仲間になりたそうにしています。
今日はもう諦めて徹夜コースで来た道を逆走してるわけなんだが。
「じぃぃ……」
なんで着いてくるんだ……。
「おーい。なんで着いてきてんだよ」
「……いつから気付いていた」
「いやあれで無視しろって方が無理だろ」
「な、私はこれでも隠れ潜む事には自信が」
「それは無い」
視界の端をチラチラすることもあったのに、もしかしなくても鬼人族って節穴一族なのか。
「それでなんの用だ?」
「貴様の監視だ。そのために私も着いて行く。許可を取るつもりは無いが、その代わりにこれをやる」
「なんだ?」
なんかめっちゃ禍々しい不気味な色した宝玉貰ったんだが……。
「……」
「それは私達鬼人族に伝わる凄い石だ。まあ、今の時代誰も覚えておらんし、ホコリ被ってたから丁度いい。貴様に遣るから文句はなしだ。どうしたのだ?」
これか、これがライムが言ってたピンとくるってやつなのか?
「すまん、ちょっと急用。今迎え頼んだけど一緒に来るか?」
「はい?」
今ちょっとライムに連絡とったら、だいたい5分もかかんないとか。
こういう時、動けて、物量戦ができて探索にも優れてるのは羨ましいなまじで。
「今別の大陸にいる俺の仲間に連絡とって来てもらってるんだ。そんで一緒に来るかって」
「……よかろう。貴様がその大陸で何か話さんとも限らない、仕方ないからついて行ってやる」
「はいはい」
それから暫く待ってると、気配探知に馬鹿みたいなスピードでこっちに突っ込んでくる反応がいきなり消えて、目の前に一瞬で転移して来た。
「お前5分って……」
「遅くてもですよ。上手く行けば3分は堅いです」
いやどうしてVRゲームでRTAやってんだよ。
「それより見つかったの?」
「多分な。それとライム、こいつも一緒に連れて行く」
そう言って軽く茨姫のことを紹介しようと振り返ってみたら、なんかめっちゃ警戒してるんだけど。
「どうしたんだ?」
「貴様はバカなのか!そんな化け物をここに呼び込むなんて、やはり私達の村を……」
何言ってんだこいつ。
「別にどうもしないっての、それより来るのか?」
「あ……い、行く!行くに決まっているだろ!」
「それじゃあしっかり掴まってね。行先は私達のギルドハウスで」
そう言った直後には既にギルドハウス前なんだが。
それと到着と同時に茨姫がへたりこんじゃったんだけど。
「まじでどうしてんだ?」
「まさか、きさ、お主ここの住人なのか?」
「そうだけど、どうしたんだ?」
とりあえず中に入って、話を聞くだけ聞いてみると、曰くここにはどれだけ化け物じみた者がいるんだと、その化け物に何でか俺も入ってるけど、まだマシな方だと思う。
そんでやっぱりライムは異常な方らしい、なんか群を抜いてるらしい。
ただそれ聞いても、俺はライムよかラムネの方が戦闘面とかやばそうだけどな。
多分言ってるのは、実際の戦闘能力とかじゃなくて、客観的に見たり、感じたりする、なんて言うかエネルギー的な重圧じゃないのかと、それで言えば2番手は多分氷菓だな。
「そんじゃあ俺はミューの所に行くから少し待っててくれ」
「まって、まさか1人残して行くつもりか!」
いや、どんだけ怖いんだよ。
「大丈夫だ。ライムは意味もなく急に襲ったりはしな」
「言ってることだけ聞くと、私見境ない節操無しに聞こえるんですけど」
いやそういう所だぞ、言い終わる前に俺の脇、耳をかすりそうな位置を通り過ぎて言ったナイフが壁に突き刺さってる。
「まあ、兎に角大丈夫だ」
「説得力がないのだが」
取り敢えずあとはライムに任せて、少し急ぎ足で鍛冶場まで行く。
「おーい、ミューいるか?」
「ほーい。これは珍しいお客さんだね」
そう言えば装備のメンテ以外だと、俺殆ど鍛冶師達とは接点無いな。
防御力が無駄に高いのも考え物だな。
「実はこんな物を見つけたんだよ」
「ほー……何これ?」
