現実からの逃避
〜プロローグ A〜
「貴方は、この世界をどう思いますか?」そんな事を問う文がこの世界にはいくつも存在する。その答えは、ある人もいるだろうし、ない人もいるだろう。人によって全く異なる答えもあるだろう。
ただ、こう思ったりする人もいるのではないだろうか?そう、「そんな事を考えて、そんな事を問うて何の意味があるのだろう」と。
この少年もその一人だった。少年は一人、ネット書庫で見つけた文が表示された画面を半目で見ながら呟いていた。「別にそんな事考えたってこんな腐りきった世界が変わる訳でも無いのに...」
世界をゴミクズと断じた少年:剣崎 風磨の世界は希望と絶望を巻き起こす珍事に関わってしまったことから全く違う世界と変わりゆくのであった。
~第一話 大発明~
最近ネットのニュースもテレビのニュースも同じことを延々と報道してる。なにがそんなに興味を引いたかなんて引きこもりの俺には関係ない。…そう思っていた。俺がやりこんでいるオンラインMMORPGの公開チャットでとある会話を目にするまでは。
「なぁ、知ってるか?あの、ニュースでやってる人間の新しい生活空間になるとか言われてるゲーム機の話」
「知ってる。てか、知らねぇ奴いるの?」
「まぁ、居ねえだろうよ。で、俺らの住む新しい世界になるゲーム発表されたじゃん」
「されてたな」
「お前あれどれにする?」
「ファンタジー世界一択だろ。空も飛べるし、英雄にもなれる。それに、ファンタジー世界はこのゲーム作った会社が作ってるそうじゃん。」
「期待できるよなー」
俺は何を言ってるかわからなかった。人間がゲーム世界に住む?どういうことだ?まぁ調べてみるか。 俺が検索した結果はすべて信じられないような現実を示していた。天才発明家:姫沢 宙。ゲーム機から家庭用ロボットまで、幅広い機械を作ってきた会社の社長兼開発リーダー。そんな天才が、国と連携して進めていた企画。人類ゲーム世界移住計画。どうやら、本当にゲーム世界に{住む}らしい。日本では無料でゲーム世界に移住できるらしい。その機械の名はドミナートル。語源はラテン語で支配者。なるほど、本当にAIが人間の生活を管理する時代が来たらしい。まぁ、この世界に心残りも無いし、俺もファンタジーゲームに移住するか。ファンタジー世界といってもSFチックなとこもあってネットは今のまま使えるらしいし。
~プロローグ B~
私は親に愛されてはいない。親が金持ちなおかげで生活に不自由はない。ただ、やはり両親は私を愛していなかったらしい。
彼女は姫沢 結衣。天才発明家とうたわれる姫沢 宙の実の娘だ。そして、ニート、ひきこもり、ゲーム、アニメを気色悪いと考えているお嬢様である。
嫌だ。でも、お父様の命令は絶対…。行くしかない。
~第二話 苦痛と覚悟~
両親は私のことを使い捨ての道具にしか思っていない。今回私はこの趣味の悪いゲーム内移住計画の実験体…もとい、移住者第一号にされる。ゲームなんてくだらない。気色悪い。なのになぜ私がそんなところで暮らしていかなきゃいけないのか。そんなのこの家に生まれた以外に原因なんてない。一般移住者は世界を選べるそうだけど、私にはそんなことの選択権すらない。お父様が最も多く移住すると考えた剣と魔法の世界に私は強制的に移住させられる。それに、この不自由のない生活から一転自分だけの力で生活しなくてはいけないのだ。両親もこれば管理者の娘として楽に暮らせるだろうが、両親は向こうの世界…つまり現実世界で管理をするようだ。私は一人で生活するのだろう。そんなこと嬉しいはずがない。むしろ吐き気がする。大嫌いなゲームに移住してこれから一緒の空間にいるのはのは私が嫌っていた者達だけだろう。それでも、行かなくてはならない。でも、帰るためには一つだけ条件がある。その条件をクリアすれば現実世界へ帰してくれるらしい。一般人は好きに行き来できるのに…。その条件がギルドのクラスで最も上のSをとることだ。だけど、仲間もいなければ、ゲーム世界で生き抜く術も知らない。誰かひとり仲間に入れましょうか…そして、従者にすればいい。どんなに嫌っていたゲーマーも利用してしまえばいい。