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「レイラ、今日は自分で着替えをしましょう」
「はい、おかあさま」
3歳になったレイラは私の言いつけに戸惑う事もなく着る服を選ぶため衣装部屋へ入っていくが、反対に側に控えていた侍女のモリーは今日とて呆れの混じる非難の眼差しを私に向ける。
「もう!いい加減慣れてよモリー」
「口にしないだけマシだと思ってください、ディアナ様。私だけですよ?顔面蒼白で気を失ったり、おやめくださいと泣きすがったりしない侍女は。それにこのような事はご実家内だけでと約束されたはずです」
「子供が産まれるまではきちんとしてました!」
ゲームの悪役令嬢はまさに貴族令嬢の典型である事に思い至った私は娘の貴族意識を薄くしようと考えた。その一環が身支度を自分で行うことだ。
モリーは母の侍女の娘で、侍女になるまでは私と姉妹のように育った仲だ。私が貴族としてあるまじき身支度を自分でするという非常識に慣れていた。
しかし、侯爵家の教育が行き届いた侍女たちや乳母はレイラに服の着方を教え出した私を見て、モリーの言う通り気を失ったりおやめくださいと泣きすがったり・・・正直、それを見た私が驚いたが。
通常、上級貴族の子どは乳母に育てられるがこの環境の乳母に育てられたレイラは間違いなく貴族令嬢の典型となると確信した私はレイラの育児を自分でするためサポート役として嫁ぐ時に実家に残ったモリーを私付きの侍女として呼び寄せたのだ。
「何度も言うけど、これはレイラのため!旦那様にも許可はもらってます。それに同じ事が出来る私は立派に社交の華なんて言われているのよ?悪い事ではないわ」
「ディアナ様は自ら進んでやりたいとおっしゃって意気揚々とやっておられましたが、レイラお嬢様はそうではないでしょう、身支度が当たり前と思われては困ります」
「だから日によっては着替えさせてもらってるじゃない」
「拙い娘の着替えではないですか!」
「ソフィーの実地訓練にもなって一石二鳥でいいじゃない。昔の私とあなたを見ているみたいで懐かしいわ」
「その頃私は侍女教育を終えた10歳でディアナ様は8歳でしたが?」
レイラには乳母をつけない代わりにモリーの娘でレイラの2歳上のソフィーを侍女見習いとしてつけた。たしかにソフィーはまだ侍女教育を行い始めたばかりの年だけど、平民と一緒に育つ事で格差意識をなくすという目論みがあるのだ。
「できました」
モリーの不満な視線に気づかないフリをしているとレイラがきっちり着替え終えて衣装部屋からでてきた。