詩「わたくしてきなこと」
亡くなった祖父にむけて書いた私の切実な思いです。いずれ、私もいなくなりますから、赤裸々ですが、私はやはり泣いてしまうため、ここに残します。
いなくなることによって
成長とともに過ごした数々を探し出して
数日間涙はこみあげてくる
もっとも生前から
こんな日がくるのではないかって
泣いた日もあったけど
探し出しても次の行為は来ない
あの家の大きな柱は
屋上から物置まで改造してしまう
祖父だったと思う
たましいを失ってから30年経ったら
私も還暦となって思うように動かなくなる
かもしれない
そう考えるともう折り返しというわけで
これからどうしようかと
相続のことを学習したら
人生はふざけたものに思えてきた
爺ちゃん
細かい爺ちゃんのノート見つけて
家計簿アプリ始めてみたよ
私はあなたの孫だから
あなたの行為や態度を真似て
まだまだ爺ちゃんの知らないものが
道端には転がっているから
小石を届けに行くよ
最後にあげたのは確か虎の絵のマグネットで
あなたは涎掛けないように布団に虎の絵のタオル縫ってたね
あなたも私も寅年で
仙台で震災後、私は電気の止まった部屋で
ジャングルブック読んで泣いて
パリ行きの飛行機のなかでジャングルブック観たら
貴方もこの映画観たくて映画館行ったの聞いて
流石だと思ったよ
ダーウィンが来たを欠かさず観るのも
私と貴方でした
トウモロコシを食べる貴方を見て
もろこしという小説を書けてよかったと思う
寒くて自転車通学嫌がる自分を車で送ってくれて
栄養つけろって弁当用意して
つぶした目玉焼きとか変なお好み焼きとか
かきもちとか冷やし汁とか
カレーやおでんを大量に作って
ハンバーガーや寿司買ってきて母を困らせて
一緒に灯油買いに行ったり
八百屋で蜜柑を一箱買ったりして
戦時中のことを何度も話したね
書くことでやっぱり涙は溢れてきました
特攻隊の遺書は気になって読んでたね
あなたの描く素朴な絵が私は好きです
あなたの過去の文章を読んで
あなたの弱気なところも知りました
一緒に遠出に付き添って初めて
あなたの体の衰えを知りました
最後まで知恵ある爺ちゃんでいてくれて有難う
受けた思いの数々は
私から色んな形にして受け渡してゆきます
お疲れ様でした
最後に一句
私も書いたことを忘れてました
おじいちゃん
ああ おじいちゃん
おじいちゃん
遼平