「いや、なんか鬼人族の凄い石らしい」
「え?なんて……」
分かる、その反応分かるが悪いのは俺じゃないぞ。
取り敢えず手に入れるまでの簡単な流れ的なものを説明することに。
「なるほど?」
「何故に疑問形なんだよ」
「けどオーダーは受けるよ。けどトムって盾いるの?」
「あー、正直要らない」
本当に対象を急いでる時は体で行くし、そもそも俺はラムネに対抗して合気やってたから、どちらかって言うなら。
「篭手って武器として使えるのか?」
「ビルドのあれは見た目グローブだけど、括りは武器みたいだよ」
まじか、いつも着けてるからオシャレとかだと思ってた。
「なら、篭手でいいかな」
「なんならライムの魔魂装だっけ、あれみたいに必要なタイミングで盾をドンみたいなのはどう?」
成程、それは確かに有りだな。
「じゃあそれ採用で、あ、あと俺の武具なんだけど、動きにくくならない程度で、所々覆い隠せる甲冑をお願いするよ」
「へぇ……、もしかして新しい能力でも手に入れた?」
やけに鋭いな。
「当たってるけど、言いふらすなよ」
「まだ何とは聞いてないし心配ないよ〜」
それもそうだけど、実際どうだか。
鍛冶場を後にした俺は、そのまま茨姫を待たせてる部屋まで戻った訳だが。
「何やってんだ?」
「しー。お、起こさないでよ!」
俺が部屋に入って見たのは、凄いガチガチに固まってる茨姫と、その膝を枕にして眠りこけてるライム。
ライムに関しては、未だに怖いのか警戒してる茨姫の様子から、待ってる間一言も話してないすら有り得る。
あまりにも暇で、眠くなった末ここまで極端な距離の詰め方してるんだろうな。
「そんなに警戒しなくても、ライムは急に襲いかかるようなやつじゃないぞ」
「……しょうがないでしょ。こっちでは確か気や魔力を見てるんだっけ。それと同じように、私達も相手の妖力を見るのよ」
「けどライムは妖力どころか、呪力すら使わないぞ」
「使わない、もしくは使い方を知らないだけ。学べば使えるわよ。そもそも人間だって、自分の膝に龍の首が乗ってたら怖くもなるでしょ」
いや、なるかもしれないが。
それはライムが龍と同列って事なのか。
移動も出来なさそうと、空いてる向かいの席に座った所で話しかけられた。
「それでなんだけど、あんた私と式神の契約して欲しいんだけど」
「は?」
訳が分からん。式神ってのは分かるが、なんでそういう流れになったんだ。
「私はあんたの見張りに来てるけど、こっちでも人間を殺してたらそれも難しいの。だから妖力の供給源として、あんたと式神の契約をすることで解決するって訳」
なんか凄いキメ顔で言ってるけど、それ要は俺を見張るとかで勝手に着いてきたのに、その見張りをするのにエネルギー的なものが足りないから俺に供給しろと。
何故に自分の見張りを自分で付けなきゃ行けないのか。
「それ俺にメリット無くないか」
「私を呼べるんだから寧ろ破格よ」
「えぇ……」
それを自分で言う奴は大抵がしょうもないんだが。
「だいたいその契約ってどうするんだよ」
「簡単よ。あんたが呪力で宙に五芒星を書いて、そこに今度は私が自分の妖力でなぞれば終了よ。それで呼ぶ時は五芒星をまた同じふうに書いて名前を呼ぶだけ」
簡単そうで大変結構なんだが、それ毎回やらなきゃいけないのか……。
「けどそれってライムじゃダメなのか?」
「なんで見張りの対象から離れなきゃいけないのよ」
これ以上言っても多分平行線だろうし、諦めて自分の呪力を手に集中させて、空中に五芒星を書く。
続けて茨姫がそれをなぞる様に五芒星を書いて終了らしい。
「これで問題無いわ」
「なんか色々と問題だらけな気もするんだが」
取り敢えずライムは起こして、一式服を頼んでから、茨姫は俺の部屋を好きに使わせる。
ただなんか誤解を招きそうだから後でラムネに相談して、隣を空けといて貰うか。




