第2回イベント4日目
昨日各々が探索を終えた後にあったこととを簡単にまとめると、まず合流して直ぐにラムネとトムヤムクンに感謝されたこと、その後なんでかグロッキーなトムヤムクンとなんでか頭に?浮かべてるビルドについて聞くとフィロさんから苦笑いが帰ってきたり、あの村について互いに手に入れた情報をまとめるために一度あの崖の上に戻って情報の整理をしたりと色々あった。
それで今日ログインすると昨日送ってから待ってたリズさんからの返事が来たらしい。
「今日のお昼だってさ」
「お昼…」
まあ今日は母さんもいるし、問題はないかな。
「それとリズさんからもうひとつ、そろそろ拠点のための土地が開けるらしいから、見つけられそうなら先に見つけて来てだってさ」
「それはそれで面倒だからお昼を待ってる」
確かに探すのはそこまで大変じゃないと思うけど、千里眼も鷹の目もまだ移動中とか戦闘中に並行して使うのは慣れないから却下、目標は千里眼で視点を遠くに、理想は上空だけど飛ばして、更にその飛ばした視点を鷹の目でズームして戦う、まさに死角無しって感じで強そう、てな感じで出来たらいいなーくらいで今は練習中。
「それならどうするかな」
「ポイントも稼げる時に稼いでおきたいし、モンスター狩りにでも行くか?」
「さんせー!!」
それからはこまめに時間を確認したり、リアルとゲームの間を上手く調整しながら少し休憩も挟みつつお昼までの時間をモンスター狩りで潰すこと数時間、崖上に戻ってきた私は、今全力で探知作業をしています。
「どうだ?」
「少し待って」
リズさんの話だともう整列自体は終わってるから、後は探すだけなんだけど……。
「………」
「大丈夫か?ライム」
いや、探知に関しては順調、なんならレベルも上がってるし、だけど……。
「なんで同じ隊列の集団が2つあるんですか」
「ああライム、念の為にもう一度言うが前衛組が右、魔法組が左だぞ?」
「知ってるし覚えてる」
んん……これじゃあいつまでたっても移動できない、ならここはひとつ。
「フィロさん」
「えっと、何かな?」
「右と左、どっちがいいですか?」
「え?じゃ、じゃあ右かな?」
なるほど、それじゃあ……。
「右に行ってみますか」
「え!?」
「なぁライム、なんでフィロなんだ?」
え?
だってフィロさん……。
「運がいいから?」
「あぁなるほど」
「そうかな……」
まあ私達よりは日頃の行いはいいと思うし、フィロさんには何か補正みたいなものがかかってる気がするし任せるしかないよね。
そういうわけで右の集団に向かって進むこと数分、やっぱりフィロさんには何か補正がかかってるのか、リズさん達を割とあっさり見つけた。
「で、何してるんですか?」
「いや見てないで助けてくれない!?」
なんでこんな状況になったのかは知らないけど、なんでか蜘蛛の巣に引っかかってるリズさんとその他数名、目的の集団はもうすぐそこなんだけどね。
だけど巣があるってことは当然だけどいるよね。
「いるな」
「他にも小さいのに囲まれてる」
「え、何?」
「リズさん、相手の攻撃パターンって知ってるか?」
「え?」
「それなら……腐食効果の攻撃を小さいのが中心にして来る」
「デカイのは最後だ」
それは面倒くさそうな相手だね、だけど……。
「どうだ?ライム」
「小さいのは終わった『魔魂装』……」
リズさんや他の捕まってる人達が不思議そうな顔をする中、小声でスキルの発動をした瞬間、枝葉の隙間から雨粒の様に大量の子蜘蛛が落ちてきた。
それと頭上はしっかり盾で傘替わりにして死骸が落ちてこないようにしてる。
「後はよろしく」
「あぁ、さっきからやたらデケェのから殺気貰ってるからな、フッ!」
姿勢を低く構えた次の瞬間、抜刀の瞬間を一切見せない神業で、次の瞬間には、子蜘蛛に続いて落ちてくる親蜘蛛の姿が。
「す、すげぇ……」
「うぉ!?」
親蜘蛛が倒されたからか、リズさん達が捕まっていた蜘蛛の巣が一瞬で消えた。
「た、助かったけど、話は戻ってからにしましょう」
「了解、それじゃあ行くぞ」
リズさん達の拠点までそんなに時間はかからないけど、移動の間に色々と聞かせてもらった。
と言ってもどんな人達がいるのかってことだけだけど。
「あ、そうだリズさん、ミューっていますか?」
「あぁミューちゃん?それなら鍛治職の人達のキャンプにいるはずよ、だけどどうして?」
「私以外の皆は武器を使うから」
「あぁ……それを聞いて改めて思ったけど、スキルのおかげで武器要らずってなかなかにチートね……」
「まあそれは私も思います」
割と当たり前になってたけど、私の持ってるスキルと今のステータスーセーブする前の全力状態ーは確かにチートレベルだね。
だけど手に入れたものに文句を言うのは筋違い、そんなスキルに感謝しないともしもこれが人間なら嫌われちゃう、どんな物や人出会っても、感謝や大切な心を忘れない、父方の祖父母から教わった大切な言葉。
そうこうしてるうちに目的のテントに着いた。
「ここね、ミューちゃん?ライムちゃん達が着いたわよ」
「静かですね」
「おかしいわね」
ふむ、私の探知でもちゃんと中に誰かいるんだけど……。
まさか?
