2つのスクロール
お店の方から戻ってきたルイーザさんの手には、何故かスキルスクロールが2つ持たれている。
するとルイーザさんは2つのスキルスクロールを私の前に並べてから話が始める。
「この前の子もそうだったけど、不思議な存在ね、貴女達」
なんかいきなり話が飛んでるし、この2つのスキルスクロールのことは?この前の子は多分氷菓のことだと思うけど。
「その2つのスクロールの前に1つ話しておいた方がいいわね……その前に1つ聞かせてちょうだい、貴女達は、貴女は一体何者?」
「冒険者?」
ルイーザさんの割と真面目だったのだろう質問に対して結構誤魔化した感じになってしまった。
でも分からないよね、この世界の住人じゃないって言っても、そもそもプレイヤーなんて存在を知ってるのかな。
「まぁそうね、あまり長い付き合いでもないのに、変なことを聞いたわね」
私からしたらその話は正直どうでもいい、まぁ関係を悪くする気もないし、このことに関しては何も言わないようにしよう。
「それじゃあ本題ね、と言っても、これは料理のお礼のためのものと貴女の存在についての話、貴女は多分……自分が知っている以上に自分を知らない、そこまで長くもならないわちゃんと聞いててね」
一応頷いておく、目の前でそういうイベントが進んでいく展開は嫌いじゃないし。
これがイベントなのかは知らないけど。
でも自分でも知らない自分ってなんだろう?
「貴女だけって話じゃないけど、でもここまで綺麗に割れてるのは珍しいから」
私だけじゃない、でもその何か?がなんやかんやで綺麗に割れてるのが、見てきた中では私が初めてってことでつまりどういうこと?
「多分スクロールの事を話した方が分かりやすいわね。今貴女の前に並べたのは、片方は貴女が欲しい魔力操作、そしてもう片方がさっきの答え、教えるのもいいけど自分で鑑定してみたら?」
そう言われてもこのスクロール、特に変わったところはない、というか鑑定したら普通に気力操作って書いてあるし、気配察知はもう使えるから、正直気にしてなかったスキルだけど、これがさっきの答えって……全くわかんないんだけど。
「まぁ、分からないわよね……。説明するとね、人はこの世に生を受けて直ぐに、気力と魔力の両方が身に付くんだけど、その割合が全くの平等になることなんてまず無いの、その後の成長も含めれば尚更、それに他の国でもそうだけど、国の戦力が騎士と魔道士に別れるのはそれぞれにより向いている方、要は自身がもつ力がより強い方に所属するからよ、弱くても入る人はいるけど、上に行けばいるのは本当にそういった人達だけになってくるわ」
あぁ、確かにそれなら3つも4つもいらないね、それに騎士って括ってるだけで武器なんて自由だ、流石の国や騎士団も不得意な武器で死にに行けとは言わないだろうし。
「今のでわかったと思うけど一応続けるわね。それでその国の戦力を決める基準にもなる2つの力が、貴女の場合全く同じ質量を持っているの」
「へぇ、てことは私はやろうとすれば両面で色んなことを学ぶ事ができるってことね。でもそれって結局は半分の出力、要するに器用貧乏な体質してるってことだよね」
「まぁそれは仕方ないわよ(これが器用貧乏!?冗談でも笑えないわよ!こんなの普通はありえないわよ、こんなにも大きな気力と魔力が、互いに干渉しようともせずにいるうえ、まるで使える主人からの支持でも待ってるみたいに静かだし……。今はまだ小さいけど、正直これからが怖いわ……)」
んん〜、ルイーザさんの顔見れば私が正解を言えてないのはわかるけど、正直ここから先が全くわかんないだからもう無理、百聞は一見にしかずとは言うし、器用貧乏なりに何か出来ないか、今のうちから考えてみようかな。
そして私はルイーザさんが持ってきてくれたスクロールを使って、無事2種類の操作スキルを取得出来た色々実験がしたいのと、焼き鳥のあまりを皆に食べてもらいたいのでそろそろお暇させてもらおうかね。
最後は普通に見送りしてくれたけど、その背後に覗く廃墟のような店構えに、せっかくの感動も台無しだよ。
まぁ元々感動も何もないんだけどね実際。
その後はいつも通り街の外へ出て、適当な、と言っても人気の一切ないような場所で、新しいスキルの使い方について色々実験を初めてみる。
まずは気力操作を試してみると、これがなかなか凄い性能だった。体の内から外に何かが広がる感じがして、まだ手とか足とか凄く狭い範囲だけど、そのまま見えない膜のようなもので防御力が上がってる、木を殴りつけても全く痛くない、というか何も感じないから本当に殴ったのか分からない……。
他にも試してみると状態異常への耐性と武器に纏わせたりもできてなかなかに使い勝手が良かった。
次に魔力操作の方は、まず消費する魔力の量が今まで以上に減ったのと、多少なら威力に変化をつけることもできた、その他は似てたり違ってたり、似てるのは身体強化が多少できること、それと状態異常耐性が着くところ、違いは武器には纏えないこと、これは武器の問題もあるのかもしれないからこれからも見ていく必要がある。
色々試してみて思ったのは、気力操作は身体の表面の強化で、魔力操作は身体の内側を強化している感じだ。
「これって重ねて使えたら強そう」
てことで早速実戦……をしたのはいいんだけど、何故か同時使用が出来ないのだ、それからやってみて初めて気が付いたけど、なんか身体がピリピリしてるみたいな感覚がずっと続くんだよね。
例えで言うと正座で痺れた感覚が全身に回ってる感じだ、お陰様で私は今下手に動けないうえに立てもしない。
「あぁ暇だなぁ〜」
何か変化がないかとも思って解除はせずにひたすら寝そべっているわけだけど、流石に暇にもなる。
魔力察知があればそっちのレベルも上げるんだけど、ないものは仕方がないから今は気配察知を使って周りの状況でも見ながら暇をつぶしている。
「ここまで五感の再現がリアルだとこんなことも起きるのね、早めにしれて良かったけど出来れば今じゃない方が良かったよ」
流石に今のままだと何も出来ないので、これ以降は明日の課題、時間も時間だから今日はもうログアウトする。
名前 ライム 短剣使い Lv19
生命29
魔力78
筋力29
防御29
敏捷53
器用193
スキル
短剣Lv34、暗殺Lv26、気配察知Lv32→41、気力操作Lv1→12、魔力操作Lv1→12、料理Lv1→9、裁縫Lv1、掃除Lv1、錬金Lv1、火魔法Lv12、水魔法Lv17、風魔法Lv21、土魔法Lv24→27、光魔法Lv17、闇魔法Lv12




