁ、確かに料理は多少の食事ボーナスが入るけど、スキル自体には特にこれといった実績も特殊スキルもない、本当の趣味スキルだしねぇ」


 リズさんの教えてくれたこのゲームの現状に、結構衝撃を受けたみたいになってるトムヤムクンと、その話を聞いて、前に私から聞いた料理スキルの説明と合わせて、自分なりの解説を始めた氷菓。


「それで、お願いできるかしら」

「材料があればやってもいいですよ、あと作った料理の取引はリズさんの方でやっください」

「そう言って貰えて良かったわ、それなら少し待ってて、今から材料なんかを集めたり……」

「あっ、あのー」

「あなたは、確か農家をしてるって言ってたユウナちゃんだったかしら」

「はい、実は私、自分の畑で取れた大量の野菜を持ってて、この子達を私から買いませんか?」


 話が大体見えてきたあたりから、ユウナが少し落ち着きがないように見えたけど、どうやらこの販売のタイミングをずっと待ってたみたい。


「ん〜、ちなみにどれくらいの量をいくらでかしら」

「そうですね、20kで金貨1枚ってどうですか?」

「あら、それだと少し高いんじゃないかしら?例えば銀貨40枚とかどう?」

「いえいえそんな、私にもこの子達を育ててきたプライドがあります。そうですね、それなら少しまけて銀貨90枚はどうですか?」


 なんで値切り交渉が始まってるんですか……。

 その後の話し合いでラムネから、「まずは商品見てから交渉始めたらどうですか?」って言葉で一旦交渉は終わって、互いに情報を出し合った末に、最終的な値段はユウナの提示した値段より少し下の銀貨80枚に決まった。

 そんなこんなで、買い取った材料は全部が私のアイテムボックスに。


「それじゃあ始めますか」


 とは言ったものの私はここの人達全員に配れる程大量に作れる大きな鍋は生憎持ち合わせてはいない、かと言って今から鍛治職、ミュー辺りに頼んでも流石に間に合わないと思う。

 それならどうすればいいのか、答えは簡単、私の持ってるスキルには不可能なんてことはあんまりないのかなと、ここ最近思っていたりする。


「『魔魂装·操』」


 今では私の愛用スキル、しかしこのスキル、形作れる物が武器だけだとは思うなかれ、多分数日前にも、ゴーレム狩りをしてた時にもやった事だけど、この魔魂装は私の想像力次第で結構色んな形に変形してくれる。

 それ以外にも浮遊に伸縮、重量とか質量だってスキルのレベルが上がった今では割と自由度が高かったりする。


 というわけで今回私が作ったのはこちら。


「これくらいあれば作れるかな」

「ねぇラムネくん、ライムちゃんって普段からこんな感じなの?」

「まあ、ライムに限らず俺らも普段から自由にやってますからね」

「それがどういう意味か聞く気がしないのが不思議ね」

「聞いてもいいですけど、大体あんな感じの思い出話ですよ」

「普段からあんな感じなのだけはよくわかったわ」


 なんか下でラムネとリズさんが話してるけど、それよりも早く材料を刻んでかなきゃ、野菜は鮮度か命、分身をできる限り多く出して作業に集中しなきゃ。

 ちなみに今作った鍋は、本来武器じゃないことから普通なら武器として認識されないから攻撃力なんて無いに等しいはずだけど、あらゆる武器や物を操るウェポンマスターのスキルの前には、どんな形の物を作ろうとも、ゴリ押しで武器になるから、この鍋にも普段武器として出してる物と同じように攻撃力が存在していたりする。


 その後氷菓と2人で風魔法を使って鍋の中を回し続けて、数十分もすれば鍋からはいい匂いがし始めて、そろそろ完成なのを教えてくれる。

 鍋を温める熱源に関しては、魔魂装に火の属性付与ができるから、全体を余すことなく温められる。

 今の調理器具に不満はないんだけど、今度からこっち使おうかな……。


「リズさんもうできますよ」

「ありがとう、だけどこれどうやって取り出すの?」

「それに関してはこうして、大きな鍋から小さく取り出せば、皆さんに配れますよ」

「な、なるほど……(相変わらず器用ね)」


 それからはラムネ達にも手伝ってもらって、私の分身とその他の知り合い数人で配給作業をしていった。


「はああぁぁ……づがれだ……」

「ふふ、お疲れ様、皆もありがとうね」


 そう言いながら自分の膝に頭を乗せて完全にだらけきったビルドの頭を優しく撫でるリズさん、てか随分と懐いたね。

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