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迷宮管理1


 魔物の召喚。

 それが可能ならば、これまでとはまた違った手段で魔物の数を増やすことができる。

 魔物が増えれば冒険者たちの関心も今まで以上となるだろう。


「スロース……それは一体どうしたら手に入るんだ?」

「普通は迷宮に備えられているものなのじゃが、ここにはないようじゃの。マリウスが食べたんじゃないのかえ?」

「食べるかバカモノ」


 ふん、とマリウスが腕を組んでそっぽを向く。

 スロースがケラケラと笑っている。


「マリウスが知らぬというのなら、初めからこの迷宮に魔導書はなかったんじゃろうな。それなら、わしが貸してやっても良いぞ」

「……本当か?」

「ああ。ただし、集めたダンジョンポイントの一割はわしが使っても良いというのならの」


 ダンジョンポイント。……あれか、今まで階層を増やすのに使っていたものか。

 スロースとマリウスで、色々と知識に違う部分があるようだ。

 これは、スロースから詳しい話を聞いたほうが良さそうだ。


「その一割は何に使うんだ?」

「わしが好きなものを生産するためじゃよっ。自分で迷宮を管理して貯めるのなんて面倒じゃからな」


 嬉しそうにスロースは微笑んだ。

 好きなもの……美味しいものとかではないだろうか?

 迷宮の機能を使えば生産は可能だろうな。


「わかった。それならスロースが知っている迷宮についての情報をくれないか?」

「交渉成立じゃな。と、いってもじゃ。見たところ、わしからさらに説明できる内容はなさそうじゃがなぁ」

「……本当か?」

「まあの。とりあえず、魔導書の使い方だけは説明してやろうかの」

「とりあえず、頼む」


 スロースに見守ってもらいながら迷宮を作り変えようか。

 もしも、効率の良いやり方などがあればスロースが教えてくれるだろう。

 スロースが近くの余っていた椅子を掴み、そこに腰掛ける。それから片手に一冊の本を召喚した。


 それはとても巨大な本だ。スロースが一人で持つには苦労しそうなものだったが、彼女はそれを指一つで持っていた。


 さすがにそこは、魔王なだけはある。

 スロースはその本をテーブルへとおいて、広げた。


 本のちょうど真ん中あたりからばっと勢いよく開く。

 本は白紙だった。だが、開いた本から空中へ文字が浮かぶ。

 ……何と書いてあるか読めない。


「そうか、いくらルードとはいえ魔族の文字は読めぬか」

「……魔族は文字が違うのか?」

「正確に言うなら、これは古い文字じゃな。待っておれ、すぐに翻訳してやるからの」


 今こうしてスロースたちとは普通に話しているが、魔族には魔族の歴史ありというわけか。

 スロースが片手を魔導書へ当てる。スロースの片手に幾何学模様の魔方陣が浮かび上がる。

 その魔方陣がすっと、魔導書の方へと伸びた。魔方陣は紫、赤、青と色を変化させながら、バチバチと激しい音をあげていく。


 ……大丈夫なのか?


「ルード……離れたほうがいいかもしれんぞ」


 マリウスが顔をしかめながら、ささっと距離をあける。

 ……なんだと? 俺が逃げようとした瞬間だった。 

 ぼふんっ! という音とともに周囲に衝撃が抜ける。


 思わず顔を覆う。爆風がやむと、そこでは無事な様子のスロースが魔導書に片手をあてながら、こちらを向いた。


「ほれ、できたんじゃよ。これで読めるじゃろう?」

「できたじゃない……っ。無茶苦茶なことをするな!」


 マリウスが叫ぶ。

 ……お、おまえがそれを叫ぶのか?


「なんじゃマリウス……まさかビビッたのかえ? やーい、ビビりー」

「ビビってなんかいない……っ。人の迷宮で好き勝手暴れて……っ!」


 しかし、スロースはあっけらかんとした様子だ。


「まあ、マリウス……特に問題は起きていないんだからいいんじゃないか?」


 爆発はしたが、この部屋に傷が出来た形跡はない。

 マリウスは腕を組んで、それから息を吐いた。


 魔導書に浮かんでいた文字を改めてみた。

 スロースの言う通りだ。本当に文字が読める。

 魔物召喚と技能召喚という二つの文字があった。


 魔導書には現在のダンジョンポイントも表示されていて、今は1万ほどあった。

 これだけあれば結構なことができるだろう。


「スロース、早速使ってみたいんだがいいか?」

「ああ、構わぬよ。その文字に手を伸ばしてみればいいんじゃ」

「ああ……」


 言われたとおり、手を伸ばす。

 浮かんでいる文字に触れた瞬間、文字が変化した。


 召喚したい魔物を選んでくださいという文字が出ている。

 魔物は種類ごとに分かれているようだ。


「魔物に関しては、種類がたくさんありすぎるから……右上の検索機能を使うといいんじゃよ。ほしい魔物の名前を入れればいいんじゃからの」

「……なるほどな。凄く便利だなこれ」

「とにかくじゃ、なにか作りたい魔物はおるのかえ?」

「珍しい魔物だな。できる限り市場に出回っていないような魔物……」


 何か、いただろうか?

 しばらく考えてから思いついたのは、カーバンクルだ。

 フィルドザウルスを超えるほどの魔物で、おまけに珍しい魔物。


 俺も一度だけ戦ったことがある高価な魔石を持った可愛らしい魔物だ。

 ……奴らはとにかく逃げるのが得意だ。また、危機に陥ると額についた魔石を捨てて逃げる特性を持っている。


 今では野生でほとんど見かけない魔物で、他の迷宮でも発見されていない魔物だ。

 だからこそレアな魔物として価値が出る。

 調べてみると、カーバンクルはいた。

 

 Bランク相当の魔物であり、消費ポイントは十万ポイントとすさまじいものだった。


「……召喚はできないな」

「ならば、ポイントを稼げばよいのではないかえ?」

「どうやってだ?」

「こうやってじゃよ」


 スロースが俺のほうに持っていた扇子を向けてきた。

 スロースが口元を歪めると同時、その扇子の先に強力な魔力が集まっていく。


 まさか――そう思った次の瞬間には風の塊が放たれた。


新連載始めました!

不遇職『テイマー』は最弱スキル『正拳突き』で無双する ~ハードモードの人生を努力でぶち破る~

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