これ前にもあったぞ
皆がそれぞれやりたい事のためにあちこちを冒険する中、私も分身を使ってあっちをフラフラこっちをふらふらしている所だけど。
あからさまな怪しい集団発見、識別もNPCだから多分また面倒なクエストかな。
最近また思ったことがあります。
私のイベントって突発的なものが多過ぎませんか。
取り敢えず見てしまった以上は気になるから、フード付きのローブを来ていざ出発。
「あの、こんな所でどうしたんですか?」
「何者だ!」
「ただの冒険者です。依頼で森の探索をしてたら偶然見かけて」
突然出てきた私に驚いたのも一瞬で、事情を話したら今度はヒソヒソとないじょ話、益々怪しい一団ですね。
「なるほど、ならば少し伺いたい、これくらいのフードを被った子供を見なかったか。背はこれくらいだ」
どうやら人探し中みたいで、探してるのは今の私みたいにフードを被ってて、身長は多分ティアと一緒かな。
「私はそれなりに深い場所をあっちから真っ直ぐ向かって来ましたけど、子供所かまだ人とも会ってません」
「協力に感謝する」
それだけ言って、私が話した方向とは別に向かって消えて行ってしまった。
気になったからこの森に気配探知を使ったら、いました一人の子。
そういう訳で早速その子の目の前まで転移。
「キャッ!?」
「おっと」
速度的にそうかなって思ってたけど、どうやら魔力で身体強化して走ってたみたい。
支えようと掴んだ所で目が合って、少しして正気に戻ったら声を出さずに力ずくで離れようとする。
「落ち着いて、貴方はどうしてここにいるの?」
「………」
試しに話し掛けたはいいけど、やっぱり警戒してるのか、何も話してはくれない。
しょうがない、ここは奥の手です。
「助けて欲しい?」
「!?」
助けて欲しいかの問いかけに対して、確かに反応を返した。
取り敢えずは先にフードを外して顔を見せる。
「私は通りすがりの冒険者」
「本当に、本当に助けてくれますか?」
「どんな事情かにもよるけど、ここから逃がしてあげることは出来る」
そろそろ大丈夫そうだし手を離すと、胸元に引いてから、意を決した様にその手をフードに向けて、ゆっくりと顔を見せてくれた。
「私は、こことは違う国の人間です。それで、私の……お父様は………」
何かを必死に伝えようとはしてるけど、溢れる涙と若干の過呼吸で言葉が出せてない。
「大丈夫。ゆっくりでいいよ」
「うぅ……」
そのまま暫く泣き止むまで待つことに。
これで分かったのは、取り敢えずさっき見た怪しげな集団が確実に黒、それでこの子は何か巻き込まれて逃げているところと。
泣き止んだ後は、まだ収まらない涙で目を潤ませながら、必死に自分の状況を伝えてくれた。
「なるほど、帝国は今そんな事に……」
私が聞いたのは、この子の父親、現帝国の皇帝の様子が最近おかしい事、そして同時期から段々と城内が、気が付けば帝都にまでその違和感は広がっていた。
けどそれなら帝国にいる筈のプレイヤーが何も騒いでいないのが余計に気掛かり。
「兎に角戻って……!?」
「チッ」
奇襲の警戒用に常に展開してる狭い範囲での索敵に突然引っ掛かった反応に、咄嗟に回避行動を取ったのは良かったけど、おかげでかすったローブは後で自分で作らなければいけなくなった。
「やっぱり安物は駄目ですね」
「おいガキ、てめぇ何もんだ?」
「名前を名乗る気は無いですけど、強いて言えば、ちょっと強いメイドです」
「馬鹿にしてんのか。そのガキを寄越せ」
さっきの集団には居なかった。
考えるなら、さっきの集団とは別の組織か、それとも別行動してたか。
それと最初の攻撃、あれは私に向けたもの。
常に展開している索敵は半径30メートル、その時点で走っていたって事は遠目から私とこの子を誤認して、そしたらまさかの本人も一緒。
棚から牡丹餅なんだろうけど、状況とタイミンクが良くなかった。
だって私は今……。
「結構怒ってるよ」
「なっ!?やめ……!」
「消えて」
その瞬間横に凪いだ私の腕からは、瞬時に作り出した魔魂装が斬撃となって飛び出し。
襲って来た男を言葉通り分断してもなお、その進行を続け、その後には一直線に森の気が倒れている大きな森の切れ目が出来上がっていた。
「すごい……」
ちょっと不味いかも、これは流石にやり過ぎた。
「それよりも先ずはここから移動しないと」
「あの」
何か言いかけたけど、その前に手を取ってそのまま転移でギルドホームの私の部屋に戻ってくる。
するとタイミング良く部屋の扉を叩く音。
「ライムちゃん。ラムネくんが呼んでる、お客さんも一緒にって。それと少し話し合いもって」
聞こえて来たのはフィロの声、このタイミングて来たってことは当然バレてるって思った方がいいよね。
「分かりました。今向かいます」
「あの……」
「大丈夫です。約束は守ります」




