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聖誕祭14

最強タンクの迷宮攻略の一巻が発売されています。改稿、加筆を結構していますので、よかったら手に取っていただければと思います。


また、現在、スマホアプリのマンガUP!様にて、コミカライズのマンガも開始しました。読んでいただければと思います。



 夜も更けてきた時間。

 俺はヒューをベッド代わりにして横になっていた。

 ルナも一緒に寝ている。距離が近い以外は問題ない。


 なかなか寝付けないのは、時々ヒューが遊んでーとばかりにからかってくるからだろう。

 別に今夜は熟睡するつもりはなかったからいいんだがな。


 三十分程度の仮眠を刻みつつ、外へと意識を向ける。

 外は特に問題はなさそうだ。まだ、彼の仲間たちも見つかっていないようで静かだ。


 なかなかすぐには見つからないだろう。

 そんなことをしながら、しばらく時間が経過したときだった。


 外が騒がしくなった。

 時間は日差しが出始めるほどだ。


 充分すぎるくらい休めた。

 俺は隣にいたルナの肩を叩く。彼女はすっと目を開けて立ち上がる。……若干、眠そうな顔である。


「どうかされましたかマスター」

「そっちに俺はいないぞ」

「し、失礼しました」


 目をこすったあと、ルナが俺の方を見てきた。


「外が騒がしくなった。状況に変化が出たかもしれない」


 そういった瞬間だった。

 一人の緑狼族が部屋へと入ってきた。

 

 女性の緑狼族だ。俺が助けた子に似ている。薄い衣服のせいもあって、胸がぶるんと震えた。

 俺はあまり視線を向けないようにする。隣で、むすぅっと頬を膨らませているルナもいたしな。


「ルード様! 起きていましたか!」

「外が騒がしくなって目が覚めたんだ? ……見つかったのか?」

「さすがの感知能力ですねっルード様! はい、ただいま……仲間を五名、発見してこちらに向かっています! 遠回りをして、こちらの戦力が整うまでの時間を稼いでいるところです!」

「了解だ。俺もすぐに向かう」

「わかりましたっ! 私は村の者たちの様子を確認してきますっ! 仲間たちは、ルード様が入ってきた入口から来るそうですので、準備をしておいてください!」


 ……あそこか。

 脳裏に場所を思い浮かべていると、彼女は去っていった。

 俺はすぐに準備を整え、ルナとともに建物の外に出た。

 

 急いだ様子で装備を整える緑狼族。

 彼らは俺に気付くと見事なお辞儀をしてから走りだす。……ほんと、礼儀ただしい人たちだ。


 俺も彼らの最後尾にくっつくようにして走る。

 と、俺が村に入ってきたときの入口についた。


 この村、簡易的に作られたわりには、木の柵で周囲が覆われている。

 それらが整えられるのも、グリウルの力のおかげだろう。


「ルードっ、来てくれたか。これから、仲間が五人を引き連れてこっちに来る……浄化を頼めるか?」


 不安そうに彼の尻尾が垂れる。


「任せろ。そのために残っているんだからな」


 ぶるんぶるんとグリウルの尻尾が揺れた。

 耳もぴんと伸びている。……子供みたいにわかりやすいな。

 それはグリウルだけではない。彼の仲間たちも同じように尻尾をぶんぶん振り回していた。


「……ああ、感謝する! 全員、ルードから聞いていた通りだっ! ルードに戦闘面での負担をかけないように、全員で五人を押さえつける! できないものはいないな!?」

『当たり前だ!』


 グリウルが声を張り上げる。

 と、村に勢いよく一体の緑狼が駆け込んできた。

 今は狼の姿をしている。


 その奥……木々を破壊しながら、五体の黒い魔物が現れた。

 ……グリウルたちの仲間であることが伺える。皆、狼の姿をしていた。

 彼らはこちらに気付き、一瞬足を止めてから、咆哮をあげた。


「全員、止めろ!」


 グリウルが指示を飛ばし、彼らと彼らがぶつかりあう。

 だが、さすがにグリウルたちも強かった。


 数で圧倒的優位に立っている今、彼らが五体の魔物に負けることはなかった。

 俺の前に押さえつけられた五体が運ばれてきて、俺は一体ずつ浄化を行っていく。


 さすがに一体ずつから流れ込んでくる魔素の量が増えている。

 それでも、前にやっていたからか、体も適応しているようだ。

 ルナの浄化魔法で、合計五人を治した。


 ……どうやら黒く染まる前に服を着ていたらしく、倒れている緑狼族は皆服を身に着けていた。 ホムンクルスのときと違って、大きな問題にはならなかった。


 緑狼族たちは感動した様子で、助けた五人を見ては嬉しそうに声をあげていた。

 同時に、意識を取り戻した五人はきょとんとした顔をしていた。

 仲間たちに抱きつかれてもなお、状況を理解していないようだ。


 どうやら、暴走していたときの記憶がないようだ。

 心地よい疲労感だな。

 

