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最強タンクの迷宮攻略  作者: 木嶋隆太
第四章

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ホムンクルス4


 宿に入ったホムンクルスたちは、すぐに仕事を覚え、今では各ホムンクルスたちだけで宿が回せるようになっていた。


 おおよそ、二人いれば、回せる。

 彼らは仕事はてきぱきと早く、次の行動までの動き出しも素晴らしい。


 基本的に、疲労という概念はない。ただ、慣れるまでは多少、疲れに似たものを感じるらしい。


 一週間ほどが経過したところで、ホムンクルスたちの様子を見て回る。

 町の人たちとも問題なくかかわれている。


 冒険者のほうは時々心配な部分もあるが、俺がにらみを利かせている部分が大きいようだ。


 ホムンクルスを道具として扱う人間は、だいたい7割程度いる。

 残り3割の人間側である俺は、珍しいが、そういう人間もいるんだなと受け入れてもらえるものだ。


「ルード、今日はよろしくね」

「ああ。それじゃあ、冒険者街に行こうか」

「ふふふ、デートみたいだね」


 照れくさいことをいうやつだ。

 けど、ここで照れてはいけない。


「そうだな。楽しもうか」

「え、あっ……うぅ」


 フェアはこう返されると恥ずかしさの限界が越えるらしく、だいたい赤くなって静かになってしまう。

 ふぅ……危ないところだった。さらにあそこからカウンターを叩き込まれたら、俺のほうが負傷していたところだ。


 フェアとともに冒険者街を回っていく。

 ただ歩いているだけではなく、俺はここで聞きたいことがあった。


「隣国のこと……魔物化について、詳しく聞いてもいいか?」


 フェアはこくりとうなずいて、笑顔で話しだした。


「魔物化についてどのくらい知っているのかな?」

「……凶暴になるってくらいだな。あとは、俺と浄化の魔法を組み合わせることで、治せるくらいだな」

「そっか。……うん、まあ私たちもそこまで詳しいわけじゃないけどね。魔物化に必要なのは、魔素っていう魔神が生み出す魔力なんだ」

「……そう、だな。ブルンケルスは魔素を作り出す、得られる手段があるってことか?」

「うん。どうやっているのかはわからないけど、それを魔石に込めて、人に向けて放てるみたいだよ。……だいたいの人は魔素を拒絶するから、魔物化することはないんだ」

「……それじゃあ、おまえたちは無理やり、ホムンクルスっていう立場を使われて、魔物化させられたってことか?」

「……そうだね。私たちが魔物化したのは簡単にいうと、犠牲みたいなものかな。……私たちがいた国で、ホムンクルスは……奴隷みたいなもので。私たちの製作者が楽しむように言ったんだ。……『おまえたちの中からだれが魔物になるのか選べ』って」

「……そうか」

「私たちはみんな覚悟してたんだよ。仲間たちを守るために、私たちが代表になって他のホムンクルスを守ったんだ。諦めてたんだけど……そしたら、キミがたすけてくれたんだ。えへへ、ありがとね」

「それはたまたまだ」

「たまたまでもなんでも、助けてくれたことにかわりはないよ」


 そう言ってくる彼女に照れくさくなる。

 俺がそっぽを向くと、彼女が体を傾けのぞき込んでくる。 

 ニヤ、とからかうようにこちらをのぞき込んできた。


「あはは、恥ずかしいんだ?」

「うるさい」


 そういって少し歩幅を広げると、彼女はぽつりと言った。


「ルナも、キミが助けたんだ」


 少し驚いた。


「ルナを、知っているのか?」

「ううん、けど、ホムンクルスってことはわかるよ。たぶん、ルナもそれで判断したんじゃないかな?」

「……おまえたちもルナと同じように接することができればよかったんだがな。……さすがに、冒険者の目撃者が多すぎた」


 ホムンクルスの証である魔石を見られてしまっている以上、黙っているわけにはいかない。

 まさか、ホムンクルスであることを黙っていてくれ、とは言えなかった。

 怪しまれてしまうからな。

 

