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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
二章
108/111

いざ新たなる旅へ

(トムヤムクン視点)


 神器作るとか言う話をして、早速探しに出てきたはいいんだけどさ、一体どうすりゃいいんだよ。


 確かライムはピンとくる物を探せばいいとか言ってたよな。


 それから暫く考えたけど、結局なんも考えが浮かばなかったから、適当に掲示板を漁ってみると面白そうなのがあったから早速行ってみることにした。



 一旦ギルドに戻ってライムに飛ばしてもらって、早めに目的の場所まで移動してきた。


「へぇ、ここが魔道王国ね」


 俺は今日初めて魔道王国に来たわけだけど、これは結構面白い街だな。

 通りには様々な種類の魔物が馬車を引いてる。


「こんだけファンタジーしてんのに、特にお土産話も聞かなかったけど、確かそのまま直行でまともに見てなかったんだっけ」


 分身で見に来ればいいのにって前に聞いたんだけど、返ってきた返答がな。


 ライムも氷菓も何回か街に来ることはあったみたいだけど、称号のせいなのか周りが騒ぐからろくに見れなかったことに対する愚痴だったっけ。


 さて、今日は適当にこの街を探索して、いよいよ明日からかな。


 ということで、満足するまで自由に回りまくって今日はログアウトした。



 次の日俺は魔道王国にある宿屋からログインして、朝から港まで向かう。


 魔道王国の王都は、断崖絶壁に作られた都市で、戦争時には籠城戦も可能らしい。


 そんで国の首都で直接他国と貿易してるみたいで、その利便性からプレイヤーもこの国の港から海に出てたりするらしいんだけど。

 そんな俺達の知らぬ間に、海を探索していた召喚士プレイヤーが、召喚獣と共有した視界越しに、いかにも歴史で見た日本の港のような、石垣に木造の建物が建ち並ぶ陸地を見つけたって、掲示板にスクショが貼ってあったんだ。