嫌な想像をして入口の布を払い除けて入ると、そこには倒れたミューの姿が。
「ミュー!?やっぱり誰かに暗殺でも」
「うぅ、ライム……」
「ミュー!?何があったの?」
「うぅ、だ、誰も……誰とも仲良くなれなかった……アダ!?」
「ごめんなさいリズさん心配した私が馬鹿でした、あと武器の点検は他の人を当たりましょう」
「待ってー!?色々とごめんなさい謝るから待ってー!」
「はぁ……」
「相変わらず仲はいいわね」
「え?」
「やっぱりそう思います?」
リズさんは冗談が好きみたいですね、そんな誰と誰が?
私とミューはそこまで仲良くはないですよ、少なくとも人が心配してるこの状況でこんな悪ふざけしなければね。
「要するに私は今怒ってます」
「ご、ごめんなさい」
と言った感じのやり取りがしばらく続いて、ラムネ達が来たのを感じ取ったところで説教の様な一方的な土下座タイムは終了、私が許したのを見て落ち着いたのもつかの間、ラムネ達が来てまた少し動揺しだした。
「なあ、初めて会うわけじゃないんだ、少し落ち着いたらどうなんだ?」
「あはは、ちょっと前に色々あってね……」
「なんかあったのか?」
「さあ」
多分原因は私だろうけど、ここはシラを斬らせてもらいます。
というか私悪くはないと思うんですよ、だって心配しただけだし、私は悪くない、悪くないのです。
それからは各々武器の調整を行っている。
後はなんかラムネが刀を作れないか聞いてるね、出来なくはないんだろうけど作ったことは無いから現実の本職の人達には負けるらしい。
「それでいい、ただこのイベントにこの剣だと少し不便に思ってな、念の為に持っておきたいんだ」
「わかったよ、僕に任せといて!」
こういうところは心強いんだけどね。
まあ、ああいったおふざけあってのミューだもんね、もう色々諦める。
「みんないる?」
「あぁ、リズさん、全員揃ってるよ」
「良かった、これからここの人達に紹介しておこうと思うから、みんな一緒に来てくれない」
「そういうことなら」
「調整も終わってるよ、ラムネくんの注文は最終日までには何とかするよ」
「それで頼む」
最終日って、今日にある程度必要な物を揃えるとして、準備とかも明日からだと思うけど、やっぱり本職の人は違うね。
というわけで私達は来た時とも今までの場所とも違う広めのスペースがある場所に案内された。
「それじゃあ新しくこの拠点に来たええっと、まあ私のお得意さん?」
「なんで疑問形?」
「はぁ……俺はラムネだ、そんで左から黄色のローブが氷菓、フルメイルがトムヤムクン、ジャケット来てるのがビルドでその隣のメイドがライム、俺の隣がフィロだ、よろしく頼む」
「なああれって……」
「あぁ多分……」
なんか周りがすんごくザワついてるって感じてるのは私だけじゃないと思うけど、下がっていいですか?
すると私から何かな察してくれたリズさんが、すぐに静かにしてくれた。
「まあ、聞きたいことなんかは多いだろうけど、今日から最終日までは一緒に協力することになってるわ、皆も文句はないわよね」
「1ついいかな?」
「何かなグリード」
正直面倒くさくなってきたし座りたいんだけど、今質問してきた人はグリードって言うらしい、リズさんの反応を見てると何かあったのかな?
「いやぁリズさん、こればっかりは自分でも悪い所とわかってるんだが、やっぱり一緒に戦うなら知っときたいってわけで」
「はぁ、そういうところよ、ごめんね皆、できる範囲でいいからステータスの特徴とか持ってるスキルのことを話してあげられないかな」
「あぁ……いいですよ」
「ありがとう」
それからは、色々と質問攻めにあいながら、ログアウトまでお互いのステータスやスキルについて全部じゃないけど話して終わった。
中でも私が持ってる固有スキル【魔魂装】を見せると、皆その能力に驚いて、中には入手方法を直接聞いてくる人もいたけど、教えると難しそうな顔をしてた。
後でリズさんに聞くと、その組み合わせはやってる人が何人もいるらしいけど、大体は状態異常にかかるのを知ってやめたり、ようやく同時に使えるようになってもスキルが取得できなかったりで、プレイヤー達の間ではどちらか片方だけを取るのが攻略の基本になってるらしい。
あとそれを聞いてわかったのは、魔魂装とその後に手に入った固有スキルはもう私の専用スキルになってるらしいってこと。