 だから、妥協案として、国にこのホムンクルスたちが発見されたことを伝える。また、聞き出した情報から隣国で製造されていることを伝える。

 そして、ホムンクルスたちからはとても警戒されていて、危険な状況であると不安をあおるように伝え、国も様子見を行うようにする。


 もちろん、国も隣国の情報が欲しいだろうから、逐一こちらから伝えていく必要はあるだろう。


「ルード、ありがとね」

「……これからだ。まだ、ホムンクルスたちは危険な状況であることは変わらない。みんなには大変な思いをさせるかもしれないが……」

「そんなことないよ。あそこで生活しているより、大変なことはないよ」


 はっきりと彼女は言い切った。

 俺たちはすべての宿屋を見て回る。

 ……ホムンクルスたちと、直接話をする。みんな笑顔で、俺に感謝を言ってくるものだから、恥ずかしかった。



 〇



 宿をみて回り、昼食を作ってもらっていただく。

 ホムンクルスたちの料理はとてもおいしかった。

 フェアとともに宿を出たところで、見慣れた姿の男二人がこちらにやってきた。


「よぉ、ルード」

「久しぶりだな、ルード。くくく、あの時以来か」


 マリウスとミノウだ。ミノウ……マリウスが名付けた男型のミノタウロスの名前だ。


 ミノウはミノタウロスを示すかのような立派な角と尻尾を持っていたが、凛々しい顔つきであり、亜人として十分通用する。


「ああ、迷宮でぼこぼこにして以来だな」

「ぼ、ぼこぼこじゃない! 我をあまり侮るなよな、人間風情がっ!」


 マリウスはどこかで手に入れたのか日傘をさしている。

 ミノウは日差しも気にしていないようで堂々としている。


 ミノウを示す鋭い角が日差しを反射させ、尻尾がぶんと振るわれた。

 俺は苦笑しながら、ミノウに近づく。


「ミノウ。俺たちはおまえの力が借りたいんだ」


 ぴくんとミノウの角が震えた。

 ぴくぴく、と揺らしながら、彼はこちらに視線を向けてくる。


「くくく、我の力が貸してほしい、か?」

「ああ。物凄くな。お前はマリウスのもとで接客をずいぶんと学んだんだろ?」

「我にできないことなどないからな。あの程度、造作もない」


 ひらひらと片手をふるミノウ。


「その才能あるおまえに、頼みたい。……みんなの接客を見てやってくれないか?」


 いや、まあ……ミノウは足りない人手を補うだけだ。

 マリウス曰く、ミノウよりもずっとホムンクルスたちの接客のほうがうまい。


 ただ、それを伝えるとミノウはいじける。

 だから、彼の力が借りたいという部分だけを伝えると。

 ミノウは嬉しそうに鼻息を荒くして振り返ってきた。


「くははっ! 才能ある! なんと心地よい言葉だ。ようやく認めたなルードよっ! まあ、そこまで、そこまでいうのならば、少しくらいは見てやってもいいだろう」

「……本当か。ミノウは心が広いなー」

「当たり前だ。たかが人間程度の頼み、余裕だ」


 ミノウが腰に手をあて、のけぞるように笑う。尻尾は嬉しそうにぶんぶん振り回されている。

 俺とマリウスはミノウが見ていない隙にピースをした。


 ……事前にミノウの性格は彼から聞いていた。

 おだてると結構いろいろやってくれる。ただ、いじけやすい。


 俺たちに攻撃を仕掛け、あっさりと撃退されてからしばらくは沈んでいたらしい。子どもか。

 ほめすぎると今度は調子に乗るそうだ。


「ミノウ、よろしくね!」


 にかっと笑ってフェアが片手をあげる。

 フェアにも事前に打ち合わせ済みだ。


 ミノウはすっと背筋を伸ばしたあと、びしっと折り曲げた。


「はい、こちらこそ……じゃない! おまえにはこんな丁寧に接するつもりはないからな!」

「うんうん、ミノウはすごいね」

「だ、だろ?」


 ミノウは一瞬で調子よく笑った。

 それから、フェアとともに彼は歩いていく。

 ミノウが去ったところで、俺はマリウスにたずねた。


「それで、マリウス。ミノウは大丈夫なのか?」

「あいつ、接していてわかったがかなり子どもだ。見た目は大人だが、バカなんだ。おまけに戦闘狂でな。けど、まけるといじけるのだがな」

「……おまえに似ているな」

「そんなことはない! オレはあそこまで変ではないぞっ!」


 そんなに違いがわからないがな。

 とりあえず、町はミノウとフェアに任せよう。


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