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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
二章
102/111

開戦!リネルティスの防衛①

 あれから現実で3日が過ぎた頃、ゲーム内には大きな変化が起きていた。

 急な揺れを感じた次の瞬間、空にはまた謎の笑い声と同時に、赤黒くてドロっとした線が引かれた大地や山を映し出していてその周辺だけがこの世とは別のものに変化していくのを見せられた。

 実際に見てみると、本当に同じ状況の場所がそこら中に広がっていた。

 その後も変化が続いて、今では他国間の移動が完全にできなくなっている。

 それは私の転移も同じで、流石は神様に喧嘩を吹っかけるだけのことはあるなってラムネが少し感心してたのにトムがツッコミ入れてたのはいつもの光景、それでついさっき進軍を開始したって律儀に教えてくれたのを聞いてたところ。


「さて、相手が来るまでどうせ時間無いだろうし、さっさと配置に着くぞ」


 お城の奥に広がる北の海を私が、西の広大な平地に氷菓、帝国と隣接してる東はビルド、街の正面の南はラムネが、それで倒せなかった細かい相手を止める最終ラインの結界をトムとフィロがそれぞれが囲って対応、状況によってはフィロは回復や支援に回ることも出来る。


 全員が移動してからまもなく、目の前には以下にも悪魔側ですって見た目のモンスターが次々に湧いて出てくる。

 私は魔魂装で創り出した盾を足場に空中に佇んでいると、相手側の司令塔らしき人型の悪魔が出てきた。


「おいおい、俺様の暇潰しが女っ子一人かよ。折角他の奴らと競ってるのにこれじゃあ小石蹴飛ばして終わりじゃねぇかよ」


 なんだろうかこの小物感、なんなら負ける気がしない。


「おいガキ、とっとと帰って親でも呼んでッ!?」


 相手のペースに合わせる気もないということで、試しに一発打ってみたけど、顔に直撃したはずの攻撃が全く効いてなかった。


「なんだ少しは楽しめそうじゃねえか。けど残念だったな...俺様はな!あらゆる攻撃を無効化しちまう、今更絶望したって遅過ぎだ、精々楽しませてから死ねや」


 あらゆる攻撃の無効化、私の物理、魔法を反射するスキルとは違うものって事でいいのかな。


「丁寧な自己紹介には感謝します。なので冥土の土産と言う事で、私は多分あらゆる攻撃を反射する事が出来るんです。自分の攻撃にやられた間抜けだと、あの世で自慢できますよ」

「人間如きが図に乗るなよ。今の言葉は絶対に後悔させてやるよ」


 そう言い終わると同時に、周りのモンスターが一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 それを宣言した通り全てを目の前の悪魔に反射させる。


「クソが!鬱陶しい!」

「なら辞めさせたらどうですか、大好きな王様に助けを求めに逃げるのも良いと思いますよ」

「何処までも舐めやがって、おいお前ら、更に密度を上げろ。こいつはどう足掻こうが人間だ、多少はえーみてぇだが限界が来れば終いだ。そこを一気に叩き潰す」


 脳筋に見えて意外と頭は回るみたいで挑発が聞いてるかなって思ったけど、案外冷静に状況を分析しながら指示を出している。

 その間に街に攻め込まないのは手数が減れば今の勢いが無くなることになるからってところだろうけど、それなりに頭使って来る方が厄介だから困ったものだよ。


 少し数が増えてきて、案の定あの魔族見失ったと思ったら、急に弾幕の中から腕が伸びて来た。

 なるほど、自分の能力を考えた特攻ってこと。

 ギリギリのところでガードした。


「思ったよりも頭の回転が早いんですね」

「...」

「ん?」


 煽るように返した私の言葉にも反応しないで、少し警戒した時だった。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!ガッ...ア゛ア゛」


 そのあまりにも苦しそうな声に自分の手元を見ると、半分以上の刀身を砕かれたムギが叫び続けていた。


「ッ!?」

「おいおいどうしたクソガキ。さっきまでの余裕はどうした?」

「何をした...」

「ただ殴ってやっただけだ。所詮は人間が作った模造品、神が作った武器じゃ無ければ壊す事なんて簡単だ」


 ありえない、神器は破壊不可能って書いてあった。

 まさかそれさえも無効にするようなスキルがあるの?


