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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
二章
104/111

救出劇はスマートに

 フィロの後について執務室まで向かうと、今回は全員お揃いだった。


「やっと来た」

「今回はしょうがないでしょ」


 実際に、分身体の方が気になる現場に遭遇してたんだし。


「その子は……適当に椅子を出してやれ」

「じゃあこっち」

「なんでこっちに来るの」


 そうは言うけど、なんだかんだ言って氷菓は子供の面倒見がよかったりする。


「ここなら特に気にする人いないし」

「私はそんなに自分大好きじゃない」

「別にそんな事は言ってない、お腹すいてたらこれ食べて」


 取り敢えず連れて来たけど、こっちの話し合いは聞いてても暇に感じるだろうから、目の前にお菓子を乗せたお皿を出しておいた。


「単刀直入に言うぞ。帝国に行く」

「え……」

「そんで出来るなら戦闘を避けつつ無事帰還が」

「ねぇラムネ、ちゃんと順を追って説明してあげないと、この子は皇帝の娘」

「はぁ……そっちを先に教えといて欲しかったよ。まあ、要は人命救助だ」


 どうやら目的は人助けらしい、それで相手は前のイベントで知り合ったハズキさん。

 この子の話を聞いて、帝国にいるプレイヤーが何も声を荒らげていないのに疑問を持ったけど、実はハズキさんが既にリズさんに相談していて、様子見で今まで帝国にいるプレイヤー達と、国内の様子を伺っていてらしい。

 それで流石にこれ以上の情報収集は出来なさそうって事で救援要請、それが何でうちにって、さっき話した通りリズさん経由でうちに来たみたい。

 あとは国同士の距離的に、フロストさんやレーゼさんのいる騎士王国は私達のいる国を挟んで向こう側、結局一番近場でかつほぼ確実に協力して貰えそうな場所がうちだったらしい。


「そう言う訳だ、取り敢えず救出に関してはライムに任せる」

「分かった。じゃあその間の……えっと名前聞いてなかった」

「おい」

「そんで?名前はなんて言うんだ」

「えっと、私は……クラーヴィアと言います。呼ぶ時はラヴィで大丈夫です」


 という事でクラーヴィアは取り敢えず氷菓辺りに押し付けるとして、当事者からも話を聞いておかないと。


「それじゃあラヴィ。帝国で何が起きてるのかって知ってる?」

「はい。数日前でした」


 この時から既に何らかの異変が起きているのは知っていた。

 しかし周りは取り合ってくれず。

 何時からか、一人城内を歩き回り、時には書庫の文献を頑張って探した。

 そんな中遂に見てしまった。城の地下で何やら巨大な魔法陣を一心不乱に描き続ける宮廷魔道士長と、その背後に佇む宰相の姿が。

 怖くなり逃げ出した後は、隙を見て街を出て逃げ出し、それであの森で私と会ったのが一連の流れみたい。


「なあ氷菓」

「言っておくと、見た事も無い魔法は当てられないよ。ただ、異変を感じる前から作業してて、ずっと書き続けてるなら相当な大きさのはず。国ごと吹っ飛ばすのかな」

「え……そんな……」

「あ」


 なんて事言ってくれてるんですかこの魔法バカは。


「えっと、多分だから。そもそも、そんなに大きな魔法陣、起動にどれだけ魔力使うか……」

「ちょっと待ってね」


 そこで私は、いつの間にか色々変わってたスキルの中から一つのスキルを発動して目を閉じる。


「何かの結界かな。ぼんやりしてるけど、目測でだいたい百メートル四方の空間かな……」

「ライム何言ってるの」

「だから地下の広さ。そこに端の方までびっしり書いてある。距離とか空間そのものに結界があるのか凄いぼやけてるけど」


 今私が使っているのは神眼ってスキルで、前に使ってた千里眼その他諸々の強化と言うかそれら完全上位互換なスキルで、他にも幾つか変わってるのあったけどそれはまた今度かな。


「お前はまた変なスキル覚えて……」

「変とは失礼ですね。そもそも広い範囲の移動は私の専売特許ですよ。今更誰に負けるとも思えないし」

「確かにライムのスキルって戦闘、魔法、生産。他にも色々あるけど、幅広く取った割に器用貧乏ってわけじゃないよな」


 失礼ですね。これでも自分の分身体ですから、愛着を持って全力で育ててるだけですよ。


「そんな事より、魔法陣の方だけど、どれだけ改造したって最低でも500億、多く見積もれば更に3……いや5桁は増えるよ」

「いやそれ何の数字だよ」

「生贄的なやつか!」

「違う。一度の使用に対する消費魔力。今500億って言ったけど、これは本当に規模とか用途をある程度絞ったからの最低値、けど事によっては国中、下手するとこの大陸中の人間の魔力使うよ」


 運営は一体どう言うつもりなんだろうか、こんなの下手をすればゲーム自体がサービス終了になりかねない。

 取り敢えずリズさんに連絡して来てもらうことに、その間私達は無言のまま待っていた。


「それで、なんなのこの重たすぎる空気感は」


 リズさんが早速来てくれた訳だけど、先ずはさっきの話し合いで話し合った事を軽く説明する。


「つまり私達が知らない所で、とんでもない事態が進んでたと」

「それもだいぶ終盤のな」

「ねえライムちゃん。今からハズキと連絡取るから、直ぐにでも連れて来てくれないかしら。ゲーマーとして、一商人ギルドのマスターとしての勘だけど、直ぐに動いた方がいいかも」


