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聖誕祭13

感想はすべて目を通していますが、なかなか返信ができなくて申し訳ありません。

一応、頂いていた誤字報告等はだいたい修正した……と思います。

またあとで確認したいと思います。


 グリウルとともに村を歩く。

 そこで、少し気になったことを聞いてみた。


「そういえば、以前までここに村はなかったが、グリウルたちが作ったのか?」

「ああ、そうだ。オレは緑の精霊から力を授かり、木々に干渉する力を持っている。簡単にいえば、触れた木を自由に造り変えることができる。それで、家をいくつか作っておいた。……雨風を凌げないと、良くなるものもよくならないからな」


 グリウルは見本を見せるように、近くの家に手を当てた。

 それに触れると、一瞬で丸太がいくつも出来上がる。


 もう一度グリウルが触れると、建物に戻る。

 木をまるで、粘土のように造り変えられるんだな。


「凄い力だな。みんな持っているのか?」

「いや、授かれるのは族長である一人だけだ。どうやら、この力は一度与えられたら、そのままのようだ。緑竜様が黒い魔力に侵されてからも、こうして使えるのだからな」


 と、先ほどの建物にいた大男がこちらに近づいてきた。


「おう、神様じゃねぇか。ありがとな、さっきはよ」

「もう大丈夫なのか?」

「おう、おかげさまでな。グリウルそれで話なんだが、森まで追ってきたオレたちの仲間も、連れ戻して治せはしないか?」

「……できる、かもしれないが。そこまでルードに協力を頼むのは――」


 ちらちら、とグリウルがこちらを見てくる。


「……頼める?」

「ああ、協力するよ。その代わり、こっちも頼みたいことがある」

「……なんだ?」

「住処を変えてはくれないか? この森の近くに街がある。そこには大きなギルドもあって、おまえたちが討伐対象に挙げられる可能性もあるかもしれないんだ」

「なるほど、な。だが、どこに行けばいいんだ? 結局オレたちが住める場所はないんだが」

「俺が暮らしている町の近くに迷宮があるんだ。そこには魔物が出現しない階層がある。そこで良ければ、貸し出そうか? 人型で居続けられるなら、町に住んでも大丈夫だろうしな」


