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迷宮管理3


 しばらく頭を撫でるはめになった。

 というのも、ヒューもレイも中々離れてくれなかった。


 二人が満足したところでようやく離れてくれて、俺はスロースを見た。


「それで……どこから聞けばいいんだ?」

「そうじゃのう……まずは二人からの情報を聞くとするかの? なあ、ヒュー、レイよ」


 扇子で口元を隠したスロースの言葉に、ヒューとレイはこくりと頷いた。

 レイが身振り手振りを行うが、あまり情報は伝わってこない。

 とりあえず、わかったことにしてから、ヒューを見る。


「ヒュー、つまりまとめるとどういうことになるんだ?」

「……私たちが行ってきたのは、一つの工場だった」

「……工場?」

「ホムンクルスたちを、製造している工場、だった」


 決定的な、証拠だろう。

 俺はそれらを耳にして、驚いていた。


「ただ、そこの管理を行っているのも、ホムンクルスたちだった。代表者、と思われる人もいた……けど、みんな警戒心が強くて、さすがに近づくことはできなかった」

「……そうか」

「私たちが調べたのは、ホムンクルスが製造されていることに、ついて。あと、世界中で、人の死体から魔石を回収している、こと」


 ……人間の魔石を使って、新しいスキルなどを獲得するためだろう。

 

「ヒューたちは、セプトにホムンクルスが派遣されていたのは知っていたのか?」

「……ううん、そこまでは。ごめん、ね」

「いや、いいんだ。二人とも、危険な中で動いてくれて、ありがとな」


 改めて礼を言うと、二人は嬉しそうに微笑んだ。

 相手だってホムンクルスの製造という危険を冒しているんだ。情報などは慎重に取り扱っていることだろう。


 俺はちらとスロースを見る。


「他に何か補足する情報はあるのか?」

「そうじゃなぁ。わしも特にはないかの。しいてあげるなら、ブルンケルス王国でグリードはそれなりの立場をもらっておる、ということかの」

「……つまり、上層部もグリードの存在を知っていて起用しているということか?」

「そうなるじゃろうな。じゃからこそ、グリードは自由に動けておる。ブルンケルス王国の狙いは、この世界でトップをとること。グリードの目的は、より多くの実験体を得ること、じゃ」

「……実験体」

「以前にも話したじゃろう? グリードは研究熱心な男での。おぬしの存在を知れば、手に入れたがるはずじゃと」


 ……魔素、聖素、魔力の力を使いこなせるようになったから、だったか?

 そのときのことを思いだすと、彼女はこくりと頷いた。


「まあ、わしら魔王は魔神の一番手になりたくて行動しておるものが多いからの」

「……魔神。復活させるために活動している、んだったな?」

「ああ、そうじゃ。魔神の復活にあわせ、その右腕になりたい魔王が多いというわけじゃ。じゃから、グリードはその立場になるために、実験を行っているんじゃ」

「……なるほどな」


 それが、これまでに見てきた黒い力、か。


「グリードが行っている実験は、人間に魔素を与えた場合についてを調べているんだよな?」

「そうじゃな。自分が聖素の力を取り込む場合を想定してのものになるの。まずは人間を使って、やがては必要ない魔族を使って実験は行われるじゃろう」

「……そうして、自分の力をより高めたいってわけだな?」

「そうじゃ」


 グリードとブルンケルス王国の目的。お互いに利益があるからこそ、手を組んでいるというわけだ。

 ……それで、たくさんの命がつくられ、うばわれている。

 

 ルナやフェア……それに街での戦闘などを思いだす。

 勝手なものたちによって命が奪われるのは、良い気がしなかった。


「……スロースは魔神のために何かをしたいとは思わないのか?」

「わしは、面倒だからいいんじゃよ。それよりは、ここにいたほうが心地がいいからのぉ」

「……そうか。これからも、協力してくれたら、嬉しい」


 俺はスロースをじっと見る。スロースはふっと口元を緩める。


「わしは構わないんじゃよ。食糧さえくれたらのぉ」

「……善処するよ」

「うむ、それなら協力するんじゃよ」


 逆にいえば、もっとおいしいものが手に入る場所があるとなれば、そちらに行かれてしまうだろう。

 ……頑張らないとだ。


「まあ、難しい話はこんなところでいいじゃろう。まだ説明していなかった魔導書の力について話しても良いかの?」

「そう、だな。頼む」


 スロースとともに魔導書の前に移動する。

 まだ説明していない力は……こちらの文字だろう。

 特殊技能。一体なんだろうか?


「これもさっきと同じように文字に触れればいいのか?」

「ああ、そうじゃ」


 スロースがそういったので、俺は魔導書に浮かんでいた文字に触れる。

 すると、次の項目へと移る。

 ……文字が変化すると、そこにはたくさんのスキルがかいてあった。


 特殊技能はつまり、スキルのことか。


「魔物たちにスキルを付与できるということか?」

「ああ、そうじゃ。まあ、ポイントを消費してスキルを付与することができるから、それで最強の魔物を作り出しても良し、逆に冒険者にとって都合の良い魔物を作っても良いということじゃ」

「……冒険者にとって都合の良い魔物?」

「ああ。例えば、倒したときに外皮が成長するための経験値がより多く手に入るようにしたり、魔物を倒したときに外皮を回復させるような魔物じゃな。魔物側からすれば、マイナスになるようなスキルじゃが、冒険者にとっては都合が良いじゃろう?」


 ……なるほど。

 経験値を稼ぎやすい迷宮を作り、冒険者をより多く集めることもできるということか。

 スロースはそこでぴっと指を立てた。


「ただし、都合の良い魔物を倒し続けた冒険者は、実際の技術以上の外皮を手に入れてしまうから気をつけるんじゃな」

「……なるほどな」


 自分の能力を把握しきる前に、成長してしまう可能性もある、か。

 剣の振り方一つをとっても、様々な技術がある。

 それを学ぶのは、当然強くなるためだ。


 ……外皮が成長し、力でごり押しできるようになった冒険者が、それらを学ぼうとする機会は少ないだろう。


「……経験値効率の良い魔物もいるんだな」

「そうじゃな。代表的なものでいえば、メタル化した魔物じゃな。まあ、そういった魔物は出現速度が遅いから、あまり迷宮には向かぬのじゃがな。まあ、冒険者からすればぜひとも倒したい魔物じゃろうし、人気はあるんじゃろう?」

「ああ」


 金属のように頑丈な体をもち、能力すべてが向上するメタル化という魔物特有の突然変異があるのだが、そういった魔物もこの魔導書には存在していた。

 ……迷宮でメタル化した魔物というのは見たことがない。

 それらが出現するということになれば、大きな話題を呼ぶだろう。


「メタル化した魔物は、野生ではその自慢の足で逃走するけど……迷宮だとどうなるんだ?」

「わからぬのぉ。試しに召喚してみたらどうじゃ?」

「……どっちにしろ、最低の魔物でもポイント消費が大きすぎて無理だな」


 メタルゴブリンなどがいたのだが、それらでもポイントは10万をこえていた。

 とにかくだ。外皮を削って稼いでおくしかないだろう。


 あとで、ニンでも誘って、稼ぐしかないか?

 とりあえず、迷宮を弄るのは大量にポイントを稼いでからのほうがいいかもな。

 今動いても、無駄が出てしまうかもしれない。



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不遇職『テイマー』は最弱スキル『正拳突き』で無双する ~追放された少年はハードモードの人生を努力でぶち破る~

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