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聖誕祭15

最強タンクの迷宮攻略の一巻が発売されています。改稿、加筆を結構していますので、よかったら手に取っていただければと思います。


また、現在、スマホアプリのマンガUP!様にて、コミカライズのマンガも開始しました。読んでいただければと思います。


 すぐに緑狼族に声をかけていく。

 簡単にいえば、聖都でホムンクルス軍団が暴れているというわけだ。

 ……それを治めるために、今は戦力が欲しかった。


「グリウル!」

「な、なんだ!?」

「今すぐに、戦う必要があったら協力してくれるか!?」

「もちろんだっ! どうしたマスター! 何かあったのか!?」

「俺の友人がいる街が、ホムンクルスたちに襲われているっ。それを収めるために協力してくれないか!?」


 教会騎士を含め、多くの者が戦っている。

 戦力は一人でも多くいたほうがいい。


「わかった! マスターはすぐに出発できる準備を整えてくれ!」

「……ありがとう、グリウル」

「お礼は全部解決してからじゃないか、マスター!」


 ああ、そうだな。

 俺はすぐにセインリアを呼びよせる。セインリアも状況を把握しているようだ。

 まもなく、緑狼族を集めたグリウルが戻ってきた。

 彼が集めた緑狼族はすでに武器を持っている。全員、戦いの準備は整っているようだ。


「今いけるのは27人だ。5人はまだ回復したばかりで、残り3人はそいつらの治療に充てたい。まあ、動けるとは言っているが、万が一もあるからな。足手まといになられても困るだろう?」