 リズさんがそう言うのならちょっと急ぎますか。

 それからのリズさんの行動は早く、ハズキさんはその数分後にはログインして来たみたいで、私は前に分身体が向かった人気の無い帝都の路地にすぐさま転移する。

 待ち合わせ用の見印の元に行くと、一人で佇むハズキさんを見つけて、その隣にあるベンチに平然を装う様に座る。


「お久しぶりですハズキさん」

「こっちこそ久しぶりだな。悪いが話は後だな」

「みたいですね」

「数が数だ。人気の無い場所で合流だ。既に帝都から出る事が出来なくなっていてね」


 なるほど、そう言った事情もあってうちに、と言うより私個人に話が来たのかな。

 それからはタイミングをずらしてその場から消え、直ぐに目的の場所まで向かう。

 ハズキさんはさっきフレンド登録したから話もこっちで出来る。


 合流場所には既に沢山のプレイヤーが集まっていて、皆が息を潜めるようにして警戒している。


「何者だ!」

「一応今回の協力者です。ハズキさんから聞いてないですか」

「き、君は確か...」

「ギルドリベルシングに所属するメイドのライムです。今回は皆さんをこの場から逃がす為に来ました」

「逃がすって、一体どうやって...」

「取り敢えず皆さんは互いに手を繋いで下さい。全員が繋がるようにです」

「聞いたなお前達、その子は今回私が協力を頼んだ者だ。分かったなら直ぐに手を繋げ」


 丁度来たみたいで、ハズキさんが指示を飛ばせば、全員が素早く互いの手を繋ぎ合う。


「こちらは何時でも行けるぞ」

「それじゃあハズキさんは果たしの手を握って下さい」


 最後にハズキさんに手を握ってもらって、こっちで探知と合わせて全員が繋がってるか確認していく。


「それじゃあ跳ぶけど、一瞬なので気にしないで下さい」

「それでは頼む」


 ここまでの大人数の転移は初めてだけど、そこまで難しく感じないのは普段からやってる分身体の転移乱用のせいで慣れたのかな。

 転移は一瞬で、さっきまでの閉鎖的な路地裏から、ギルドの庭先まで一気に転移する。


「着きましたよ。皆さんは取り敢えずリズさんが来てから、それまでは中で待機でお願いします。ハズキさんは私に着いてきてください」

「了解した。私も早くこの現状を整理したい。悪いが案内を頼む」


 そうして屋敷の中へ向かおうとした時だった。

 現実じゃ有り得ないような激しい地震に踏ん張りも効かずにその場の殆どの人間が倒れてしまう。

 事態の確認をしようと、私はまた神眼でこの揺れの原因で確定だろう場所を見るべく動こうとしたところで、今度は謎の声がとこからともなく、と言うよりは脳内に直接語り聞かせているような話し声が聞こえてくる。


『この大陸に住まう多くの種よ。我々はこの時より宣言する。我々悪魔族は全種族に対して殺戮と略奪、そして暗闇よりも深き絶望の薬草された未来を与えると。さあ神々よ、貴様らも遊びたいならば降りてくるがいい。数万年前とは違う。これからは奴隷共の選別をするのでな、少々歓迎は雑になるがな』


 その言葉を最後に謎の声の持ち主は喋らなくなった。

 おそらく今ので最後だったのだろうけど、数万年ってそんなに力貯めてきた奴をこんなまだ始まって数ヶ月しかしてないようなゲームに出していいボスじゃないでしょ。

 そう内心愚痴をこぼしていると、クエストボードが目の前に現れた。



悪魔の王と星の輝きⅠ

難易度:不明

内容:防衛

報酬:所属国や結果に応じて変化

誰かが悪魔の王を蘇らせた様だ。奴らは闇より湧き続けこの大陸を飲み込もうとするだろう。

既に奴らは動き出している。急いで防衛の準備を進めるんだ。




 難易度が不明って言うのが少し不安要素ですけど、これはこれでまだやれそうで安心しました。

 今後もどう変化するか分からないなかで、室内を急いで移動して行く。

 部屋には全員が揃っていて、リズさんの他にも、多分この国を拠点にしてるギルドだと思う人達が数人座っている。


「ハズキ!無事で良かったわ」

「リズが直ぐに助けを出してくれたからな。方法に関しては私も驚かされたが」

「そうね」


 再会を喜びあいつつも、確りと切り替えして会議を始める辺りリズさんは商人より参謀とかやる方が向いてる気がする。


「それでだけど、何処か情報を持ってるギルドはあるかしら」


 これにはハズキさんも含めて全員が沈黙した。


「事前情報は無し。それなら今後の対応として、出来るだけ準備をするしか無いわね」


 誰もが悪魔との戦闘が初めての中で準備するのは大変だろうね。

 そんな他人事の様に様子を見ていると、不意にこの場に対して空間干渉して来るのを感じて向き直る。

 それに気付いて氷菓やフィロ、ラムネと気付いて全員が警戒するのを見て、さらに会議に参加している全員の動揺が広がる中、私は平然と佇む。

 暫くすると丸いゲートが開いて、そこから何時ぞやの暴食王が飛び出してくる。


「ライムー!聞いてよ酷いんだー!」


 いきなり飛び出すなり私に飛び付いてきた少女に周りがどよめいたのは一瞬で、直ぐに警戒する視線が飛ぶ。

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