「マスター、大丈夫ですか?」

「ああ、ルナもお疲れさま」

「……いえ、マスターほどではありませんよ」


 全員無事なことを確認したところで、グリウルがこちらにやってきてすっと頭を下げる。

 もうすっかり見慣れた、頭を下げ地面に拳をあてる姿勢だ。


「ありがとう……ルード! これで、今いる仲間のすべてを助けることができた。おまえがいなければ、オレは――」

「もう十分感謝はしてもらった。……それに、これからは俺のために力を貸してくれるんだろ? 期待、しているからな」

「……ああっ! わかっている!」


 グリウルは強く拳を固める。

 新しく治療された五人も、他の緑狼族から事情を聞いたらしく、俺のほうに深く頭を下げている。


 と、グリウルがくるりと振り返り、それから声を張り上げた。

 グリウルの声にあわせ、全員が頭を下げ、地面に拳をつける。

 ……治療されたばかりの人たちも周りに肩を貸してもらいながら、同じ姿勢をとっている。


「我ら総勢35体っ! これより、ルードの牙となって戦おう!」


 グリウルが声を張り上げると同時、後ろの彼らも同じように吠えた。

 それは森全体に響くのではないか、というほどであった。


 とりあえず、無事問題は解決したか。

 皆が落ち着いたところで、俺はグリウルを呼び出し話をすることにする。


「グリウル。これからおまえたちには、俺の町に移動してもらいたいんだが……まだ俺は近くの街でやらなきゃいけないことがあるんだ。それが終わるまで、ここで待機してもらってもいいか? まあ、先に戻っていてもいいんだが」

「いや……さすがにルードの紹介なしにいくのは相手にも迷惑をかけるだろう。またあとで迎えに来てくれればいいさ。……わ、忘れないでくれよ」

「わかってるよ」


 こくりとグリウルが頷いた。


「町、か。……オレたちは魔物だ、大丈夫だろうか?」

「大丈夫、だとは思う。うちの町、問題を起こさない人には寛容的だからな」


 ヒューたちは亜人としてだが、あっさり受け入れられたからな。

 グリウルたちも同じようにすればいいだろう。


「……最悪、普段は狼の姿になっていれば、大丈夫だ」


 フィーにしろ、ヒューにしろ、セインリア、セインにしろ。

 子どもたちから大人気だ。

 フィーの背中にのってゆらりゆらりと町を歩いたり。

 セインリアの背中にのって、空を飛んでみたり。


 そんなこんなで子どもたちには人気だ。なんだかんだミノンも子どもの面倒見はいいから、受けてるしな。


「なるほどな。人間は犬などが好きなようだからな。あれと似ている……わけではないが、そう見えると勘違いされるのは屈辱ではあるが、それで受け入れてもらえるのなら、甘んじて受けようか」


 ……犬、と呼ばれるのは嫌なのな。

 それだけは全員に徹底しておかないといけない。


「明日、近くの街で祭りがあってな。それに参加してから帰るつもりだ。よかったらみんなも参加するか?」

「いや……やめておくぞ」


 グリウルが首を振る。……そうか。


「とにかく、祭りが終わってからまた迎えにくるつもりだ」

「わかった。何から何まで、面倒を見てくれてありがとな」


 ぐっと拳を固めるグリウル。

 

「それじゃあ、今の内容を緑狼族のリーダーとして、みんなに話しておいてくれ。俺たちも、少し休憩したら、ここを一度離れる」

「わかった。また祭りとやらが終わってからだな」

「ああ。おそらく明後日になると思う。それまで、もう少しここで生活していてくれ」

「了解だ」


 グリウルが皆を集め、今後の説明を始める。

 俺たちも、少し休んだら町に戻ろうか。グリウルが作ってくれた建物へ向かい、体を休める。


「マスター、今回は大丈夫、でしたか?」


 じっとルナが俺の体を見てくる。


「ああ。あとは、祭りが無事終われば今回の旅は終了だ」


 なかなか、色々あったな。

 あとは、聖誕祭だ。ニンと踊る予定があったな。

 しばらく、ルナと部屋でくつろいでいると――ヒューを介してニンから緊急の連絡が入った。


『ルード、すぐに戻ってこれる!?』

「どうした?」

『町に、大量のホムンクルスが現れたのよ!』

「……なんだと!?」

 

 俺は思わず眉間に皺を寄せ、すぐさま外に出た。


新連載というか中編みたいなの投稿してます。

『世界一カワイイ彼女ができました』という全29話で終わる予定のラブコメですね。


下にリンク作りましたのでよかったら読んでいただければと思います。

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