 そんでタイミングのいいことに、と言うより皆が闘技大会に向けて色々と躍起になって探索でもしてんだろうな。


 何処か未開の土地を探したい俺からすればこの攻略は渡りに船だな。

 船だけに。


 早速港まで来たはいいんだけど、結構な人だかりだな。


 残念だけどイベントで一緒に魔王側で参加したギルドはいないみたいだ。

 周りを見ると受付らしき場所があるから、あそこで参加することを伝えればいいのか。


「すみません。一人なんですけど参加はできますか」

「はい。お一人の場合はこちらで編成したパーティーでの参加になりますがよろしいですか」

「それで問題ないです」

「それでしたら職業をお聞きしてもよろしいですか?」

「職業はタンクをやっています」

「それでしたら......こちらのパーティーで大丈夫ですか?」


 そう言われて渡されたのは、既に編成してあるパーティーの簡単な情報の書かれた用紙だった。


 なるほど、前衛に大剣使いと双剣使い、後衛に補助特化の魔法使い、回復担当の神官、それと水中要員にテイマーね。

 確かにこれならタンクの俺が入れば守りが加わってバランスも良くなるな。


「これで問題ないです」

「わかりました。それではこちらで連絡を取りますので、あちらで待っていて下さい」


 受付の人から指定されたのは、近くに建てられた喫茶店の様な場所だった。

 店の中は日が差し込んでいて明るく、広場を見渡せる縁側は港の賑わいも合わさって凄く活気に溢れてるのが一眼でわかる。


「あのー、トムヤムクンさんですか?」

「てことはさっき勧められたパーティーの人達ですか」

「そうです。私はこのパーティーのリーダーをやっているリミって言います」

「俺はタンクをやっているトムヤムクン、まあ長いからトムって呼んでくれ」


 一人で机に座って待っていると、五人組の集団に声をかけられ、もしやと思っていると、どうやら今回の俺がお世話になるパーティーの様だ。


 そこからは攻略が始まるまで、互いにステータス情報の交換なんかをやっていった訳なんだが。

 このパーティーかなり偏った編成してないか。


 大剣使いはかなり筋力値に振っていて、双剣使いは敏捷値、後衛に至っては全員が魔力に殆ど極振り状態なんだよな。


「なあ、このメンバーっていつから一緒なんだ?」

「実は私たち最近始めた者同士で集まったんです」


 どうやら今回のメンバーは、つい最近終わったばかりの広告イベントを見て始めたらしい。

昨日の今日でこの効き目って、てか広告ってまだ公式サイトにしか載ってなかったと思うんだが。


 取り敢えず今回の俺の役目は、後衛の護衛に専念するだけでいいらしい。


 しばらくして今回この攻略を指揮しているギルドから話があって、中規模の船にそれぞれ6パーティーずつのレイド形式で向かうらしい。

 用意されてる船はギルド側で作った様で、各船員ごとに少しのお金を支払って行くらしい。


 港を出発した船は今のところ真っ直ぐに仮称日本を目指して進んでいる様だ。


「トムさん、何をしているんですか?」

「俺はタンクだし、このゲームもそこそこ長い、だから一応見張りでもってな」

「なるほど......」


 まあ釣りなんてやりながらだから本当に気休め程度だけどな。

 今俺達がいるのは船団後方の中央付近だから、本来なら見張りなんて必要ないんだけどな。


「見張りお疲れ様です」

「えっと...どちら様で」

「あ、すみません。僕はこの船で魔法使い達のまとめ役を任されている左野と言います」


 いやいや左野て。


「それって本名じゃないですよね」

「あ、これは違いますよ。ただ適当につけただけなんで気にしないでくれたら」


 左野さんはそれなりに長くこのゲームやってる人みたいで、特にギルドに入ってる訳でもないソロ活動をメインにしているらしい。

 今回の攻略の参加も、この攻略を主催しているギルドのギルドマスター繋がりで呼ばれたらしい。


「それにしても、参加してよかったよ。君みたいなちょっとした有名人に会えるなんて」

「え、トムさんって有名な人なんですか?」

「あれ、話してはなかったのかな」

「特に話す様なことはないと思うけどな」

「いやいや、君達は結構凄いことしてると思うよ」


 そんなもんかね。

 俺としてはこれと言って活躍はしてないからな、話題になるのはどちらかっていうとラムネ達みたいな現実でもそれなりに技術のある奴らだしな。

 けど今回の冒険は、そんな俺も何か見つけるためのものだからな。

 ぶっちゃけると、元の大陸の方は探索が結構進んでて、あんまり目新しい物はなさそうなんだよな、迷宮なんてライムが馬鹿みたいに攻略進めちゃったから、本当に何も見つからなそうなんだよな。


 しばらくはぼーっとしながら釣り糸を垂らしていると、前の船が少し騒がしいのに気が付いて、いつでも戦闘できるよう盾を取り出しておく。


「どうしたんですか?」

「前の方が少し騒がしい、多分戦闘してるな。俺達もいつ戦闘になるか分からないから、一応武器の用意をしておいてくれ」


 スキル使って周りの気配を探ってみる。


「おいおい……既に敵陣ど真ん中じゃねぇかよ」


 これはちょっとやばいかも。

 探ってみればご覧の通り、四方八方海中には魔物の大軍ひしめいてて数なんてかぞてるだけ無駄だろ。


「全員今直ぐに戦闘準備だ!この船団は既に敵陣ど真ん中にある。初手が遅れた。先ずは体制の立て直し、全員この場を凌ぐことだけを先ずは考えろ!」


 さて、楽な航海とかそんな状況じゃないなこりゃ、どこまで守りきれるかやってやるか。



 それから暫は対処に追われてあちこちサポートに回って、それが終わればまた次の襲撃、一回目と違って今度は初めから探知スキル使ってたおかげで、段々と船の皆は慣れ始めていった。


 勿論できるなら周りの船もサポートに向かったが、結果は散々だったよ。


 目標にしていた日本が見えて来た頃には、100ちかく居た船団は既に半数所か、ざっと数えても20から30隻位しか残ってない。


「これは酷い結果だな」

「しかし今回は助かったよ。君がいなかったらここら周辺の船は勿論、僕らだって生き残れなかった」

「そうだ。俺だって、この船の指揮を任されてはいたが、あんたがいなきゃとっくに崩壊していた」

「そんな大したことはしてないよ。俺はせいぜい守るくらいが取り柄だし。最善を尽くしても、手が届かなきゃ守ることも出来ないからな」


 結局は前からの課題がより浮き彫りになっただけだ。

 俺はこのゲームを始めた当初は、あいつらの足りない部分を補うためにタンカーなんて選びましたが、正直今のあいつらを見てて、俺の存在意義がそうそう薄くなってきたからな。


 もしかしたらあいつらは言わないが、心の中じゃな。


 全く、あいつらはそういう事考える様なやつじゃない。

 それが分かっててこんな事考えてるんだ。


「相当今の自分に参ってるなぁ」

「トムさん?」

「ああ、なんでもない。それじゃあ港には着いたわけだし、ここいらで解散かな。かなり時間もいい感じだし、俺も落ちるよ。今日はありがとな」

「はい!こちらこそありがとうございました!」


 そう言って深深と頭を下げるのに戸惑いながら、俺は現実に戻って行くのだった。

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