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帰還2

明日10月31日に、最強タンクの迷宮攻略2巻が発売します!

手にとっていただければ嬉しいです。


 それにしても、久しぶりのクランハウスだ。

 入ってすぐ、受付近くにあった席に俺は腰かける。

 テーブルの上には、何かの手紙が置かれている。


 ちらと見てみると、紋章が入っていたこともあり、国からの手紙であることがわかった。


「マニシア、俺あてに届いた国からの依頼ってのはそれのことなのか?」

「……そうですね。使者の方に渡しておいてほしいといわれまして、預かっていましたが」


 マニシアがすっと俺のほうに手紙を差し出してくる。

 受け取った俺が手紙を開いてみると、キグラスも気になるようで覗きこんでくる。


「何が書いてあるんだ?」

「……迷宮攻略について、らしいな」


 今度世界会議が行われるので、それに協力してほしいというのはあったが、同時に巨大迷宮の攻略も依頼されている。

 同盟国であるエアリアル国からの頼みだそうだ。


「巨大迷宮――そういや、なんかそんなのができたって話だな。けど、またなんでそんな依頼をオレたちにすんだよ。言っておくが、こちとらたいそう評判悪い元勇者だぞ?」

「……他国にまでは知れ渡っていないとかじゃないか?」

「んなわけあるか? まあ、なんでもいいけどよ。つーか、本当に攻略してほしいならもっと上のクランの連中たちを集めたほうが良くねぇか?」

「一応は迷宮攻略において、名前が売れているのは俺たちだからじゃないか? それに、もっと強い戦力は別に回したいと考えているのかもしれないしな」

「……けっ、いいように使われるのは良い気がしねぇな」


 他に考えられるとすれば、迷宮と守護者の関係だ。

 俺がそれらの情報を伝えている。

 今回出現した巨大迷宮にもそういった守護者が関係しているかもしれないと考え、それらの対応に慣れている俺に依頼を出したという可能性は十分に考えられる。


「そんで、受けんのか?」

「国からの命令だ。立場を悪くはしたくないしな」


 どんな嫌がらせをされるか分からない。

 マニシアの生活が脅かされたらたまらないからな。


「キグラスはどうする?」

「そうだな。嫌じゃなかったら受けてもいいかもな」

「そうか。エアリアル国は空中都市だが大丈夫か?」

「だ、大丈夫だ」

 

 キグラスが顔を一瞬顰めたが、強く頷いた。


「それでは私が返事についての文章は用意しておきましょうか?」

「大丈夫か?」

「はい。このくらいは」


 マニシアがとんと胸を叩いた。

 自信にあふれた顔が可愛らしい。


「わかった、任せる。……そういえば、町はどうだった? 俺がいない間でもそれなりに問題なくいっていたようだが……」

「そうですね。大丈夫でしたね。町に残っていた魔物たちもそうですけど、ホムンクルスの方々にも協力してもらいましたので」

「……そうか」

「そういえば、ホムンクルスの方々はみんな特技を持っていましたよね?」

「ああ、そういえばそうだな」


 俺たちが知らないような武器の鍛え方や、織物など、ホムンクルスたちのおかげで今後色々と発展していきそうだった。


「武器はもちろんですが、こういった生活雑貨なども作っていただきました。この服、特殊な加工がされていてとても軽いんですよ」


 マニシアの可愛さで気づかなかったが、彼女が身に着けていた服は普段よりも肌色が多めの衣装だった。

 マニシアが着ていると抜群に可愛かったが、兄としては心配になる。


「兄さん、どうですか。似合いますか?」

「ああ……世界で一番似合ってる。けど、大丈夫か? 町の冒険者たちに変な目で見られないか?」

「大丈夫ですよ。だって、兄さんの妹ですからね」

「……そうか?」


 俺の妹だから誰も狙わないということだろうか。

 それならそれでいいんだがな。


「マニシア、手紙の用意はお願いするけど、その前に俺は他のメンバーにも話しておく必要があるから出すのは後にしてくれ」

「わかりました。とにかく、それまでの間はゆっくり休んでくださいね」

「……ああ」


 確かに、また忙しくなりそうだしな。

 俺はキグラスとともに外に出る。


「……おまえにあんな妹がいたんだな。似ても似つかねぇな」

「確かにな。おまえ、変な目で見るなよ?」

「見ねぇよ。オレは貧相な体には興味ないんだ」

「ニンには興味しめしていただろう」

「あいつのは権力だけだっての」

「……普通にクズだな」

「こちとら、成りあがりたかったからな。そのために、ニンと仲良くなっておきたかったが、失敗したってわけだ」


 キグラスは肩を竦めてから、歩き出す。


「そうだキグラス。おまえ、リリアとリリィたちにさっきの件話に行ってくれないか?」

「嫌だね。知ってるかルード」

「なんだ?」

「オレはあいつらが嫌いだ」

「怖いの間違いじゃないか?」

「うるせぇっ」

「……何の話、ですか?」


 ひょこりと、俺の背後に隠れてリリィが顔を見せてきた。

 ……普通に心臓とまりそうになったからやめてくれないかその登場は。

 キグラスがじっとリリィを睨んでいた。リリィも俺に隠れながら、じろーっとキグラスを睨んでいる。


「なんだよ片割れ。今日はお姉ちゃんはいないのか?」

「呼びましょうか?」

「やめてくれ」


 キグラスが声に力を籠めながら、情けないことをいう。

 ……まったく。


「それじゃあキグラス。これ持っておいてくれ」


 俺は分身してもらったヒューを投げ渡す。

 彼は片手でそれを受けとめてからじっと見る。


「なんだよこれ」

「マリウスの魔物の一体だ。名前はヒュー。俺たちが連絡をとるときはこれを使っている」

「……なんつー、便利なもんもってるんだよ。つーか、そうだよ。あのマリウスってのとはなんであんな親しいんだよ?」


 またその質問かとも思ったが、以前はマリウスに邪魔されて事情は説明できてなかったな。


「迷宮を消すわけにはいかなかったからな。マリウスに協力してもらったんだ」

「迷宮を攻略する冒険者と、迷宮の守護者がかよ? 八百長じゃねぇか」

「だから、安全な迷宮としてそこそこ有名になっているんだよ」

「……なるほどな。けど、大丈夫なのかよ? 知ってるか? ブルンケルス国の裏側にも魔族がいる可能性があるってのは?」

「……だろう、な。けど、マリウスは大丈夫だ」

「その自信はどっから来るんだか」

「まあ、あれから色々あったんだ。マリウスのことは、それなりに分かっているつもりだ」


 俺が言うと、キグラスは嘆息をついた。

 ヒューをポケットに押し込むようにしまってから、歩き出した。


「……ふぅ。キグラスを撃退してやりましたね」

「今はそんなに敵対する相手でもないだろ?」

「何を言っているのですかルード、甘いですよ甘いです!」


 びしびしと人差し指で腕を殴ってくるリリィ。

 ……はあ、まったく。


「リリアはどこにいるんだ? 用事があるんだが……」

「お姉ちゃんにですか?」


 リリィの頬がひくついた。ジトーという睨むような目に、俺は額に手をやる。

 ……しまった、言い方をまちがえた。


 この二人の扱いは、相変わらず難しいな。


漫画版の『最強タンクの迷宮攻略』が発売されました。

手に取っていただければ嬉しいです。


また、『最強タンクの迷宮攻略』の二巻に関しては今月10月31日に発売となります。

こちらも一緒に購入していただければ嬉しいです。

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