悪魔は自由なんです
謎の少女がいきなりゲートから飛び出して抱き着いたのに周りが驚いたのも束の間、直ぐに警戒の視線が飛んでくる。
まあ、見るからに見た目悪魔だし、今回の的な訳で警戒するのも分かるけど、ベルは能力が厄介だけど警戒する程強くない。
「ねえライムちゃん。この子は一体どういう事かしら」
当然の質問だけど、ベルの自己紹介って何を言おうかな。
「えっと、長く続いてる名家のお偉い悪魔のベルです」
「私の紹介雑じゃない!?」
「敵では無いのよね?」
「今は大丈夫だそ。と言うか私だってこんなアホみたいな戦い参加出来るかー!ここ攻めろって言われたらバックれてやる!」
何か変に回りくどい言い方ですね。そんなに助けて欲しいなら素直に言えばいいのに、取り敢えず後で何かくれるなら匿ってあげますよ。
「ライムちゃんとの関係を聞いてもいいかしら」
「ライムは私の専属料理人だ!」
「と言っている残念悪魔を餌付けしてしまった可哀想な料理人です」
「取り敢えず中がいいのは分かったわ...」
何故か頭が痛そうなジェスチャーで悩み出すリズさんだけど、そんなに不安な事は無いと思うけど。
せっかく目の前に敵側の将軍がいるんだし、聞けることでも聞いてみようかな。
「ねえベル。今回の戦争の作戦知らない?」
「いくらライムがいい人間でも、それは答えられない」
確かに宣戦布告して速攻で作戦漏洩してたら笑い草だもんね。
しかし私はアイテムボックスから出来のいい唐揚げを取り出して、それをベルの前に晒す。
これが面白いくらい効果的で、ベルの目が料理の更に吸い込まれて離れない。
「取り敢えず大雑把な戦力だけでいいから、教えてくれないかな」
「うぅ〜、食べたいけど、バレたら怒られる...」
情報バラしても怒られるだけでいいんだ。
「仕方ない、今回は諦める。それじゃあビルドこれ上げ」
「わあああ!!待つのだ教えるから!!」
結局は食欲に勝てなかったベルは、美味しそうに唐揚げを頬張りながら味方の大まかな戦力の一切を喋り尽くしている。
全体的な戦力としては、王を頂上にそこから2、3体位の強力な悪魔がいて、そこからは一桁二桁と数が増して、最終的にはプレイヤーなんて比じゃないほどの大軍勢が押し寄せてくることが既に確定してしまった。
「この事は私の方から掲示板に流しておくわ。それで出来るだけ戦力を集中させて...」
「それは止めておいた方がいいぞ」
リズさんが今後について纏めていると、ベルが横からそれを否定する。
「理由を聞いてもいいかしら」
「あまり詳しくは話せない。けどお前達人間に出来て、なんで私達悪魔に出来ないと考えるのか、言えるのはそれだけだ」
「それってまさか...」
そう言って私の方を見てくるリズさんに、私もベルがなんで否定して来たのか分かった。
そりゃ人間側に転移を乱用してる人がいる訳ですし、悪魔側にも何かしらの転移、もしくは転送の手段があると考えるのが妥当なのは確か、と言うかベルなんて毎回突然来るし、確かにこれも転移的なスキルだ。
「そうなって来ると下手に他国から戦力は集められない」
「どこのギルドも自分達の国を守るので手一杯だろうからな」
「この街の防衛はうちのギルドでやる、リズさん達は街の中で待機、それ以外の人は余裕があればこっちの援護を頼みます」
どこも今は人手が欲しい中、ラムネがなんでもない事のように言ってのける。
「あのねラムネくん、このイベントは戦争なの、だから一つのギルドで街の防衛は」
「うちならやれますよ。たださっきも言ってたみたいに、相手側に転移を使える奴が居るかもしれない、だからそっちの対処は任せます」
うちのギルマスはこういう時に容赦が無い。
「お前らは問題あるか?」
「問題無し」
「愚問だぞ!」
「大丈夫かな」
「たく断れねえだろ」
「私も頑張りますよ」
という事で街の防衛はうちで請け負うことになった。
取り敢えず防衛については一旦話を置いとくことになり、次にどれだけの備えが必要なのか、リズさんが把握している中でこの国に拠点を置くギルドは勿論大勢いるにはいるが、その中で悪魔を相手に出来る程のプレイヤーが一体どれくらいいるのか。
「人間のことはよく知らないけど、この部屋の人間なら一番下の悪魔になら勝てると思うぞ」
「他にも基準が欲しいところだけど、取り敢えず色々と当たって見るわ。イベントが本格的に動き出すのがいつか分からない以上、こっちも出来るだけ備えるしかない、皆も協力をお願いね」
会議って感じじゃなかったけど、取り敢えず何処がどう動いて行くのかを話し合った結果、私達はそのまま防衛に、他も討ち漏らした悪魔は問題なければ街にいる他のギルドが対応する事に、その他にも補給に関してはリズさんがかなり頑張ってくれるみたいだから、戦闘系ギルドは大体が殲滅戦に加わる。




