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前世も含めて初めての育児だが、レイラは驚くほど手のかからない赤子だった。夜泣きどころか普段も全然泣かず、声もあまり出さない。
成長につれ喋るようになってきたが、ノアと比べても喜怒哀楽が少なく大人しい。
さらに驚いたのはゲームの悪役令嬢は貴族令嬢としての振る舞いは立派だったがそれ以外はあまり出来が良いとはいえない人物だったのに、レイラは教える事を難なくこなすいわゆる天才肌なのだ。
今日も色使い、コーディネートも完璧に着替え終えている。うちの子凄い!本当に天才!!ワンピースも似合っていて可愛い!超天使!!
「よろしい。今日はお客様が来るので髪はモリーにやってもらいなさい。ただし見てやり方を覚えるのよ」
「わかりました」
しかし娘への大絶賛は心の中に留めて対応する。私だって可愛い娘を撫でて褒めちぎりたいが、悪役令嬢にしないため心を鬼にして厳しく育てると決めたのだ。まあ、厳しくといっても何でも直ぐにこなせる上に大人しいレイラには怒る事もなかったが。唯一何度か注意している事は表情の事なのだが・・・
「かぁしゃまー!!」
「おはよう、ノア。今日も元気ね」
レイラたちと共に居間に入るとすぐにノアが駆け寄ってきたのでかがんで抱きしめる形で受け止める。超可愛い満面の笑みで私に抱きつくノアだったけど、私についで朝の挨拶をしたレイラの存在を知り表情が一変した。
「ノア、姉様にご挨拶は?」
「・・・うー」
あれほど最優先事項としていた姉弟仲を良くする事がもうピンチを迎えていた。
レイラは喜怒哀楽が少ないため、無表情なことが多いが大きい目の効果で目力がある上つり目がキツい印象を与えてしまうのだ。
そう、ノアは姉のキツく見える顔を怖がるのだ!・・・どないせーちゅうねん!!
その事実を知ったときの叫びである。
「レイラ、笑顔」
「ごめんなさい」
笑顔を作ることでつり目のキツさが多少和らぐ事を発見したのでレイラにはノアの前では笑顔でいるように言ったが、表情を作る事が唯一苦手のようで何度か注意をしているのだ。無理やり笑顔を作らせる事に抵抗はあるが、顔を怖がるのでは姉弟仲どうこうする以前の問題だ、やむ得ない。
「ねえしゃま、おはよ」
「よくできました、ノア。さあ、今日は貴方達の従兄のお兄様がいらっしゃるのよ、準備しましょうね」
「いとこぉ?」
「はい、おかあさま」
聞きなれない単語に首を傾げるノアが激可愛だったが、初めてのゲームキャラクターとの接触に緊張して愛でる余裕はなかった。
二面性腹黒ドSの登場だ。