「...」

「あ゛?」


 私はムギをしまって、もう片方に持っていたアズキもしまう。


「おいおいしらけさせるなよ」

「...」

「なんだよ無視すんのか」


『ダメ!1人で行っちゃダメ!』

『お母さん!』

『アズキも、戦えるよ』

『アメ守れる』

『ツキミも回復...』

『シズクも助ける』

『ココアも行く!』

『出られなくなってる...』

『お、母さん...』


 傷付くと、失うかもしれないと知っていて、この子達に苦しい思いをさせるくらいなら...。


「『魔魂装』...」


 私は本気で武器を作り出して、空には全てを一切を覆い尽くさんとする数の剣が浮いている。


「なるほど、これが本気ってか?残念だがこれじゃあ俺はーー」

「やれ...」


 悪魔の言葉を遮って攻撃を開始した私は、敵の数をどんどん減らしていく。


「物量には物量ってか、テメェら殺っちまえ!」


 ただ一点、私を狙って集中砲火される弾幕を、今度は全て回避して殲滅に集中する。


 時々海に潜って直接叩きに行ったり。

 気が付けば海面は地獄絵図になっている。


 そして今も尚自分で作った盾を足場に空中をホバーボードのようにして、高速での物量戦が続いている。


「ハッハッハ!そんなんじゃ減る訳ねぇだろ。いつまで続ける気だかな!」

「...」

「チッ、黙りかよ」


 そんな攻防を続けている内に、相手も慣れてきたのか、巨大な鯨?よく分からないけど大口開けて待ち構えてる。


「私をあまり舐めないで...」


 足元の盾の形を変えて、私を覆うように、槍の矛先に姿を変えてそのまま核ごと貫き通す。


「こいつの魔力量どうなってんだ...」


 とっくに限界に決まってるでしょう。

 けど、あの子達を使うなら、一人でだって殲滅してやる。

 もう何百万って殲滅したのに、まだ探知には倍以上の反応が残ってる。


 なりふり構わず倒しまくっていたけど、突然消えた盾が私の魔力切れを伝えていた。


 海に落ちて、モンスター達に囲まれながら暗い海に沈んでいく中で、突然左手の腕輪が光だし、知らない剣にちょっと混乱してると通知が来た。


『特殊条件を満たしました。神器が特殊覚醒しました』


 特殊覚醒...

 そこで私は自分の左腕にあるはずの腕輪を確認すると、銀色に変化した腕輪が嵌っていた。


『お母さん...皆お母さんと一緒に戦いたいの、だからお願い、私を取って』

「...ありがと。それじゃあ助けてもらおうかな」


 反撃開始、直ぐに殲滅する。


「『広域化』範囲を最大出力、『環境支配』『付与:雷』、シズク一気に決めるよ『時間操作』、更に『時空神』効果範囲を拡張。更に並行して二つ目の魔力を圧縮...」


 ここは大陸から程よく離れた遠海、全力の雷属性を付与した魔力暴発の電気分解、それによって発生する大量の有害ガス、そこに私の限界まで圧縮した雷魔砲で狙い撃ち、放電から発する火花の熱での引火から引き起こされる大規模な爆発の猛威の中を苦しめ...


 私の娘に手を出しておいて...五体満足で帰れる保証があるとは思わない事だな魔族。


「『強制解除(バースト)』」


 その瞬間、私の支配下から解放された一つ目の魔力球は、急速にそのエネルギーを発散しようと、行き場のない魔力を内で暴れさせ、周りに集まった生物、無機物の一切を飲み込み、狙い道理に大量の海水の分解によって辺りには大量の気泡が発生する。

 きっと今頃上空はガスで充満しているはず。


「一体何が起きているのだ!あいつは何を...なっ!?」


 気が付けば相当距離が離れていたのか、それともあの悪魔の感知能力が低過ぎるのか、今更逃げるために動いた所で...もう遅い!


「『時空神』!アメ『空間断絶』!」


「なっ!?なんだこの壁は...」


 私は更にもう一つの魔力球海面へ向けて、そしてその先で逃げようとしている悪魔に向けて解き放つ。


「『魔力操作』更に追加だよ。『付与:光・火・炎・爆裂』、イチゴ、ココア、2人の能力借りるね。『付与:太陽・破壊』!」


 解き放つ前の魔砲に魔力操作で介入し、更に光の付与で速度を増し、各火系の属性を乗せまくって火力の強化、そして絶対に防げない様に破壊能力の付与も追加、あの時の氷菓を模倣した私なりの極大魔法。


「今の私の最高火力...無効化出来るならやってみろぉぉお!」


「何っ!?クソックソックソッ!クソッガキがあぁぁぁああぁぁ...!!」


 海底から大空を貫き登って行く極光。

 だけどその光を追い掛けて、未だに反応のある敵を目指して。


「あいつの首を教えてツキミ『月夜の道標』」


 その言葉に応えるように、私の視界には一本の光の線が続いてる。

 そして握り締めた剣から伝わるムギの魔力...。


「ありがとうムギ。ミルク『創造』で何時もよりも強力な魔魂装...いえ、もっともっと上の、『神装』!アズキ、あいつを魂ごと消しちゃお。『付与:暴食』!」


 ムギが支えてくれるお陰で、今も大量に消えていく魔力は、それを上回って回復している。


「コトネ」


 そして最後に...今ならなんだって出来てしまう。

 そんな感情のままに最後の仕上げをする。


「『覚醒』!更に『解放』!...『神格化』!」


 神器を本来の力に戻す覚醒、そしてその神器が持つ能力の限界を消すための解放、そして神器を一時的に神様と同等の力にする神格化、それによって武器の装備者の戦闘能力も上昇、さっきまで回復していた魔力も、流石に少しずつ減り始めてる。


 だけど問題無い、あの悪魔との距離はもう数キロだけ、こんな距離直ぐに縮められる。


「まっ!?待て!俺様は悪魔の中でも高位の存在だぞ!?特別に貴様を俺様直属の部下に...」

「結構です」


 今更何かをのたまい始めたけど、そんなのに聞く耳を持つ気は無い。

 そして剣の間合いへ、そして目と鼻の先まで来た悪魔の首に目掛けて止めの一撃を叩き込む。


「はあぁぁあ!」

「があぁぁぁ!!こんな、こんな筈じゃあぁぁあぁぁ...!!!」


「悪魔のルールなんて私は興味ありません。けど、私から見たあなたは、倒すべき敵です」


 それから近くに小島があったからそこまで向かって、ずっと張り詰めてた緊張が解けるとそのまま座り込み、さっきまで戦っていた空を見上げる。


「はぁ...ゲームでこんなに疲れたのは久しぶり」


 流石に魔力の残量と回復量を考えないで、一万本も魔魂装で剣を作ったのは反省しないとダメだね。


「お母さん...」

「ッ!?」


 そう言えば忘れてた。

 声のする場所を見れば、私の膝を枕代わりにして甘えている()()の...と言うか私そっくりな幼女がいた。

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