四天王第四席……あれ、これだけ?
あの後も旅を続けた俺達は、遂に魔族領に足を踏み入れた。
「ここから先は敵の領土だからね。常に襲撃には警戒しつつ、このローブは絶対に外さないように」
今フロストさんが言っているローブは、以前出会った商人をしているリズさんが、これからの事を考えて譲ってくれた装備で、効果は相手が自分を同じ種族だと認識すると言うシンプルなものだが、実際に使ってみるとこのとおり、現在に至るまでに検問が3回とか少し多くないかと言いたいぐらいあったけど、何処も怪しまれずらくらく通過出来た。
「初戦は魔王四天王第四席」
「確か闇鍋の奴だよな」
「いやー彼は中々に面倒ですぞ」
この3人は相手を知っているみたいだけど、第四席ってそんなに強いのか?
すると僕の表情から何かを察したのか、フロストさんが鋭くついてきた。
「ヤサキくんは多分そんなに強い相手なのかって思ってると思うけど、実はそうでも無いんだよね」
「確かに今回の魔王四天王の奴らは第一席から三席まで個での実力が突出し過ぎていてるが、それは四席、鍋も一緒だ」
「彼は中々に侮れませんぞ。錬金術師でありながら、我々戦闘職のギルドに負けること無く、その場を支配する数々の道具」
「正直攻める側の僕らはとても不利な状況なんだよ」
話を聞いてて納得したけど、確か向こうは1人で来るはず。
錬金術師って戦闘に参加してるところをまだ見たことないんだよな。
「全然想像がつかねぇ」
「まあ、行けばわかるさ」
そして街中を進むこと数十分、俺達は遂に四天王の1人が居る屋敷まで来たんだけど。
「お待ちしておりました勇者様方」
「貴様は」
「私は当屋敷にて代理の支配人をしております。ささ、土鍋様がお待ちです」
それだけ言って、代理の支配人と名乗る男は、屋敷の奥へと向かってしまう。
「これは……」
「どうやら途中に何かがあるって訳ではなさそうだね」
「万全の私達に挑む度胸は買ってやろう」
「しかし気は引き締めて」
どうやらそのままボス戦まで行けるみたいで、連戦を想定しなくても良くなった分今回は助かった。
「こちらで御座います」
それだけ言って支配人さんは静かに去って行った。
「……行きます」
目の前の大きめの扉を開くと、そこには紫色の光を浴びながら、巨大な鍋を掻き回す黒一色の青年が立っていた。
「おや、予定より少しばかり早かったですね」
「ふん、どうせ既に仕掛けは終わっているだろう」
「ま、予想はしてますよね当然」
この人が今回の……ん?
「フロストさん。あの人……」
俺はふと気になって事を聞くと、また驚く情報が飛び出てきた。
「ああ、彼は吸血鬼に変身出来るんだよ」
「え?」
まじか、てかそんなスキルが……あ、そう言えば前回のイベントで、龍みたいな角が生えてる人がいた気が……。
「あれは一応ユニークスキルの部類だね。やろうとすれば誰でも取得出来る系のスキルだけど、使えばステータスは異常なほど強化される。僕が知ってるのは彼とあと2人かな」
あんなのがあと2人はいるんだ……。
ここで一つ、前にフロストさんから聞かれた事があった、俺にはユニークスキルが無いのかと、勿論そんなものは持ってない。
その時に聞いたのは、このゲームには様々な分類のスキルがあるという事だった。
「それで、話は済んだか?」
「お陰様で、それじゃあ始めさせてもらうよ」
「面白い、さっさとこい!」
そこからの戦闘は平行線を辿っていた。
序盤は向こう側のアイテムによる物量差で若干の不利があったけどそれも長期戦になればある程度は傾く。
俺は伊達さんの支援を受けつつ攻めに加わって、フロストさんとハズキさんは各々で責め立てている。
「チッ!あんたらはバケモンかよ」
「これでも一国の主でな」
「部下にも才能のある子がいるからね。遅れをとるわけにはいかないんだよ」
少しずつだけどこちらが押しているみたいだ。
このまま行けるかと思ったタイミングで、相手側が動いた。
「ははは、これで手詰まりか……」
「大人しく降参でもするかい」
「まさか、最後くらい悪あがきするさ!」
「!?」
すると相手の体がどんどん黒く塗りつぶされていく。
「はははは!!私の体を媒介に!高濃度の毒ガスを錬金する!!これで貴様らはここで……!?」
最後の言葉を発しようとしていた相手の腹には、ハズキさんの武器である槍が深深と突き刺さっていた。
「悪いがこちらにもなすべきことがある。貴様の実験に付き合うのは、また別の機会にだ」
「くっ!?仕方ない……今回は負けてやる。だが勇者!覚悟しておけ、魔王様は貴様には倒せ……!」
「最後までよく喋るやつだな」
凄い迫力だった……。
四天王の最初の一人を打ち倒した僕らは、部屋から出て直ぐに支配人がいた事に警戒していたけど、どうやら自分が倒された後に幾つか案内させるように言われていたらしく。
俺達はこの屋敷の宝物庫と、次の四天王の場所までの転移陣へと案内された。
「この転移陣は使っても大丈夫かな」
「おそらくは、しかしここまで美しい魔法陣は中々……これの製作者には是非とも会って話してみたいですぞ」
「ならさっさと行くぞ」
ハズキさんに急かされて次の四天王の元まで向かう。




