第2回イベント1日目 後半
絶賛洞窟探検中の私達の目の前にはテレビ番組で見るような綺麗な鍾乳洞が広がってる。
「綺麗ですね……」
フィロさんが水の溜まった窪みに近ずいてそう言うと、いきなり水の中にモンスターの気配が、慌てて離れるように言おうとしたけどどうやら必要なみたい、いつの間に移動してたのか颯爽とフィロさんを抱えたラムネが後ろに下がる。
「すまんフィロ、緊急だったからな」
「大丈夫……」
おーいそこのお二人さんイチャつくならせめて気配の元倒してからにしてね、あと緊急でお姫様抱っこするとかあなたは天然なんですかタラシなんですか?
すると水とどうかしてた何か、と言うか完全にスライムだけど、それよりもあれ絶対に水から無限湧きしてる。
これは少しまずいんじゃ、とりあえず範囲攻撃の魔法で対応はしてるけど元の水を枯らさなきゃキリがない、という事でまずは動きを止めないとね。
「氷菓、動き止めるから凍らせて」
「了解、でも時間なんていらないよ『アイスフィールド』」
もう既に詠唱してたみたいで、前にも使った氷の範囲魔法で周りを一瞬で凍らせた、それじゃあ後は……。
「『魔魂装·槍』氷菓、槍に炎属性付与して」
「任せて〜」
後はこれを投げるだけ、この景色を壊しちゃうのはもったいないけど今は仕方ない、それにしばらくすればまだ元に戻ってくれるだろうし。
「はぁ!」
全力で投げた槍はスライムを貫いて簡単に水源に届いた。
そして次の瞬間には水は消えて、スライム達も炎の渦に巻き込まれて綺麗に居なくなってる。
「はぁ……」
「おつかれ〜」
「すぐに行くべきだろうけど、水も消したししばらくは大丈夫だろ、皆時間的にも一旦ログアウトしないと行けないだろうし、少しここで休憩にするか」
時間を見てみると確かにそろそろ晩御飯の時間、流石に戻らないとお母さんになんて言われるか分からないし一旦戻ろう。
いつも通り残りたがるビルドを強制連行して現実に戻る。
という事で晩御飯を食べて戻ってみるとラムネが来た道をずっと見てる、何してるのか聞こうとして私も気付いた。
「おや?僕以外にここに来た人がいたなんて」
「誰だ?お前」
特に気にすることも無く普通に目の前に出てきたのは金髪に蒼い瞳の同い年くらいの男の子?少し歳上っぽいけど、というかここまでの美形って本当にいるんだね。
外国人とも思ったけど、あまりに日本語が上手すぎるしハーフなのか髪と瞳の色を変えてるのか、だけど違和感があるわけてないし多分素の方かな。
「そう警戒しないでよ、僕は別に戦う気はないよ。それと自己紹介か……名前はフロスト、この世界だと結構有名みたいなんだけど、知ってるかな?今最も攻略を進めてるプレイヤーのこと」
「「あぁ道理で」」
道理で隙がないわけだ、それだけやりこんでるプレイヤーなら、リアルでは兎も角こっちでは戦闘経験豊富だろうし、型なんて自然と身につくよね。
「それで君達は……剣鬼さんに武器庫さん?」
「「は?」」
何その不名誉な名前、と言うか話の流れ的に武器庫って私だよね?多分魔魂装で武器が大量に出せるからなんだろうけど、誰だろうねそんな2つ名つけた人。
「なんだ?その変な名前」
「あれ、知らないのかな、2人もだけどいつも一緒にいる人達もこのゲームでは結構有名なんだよ?」
「俺はラムネ、こっちはライムだ、その変な名前で俺を呼ぶな」
あれ私は?さりげなく自分だけ2つ名呼びから逃げようとしてない?
「お兄ちゃん?」
「「え?」」
「久しぶりだね、最近は1人でよくプレイしてるけどそういう事だったんだね」
「はい、みんな優しくてとても楽しいです」
フィロさん……そんなこと思ってくれてたんですね、と言うかトッププレイヤーがお兄さんって知らなかった。
と言うかフィロさん本人はそのこと知ってるのかな?
「それじゃあ僕は先に行こうかな」
「私達もすぐに行くと思います、一緒に行きませんか?」
「そっか、でも先に行くよ、それに可愛い妹のために少し頑張ろうかな」
そう言ってフィロさんのお兄さん、フロストさんは先に行っちゃった。
その後すぐに全員が揃ったから、私達もすぐにその後を追った。
さっき言ったことを本当にやったみたいで、全くではないけど途中のモンスターはほとんど居なくなってる。
進んでる途中にいない間にあったことを皆に説明したけど、正直そこまで驚いた反応はなかった。
まぁそりゃそうだよね、聞いただけだとあんまりイメージわかないだろうし、あぁでもトムヤムクンは結構驚いてたから、私達が変なんじゃなくて氷菓とビルドが関心ないだけかな?
「考えてることがわかるから言うがお前はあの顔で驚いてたのか?」
「ん?」
「ライムちゃん表情があんまり変わらないから分からなかったです」
私は別にポーカーフェイスを心がけてる訳では無いけど、こういう事はよく言われる、そんなに表情固いかな?自分では結構心も表情も豊かだと思ってるけど。
「ないな」
そんな表情云々言ってきた人がなんでそんなに人の心読んでくるんだか。
戦闘が少なかった分登りは早かった。
外に出ると小さな足場がある崖と谷に挟まれた場所に出た。
「ラムネよくここ登ろうと思ったな」
「こっちじゃ手なんて使わなくてもこんな崖駆け上がれたからな、真っ平らな壁じゃなけりゃ登れるだろ」
聞いてると普通にやばいこと言いってるみたいだけど、多分私もできるから何も言わないでおこう。
「でもこれ登るのどうすんの?私達はいいけどフィロさんとかトムヤムクンとか登れるの?」
「俺は頑張れば」
「私は難しいです」
まぁ氷菓はそら飛べるんだろうけど、トムヤムクンとフィロさんはキツイよね。
という事で私の出番かな、実験もあるしちょうどいい。
「じゃあフィロさんこれ乗って」
「これってライムちゃんが戦う時にスキルで作ってるやつ?」
「そう、大盾なら人が乗るスペースも十分だからどうぞ」
「なぁライム俺は?」
「……はい」
という事で鉄棒では無いけどぶら下がれるくらいの長さの棒を作って浮かせる。
「あれ?なんか俺だけ扱いが」
「私がたまに魔法撃つからせいぜい耐えるんだな」
「ちょっと待て氷菓!?」
さて私も自分の分の大盾を出して登ってく、なんでかビルドが隣に座ってるけど私達の体格ならまだ余裕あるし別にいいか。
他の皆はラムネがほんとに崖を走ってて、氷菓は魔法で浮遊して登ってる。
「さて、今日の目標だった高い場所に登ることはできたけど、そろそろ落ちるか?」
「ワープポイントにも登録できたから、私はそれでいい」
「私もそろそろ落ちようかな」
「私はもう少しやりたいけど母さんが怖いから落ちるな!」
「そんなに怖いのか?」
怖いといえば怖いし、怖くないといえば怖くはない、母さんの説教の仕方は常に笑顔なのに周りの雰囲気が何も笑えない空気に変わるから、口調とかはそのままでも言い訳すら叶わないような圧があるんだよね。
私も怒られるのは怖いから今日はもうログアウトする。
高い位置にワープできるポイントはできたし、これで明日からはこの崖の昇り降りがなくなって早くなるかな。




