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私自身が甥のギルバートに会うのは2度ほどしかなかった。嫁いだ娘が頻繁に実家に行くことがよろしくないという建前を押し出して避けに避けまくったのは、娘の初恋阻止目的以前に単に兄嫁、メリルが大の苦手だったからだ。
義姉は一見、人懐っこい振る舞いで誰ともすぐに仲良くなれるが、その裏ではとんでもない悪口や毒舌を振りまいているのだ。賢い人ではあるので振りまく相手は身内や信頼のおける人だけなのだが、私はその中に入っていないのにうっかり私に対する悪口を聞いてしまったのだ。悪口に傷ついたというより、その裏表ぶりに恐怖した。
ギルバートの二面性腹黒ドSは間違いなく母の影響であろう。とはいえ彼もまだ5歳。流石にまだ大丈夫だと思いたかったが・・・
「お久しぶりね、ディアナ。元気そうで安心したわ」
「こんにちは、ディアナ様。お会い出来て嬉しいです」
優しいそうな声色と笑顔で話し出した義姉に続き
ギルバートは見たことのある爽やかな笑顔で5歳とは思えないしっかりした挨拶をする。
ダメだこの笑顔!断念したけど、ゲームを途中までやった私にはわかる。好感度上げ中に見せてた笑顔まんまだ、裏があるわー手遅れだわー。
「お久しぶりです、お義姉さま。お越しいただきありがとうございます。ギルバートも大きくなりましたね、もう素敵な紳士ですわ」
「ふふ、誰に似たのかよくできるのよーこの子」
「それはお義姉さま譲りなのでは?」
「まあ!嬉しい事を・・・
「「おほほほほ〜」」
二面性なところは間違いなくお義姉様譲りです。
こうなればレイラの初恋断固阻止だ。
扉の側に控えていたモリーに目配せし、子供達に入室させた。
「貴方達、ご挨拶」
「はじめまして、レイラ サファイアです」
「のあ さはいやです!」
レイラはちょこんとワンピースの裾を持ち上げ礼をする。また無表情になっているがそれ以外は完璧な淑女の礼だ。ノアは舌足らずの名乗りだったが元気よくお辞儀は出来ている。本当自慢の子供達だわ!内心拍手喝采を送る私の耳に義姉の歓喜の声が入る
「まあまあ!なんて可愛らしいの!はじめましてレイラ、ノア。私はメリル、貴方達の伯母さんよ。この子は私の息子です」
「レイラ、ノア、はじめまして。ギルバートだよ、よろしくね」
小さい2人に合わせてかがんで挨拶をするギルバートは本当に5歳の一人っ子とは思えない振る舞いだ。しかし、その爽やかな笑顔をレイラの間近で振りまくのはやめてほしい。初恋が一目惚れとは限らないがさっさと離すに限る。私はもう一度モリーに目配せをした。
「挨拶だけで申し訳ないのですが、レイラは勉強の時間ですのでこれで」
「あら、まだ3歳でしょ?もう勉強しているの?」
「えぇ、侯爵家の方針で・・・レイラ」
「はい。メリルさま、ギルバートさま、これでしつれいします。ごきげんよう」
「また会いましょうね、レイラ」
お別れの礼を取り、レイラはモリーに連れられて部屋から出て行った。計画通りレイラとギルバートの接触を最小限で済ませることができ内心胸を撫で下ろした。あとは今後も接触を避ければ初恋は阻止出来るはずだが、一目惚れしていたら何の意味もない。
「ぎるにーしゃま!」
「本当に天使のように可愛らしい子ね!」
「あ、ありがとうございます・・・」
挨拶だけで即、実姉よりギルバートに懐くノアを見て一抹の不安を感じたのだった。
今後は更新ゆっくりになります。