「……ああ、ありがとう。急で悪かったな」


 そこでグリウルとの会話を区切り、俺は集まってくれたみんなを見た。


「……俺が今拠点にしている街が魔物に襲われている。そこには俺の仲間たちもいるんだ。……頼む、力を貸してくれ」

「当たり前だ。オレたちはおまえにこの身をささげるといったはずだ!」

「ああそうだ! 助けてもらった恩を返すときが来たぜ!」


 グリウルがいうと、全員が武器を振り上げた。

 頭を一度下げてから、俺はセインリアを呼ぶ。

 森のことを考えている暇はない。

 飛び降りてきたセインリアを見て、緑狼族たちは目を見開き驚いた様子を見せる。


「グリウル、全員が乗れるような乗り物を作れないか?」

「任せろ」


 グリウルが近くの建物に手をあてると、巨大なカゴが出来上がる。それをセインリアが抱える。


「全員乗ってくれ。このまま街まで一気に移動する」


 カゴに全員が載ったところで、セインリアが飛び上がった。


「まさか……聖竜様に運んでもらえる日がくるとはな」


 グリウルが感動したかのような声をあげる。


「そんなに凄いのか?」

「オレだって一度だけ緑竜様に乗せてもらったことがあるだけなんだ。感動物だ……」

「……そうなんだな」

「とと、感動してばかりでもいられないな! 今は、敵を倒さないといけないな!」

「ああ、頼む」


 俺はセインリアをちらと見ると、向こうも視線を僅かに向けてきた。

 今の話を聞いていて、それが返事とばかりといった様子だ。


 風が肌をなでる。 

 いつもよりも飛行速度は速い。セインリアはさらに、俺たちへの風圧も考慮してくれている。


 移動と風から俺たちを守るように魔法を使うのは、なかなかしんどいようで、セインリアが珍しく疲れたような顔をしていた。

 やがて、街が見えてきた。

 ひょいと街を見たルナが声をあげた。



「マスター! 街に火が!」


 酷い有様だった。あちこちで火の手があがり、人々の悲鳴と煙が混ざり合って空へと届いていた。

 見覚えのある魔物や、見たこともない魔物が町中にいて、あちこちで戦闘が繰り広げられている。


「緑狼族の者たちに答えてほしい。ここから地上に雨を落としたい。そんな魔法が使えるものはいないか!?」


 俺が声を張り上げると、何名かが手をあげる。

 それとルナに視線をやる。


「それらのものにはここに残ってもらって、雨を落としてほしい。狙いは火の手があがっているところだ。そこから重点的に火を消していってくれ。指揮はルナに任せる」

「承知しました」

「地上部隊は……ホムンクルスの鎮圧に向かってくれ。冒険者ということで混ざれば大丈夫なはずだ。指揮はグリウルに任せる。セインリア、頼む」

「ぎゅい!」

「グリウル。何かあったらヒューを使って連絡をしてくれ」

「お、おう? 使い方は、おまえが教えてくれるのか?」

「任せて」


 ヒューが短く答えて、すぐに分身する。グリウルがそれを受け取り、拳を固めた。


「オレたちはチームをわけて動く。ヒューとやら? 各チームのリーダーにいきわたるように分かれられるか?」

「うん」


 グリウルの言葉にあわせ、ヒューが分裂する。


「この身に賭けても、敵を鎮圧させてみせよう! 我らを助けてくれたマスターへこの身をささげる。いくぞ!」


 セインリアが風魔法を放ち、全員が地上へと向かう。

 セインリアもだいぶ疲労がたまっているようで、普段以上に息が乱れている。


「悪いな。ここまで頑張ってもらって。全部終わったら、うまいもの食べに行こうな」

「ぎゅいっ!」


 そういうとセインリアがひと際大きな声で鳴いて見せた。

 俺もすぐに地上へ向かって飛び降りた。最悪外皮があるので大丈夫だと思ったが、ヒューが地面に降りて着地する。


 そして、ぷくりと大きく広がる。その上に乗って着地すると、俺の足が地面についたときには、衝撃もなくなっていた。


「ありがとなヒュー。行くぞ!」

「ニン、今どこにいる?」

『大聖堂よ、街を守るための結界を作っているところよっ』


 なら、まずは合流したほうがいいか? 敵の狙いは分からないが、教皇様の話もあるからな。


 しかし、敵はホムンクルスだけではないようだ。

 魔物もそこにはいた。

 俺は剣を構え、息を吐く。



「まったく……やるしかないか」


 あちこちで教会騎士と魔物が戦っている。

 俺たちに気付いた魔物が、こちらへと飛びかかってくる。

 それを躱したところで、今度は別の魔物が襲い掛かってくる。


 ウルフのような魔物もいれば、翼の生えたコウモリのような魔物もいる。

 そいつらは数でとにかく攻撃を仕掛けてきた。

 これでは、前に進むことは難しい。


 ダメージがたまり次第、『生命変換』で削っていたが……俺は多対一に弱い。

 さて、どうするか。……そうおもっていたときだった。


「どけ、ルード!」


 苛立ち混じりの声が響いた。

 同時に、彼の剣から閃光のようなものが溢れ、周囲の魔物を薙ぎ払った。

 そいつはすぐさまにポーションを一つ取り出して口に運ぶ。


 そのとき、フードが少しずれてこちらと目があった。

 ……その男は、俺のよく知る人物だった。

 少し生意気そうな表情をした男……キグラスだ。


「……おまえ、どうしてここにいるんだ?」

「詳しい話はあとで話すぜ。とにかく、教皇に会いに行かないといけねぇ。……まさか、こんなに奴らがうごくなんてな」


 俺は彼から戻ってきた魔剣を向ける。

 キグラスはちらと魔剣を見て、俺を見た。


「魔剣から、何か聞いちゃいねぇか?」

「……おまえが魔王の一人についていったのは見た」

「そうか……魔剣はそんくらいしか伝えられなかったか。けど、まあいい。ここにおまえがいるならそれでいいか」


 キグラスが何を言いたいのかさっぱりだ。

 俺は息をついて、彼に詰め寄る。


「状況を、簡単にでいいから説明してくれ。まったくわからないんだ」

「オレは、魔王についていって、敵の情報を集めてたんだよ。そんでオレは、唯一交流できたお偉いさんが教皇だったんで、教皇に情報を流してたんだ。ま、敵地に潜り込んだはいいが、所詮下っ端のオレには大した情報は回ってこなかったんだがな」

「……本当なんだな?」

「ああ……オレは、英雄になるために勇者やってたんだ。この言葉に嘘はねぇよ」

「そうか」


 ひとまずは、キグラスの言葉を信じるしかない。

 それに、この場を突破し、さらに教会内部に入るには魔物の数を減らす必要がある。


「教皇様は今どこにいるんだ?」

「聖女様たちと一緒に結界を作っているんじゃないか?」

「……なるほどな」


 魔物の群れをキグラスとともに突破する。

 教会内部へと入ると、教会騎士たちが現れた。


「これより先は部外者は進入禁止です」


 俺は通れたが、キグラスは止められた。


「ちっ、オレはキグラスだっ。元勇者で、いずれは英雄になるキグラスだ! このまま通さないでいいのか!? 大事な報告があるんだよ!」

「相変わらずだなおまえは」


 俺は呆れながらため息をついた。

 と、集団の中からリリアとリリィがやってきた。


「なんでここにいるの?」

「げえ……」


 キグラスがびくりと体をはねさせ、俺の背後に隠れるように一歩下がった。


「おい、人を盾にするな」

「い、いやそのあいつだけはちょっと……」

「おまえな……」

「……うわぁ」


 リリィが嫌そうに声をあげ、同じようにリリアに隠れた。


「り、リリア様。ルード様。この粗暴な男は一体――」


 教会騎士たちが不安げに聞いてきた。


「元勇者。元Sランク冒険者のキグラス」

「元、元……うっせぇんだよ!」

「……なに?」


 リリアがにらみつけると、キグラスは体を震え上げる。

 しかし、それは一瞬で睨み返す。


「て、てめぇら……敵の存在がホムンクルスってのは知ってっか?」


 キグラスがリリアに言うと、彼女はピクリと眉根をあげた。

 何か知ってんの? と言われた気がしたので、俺がかわりにキグラスに返事をする。


「……ああ」

「え、知ってんのか?」

「ルードがホムンクルスを助けてたから」


 キグラスがちらと俺を見てきた。

 それから、彼は不貞腐れた顔になる。


「ったくてめぇは、オレが必死に集めた情報を先回りしやがって。それじゃあ、ホムンクルスたちを作るとき、どうやって顔とか作っているかは知っているか?」

「さあな」

「実際の人間をモデルに、顔を作ることも可能なんだよ。つまりだ、誰かにすり替われるってわけだ」

「……なるほどな。それがなんだ?」

「オレは敵側が拠点にしていた場所を漁っていたんだよ。そしたら、やべぇ情報を見つけちまった」

「なんだそれは?」

「レフとライっているだろ? ホムンクルスがあれと入れ替わってるって話だ」

「……なんだと!? 教皇様たちの護衛は誰が務めているんだ?」

「れ、レフ様とライ様、です」


 教会騎士もまずいと思ったのだろう。慌てた様子で答えた。


新連載というか中編みたいなの投稿してます。

『世界一カワイイ彼女ができました』という全29話で終わる予定のラブコメですね。


下にリンク作りましたのでよかったら読んでいただければと思います。

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