 彼らの見た目だけで判断するなら、亜人としか思えないからな。


「い、いいのか……?」

「ああ。ただ、ここほど自由さはないかもしれないが……」

「感謝するっ! オレたちはいくあてもなく放浪していたんだ! 迷宮の中とはいえ、安全な住処が用意してもらえるのなら、オレめっちゃ嬉しい!」


 グリウルが深く深く頭を下げる。


「我が身一生をささげようっ! おまえの剣となり、おまえの敵を葬りさってみせよう! 死ねと言われれば、今すぐにでも腹をかっさばいてみせよう!」

「だから重いんだっ」

「ルード! オレもだっ! オレもおまえについていくぜ!」


 ばしっと大男も胸を叩いた。

 ……なんとも、騒がしい仲間たちだな。

 まあ、悪い気はしない。


 彼らも、それなりに戦えるようだし、冒険者として活動できる基盤を用意してあげたほうがいいだろう。

 ここで、暴れられて、そのまま人間たちと敵対されても気分が悪いしな。

 そのあたりは、アバンシアに戻ってから考えよう。


「それで、おまえたちの仲間は今どのあたりにいるんだ?」

「この森まで追ってきていたのはわかっている。あとは、どこにいるのか、特定さえできればいいのだが……それは魔法をつかって調べていくしかないな」

「……結構、時間かかりそうだな」


 となれば、今日は泊まりだな。

 帰っておきたかったが、仕方ない。


 今夜中に終わらせて、明日までに町へと帰還する。

 その次の日。最終日にはニンとの約束もある。

 そういう予定でいけばいいだろう。


「とりあえず……仲間探しをしないといけないな」

「……ああ、わかってる。体力の残っているもので調査しておこう」


 グリウルが隣の大男に指示を出すと、彼は頷いてすぐさま走りだした。


「ルードたちは休んでいてくれ」

「……ああ、そうだな」


 グリウルが近くの木に手を当てると、そこに建物が出来上がる。

 素材さえあればなんでも一瞬で作れるのか。便利だな。


 建物に入ると、俺の肩にいたヒューがすっと床に着地した。

 それからヒューはぷくっと大きく体をのばし、それから俺たちの背もたれになってくれた。


 ……便利だなこいつらも。

 ヒューの頭を軽くなでながら、俺はヒューを使ってニンに連絡をとる。


「ニン、聞こえるか?」

『何? ていうか、今どこよ?』

「ちょっと依頼で外に出てるんだが――色々と気になる情報を手に入れたから共有しておくな」

『わかったわ……なに?』


 ニンがメモを取る準備をしたようなので、詳しい話をしておく。

 同時に、教皇様への報告も頼む。魔物の存在や黒い魔物についての情報も、ここで得られたものを出来る限り伝えておいた。


 このくらいだろうか。

 ルナたちを見ながら、俺も体をヒューに預ける。


『……また変なことにまきこまれてるの。……聖誕祭までには戻ってこれそうなの?』

「ああ、たぶんな」

『わかったわ。気を付けてね』

「そっちもな」

『こっちは大丈夫よ。いっつも騎士がいるしね』

「……そうか」


 通話はそこで切って、ヒューに背中を預ける。

 まるで水の椅子にでも座っているような気分だ。ふよんふよんという感触が心地よい。

 温度も調節できるようで、人肌程度と文句なかった。

 このまま眠ってしまいそうだったが、ルナにも確認したいことがあった。


「なあ、ルナ」

「なんでしょうか」

「これから先、ホムンクルスとの戦闘は増えていくと思う。出来る限り、助けたいとは思うが難しいこともあるだろう。……覚悟はしておいてくれ」

「……はい。承知しています。むしろ、私は……マスターが無事であればそれでいいです。ですから、無茶はしないでください。それが……私の気持ちです」

「……ああ、わかってる」

「……マスター、気遣ってくれてありがとうございます。優しいですよね、マスターは」


 優しかったら、きっと。救えるものは全部救える。

 ……ただ、俺にそこまでの力はない。だから言葉でこうして伝えておくしかできなかった。


 俺も無茶しすぎてはいけない。待っていてくれる人がいるからな。

 俺はしばらくそこで体を休めていると、家の扉がノックされる。


 扉をあけると、グリウルがいた。

 俺を見た途端、さっと膝と拳をつけてその場で構える。


 それは外まで続いていた。ずらりと、緑狼たちが並んでいた。

 ……えぇ。

 俺が外に出ると、ここにいた人たち全員だろうか。


 一体なんだ、と思っていると先頭にいたグリウルがすっと顔をあげた。


「ルード。オレたちは、おまえに助けられた。この身すべてをルードに捧げよう! ここにいる者たち、そして今快復に向かっている者たちも全員! この命つきるまでルードについていこう!」


 グリウルの言葉に、彼の背後にいた緑狼族は、一斉に尻尾を振る。

 ……それはなんだ。人間でいう首肯のようなものか?


「……別にそこまでの決意はなくても」

「いや、ダメだ! これはきちんとやっておかなければならないことなんだっ! 我々はルードを新たな主としてついていくと決意した! これが、緑竜様の導きだったのだ! たぶん!」


 グリウルがいうと、背後の緑狼族たちはまた一斉に尻尾を振った。

 ……結構、美人さんもいるんだな。あ、胸の大きな人もいる。

 なんて、半ば現実逃避をしながら、俺は息を吐く。


 ちょっと過剰だが……仲間になりたい、ということでいいんだろう。

 かなり、忠誠心も高い人たちだ。


 俺がよっぽどのヘマをしなければ、ついてきてくれるだろう。

 実力者ばかりであるのは、対面していればよくわかる。……クランに協力してもらえれば、色々助かるだろう。


「俺は、冒険者たちをまとめるクランリーダーを務めている。そこで、みんなが冒険者として力をふるってくれるか?」

「お、オレたちを冒険者にしてくれるのか!?」

「あ、ああ」

「感謝する! 全力を注ごう!」

「……そうか。俺はなにかしろと強制するつもりはない。ただ、頼んだときに協力してくれたら嬉しい」

「いつでも! 四六時中、呼んでくれればすぐに手伝おう!」

「……おまえたちも、困ったことがあったらここにいる仲間や、俺が暮らしている町にいる仲間たちに頼ってくれ。みんなで、力を合わせて生きていこう。お互い、対等に、な?」


 うまく、俺の気持ちを伝えられただろうか。

 ちらとグリウルを見ると、なんか滅茶苦茶感動したかのように涙ぐんでいた。


 いや、彼だけではない。その背後にいた緑狼族たちも皆だ。

 ……どうやら、こういう話に耐性がないようだ。


「あ、ありがたき幸せです! 行く宛てのなかった我々を拾ってくださり、そして、そのようなお言葉を……ありがとうございます!」

「……言葉、戻ってるぞ。対等に、な? 俺が間違ったことをしたときは、きちんととめてくれよ」

「ルードが間違えることなどあるはずない! 頑張れ!」


 ちゅ、忠誠心が強すぎるってのも困りものだな。

 というか、この場合、魔物で登録すべきなのか、人間で登録すべきなのか……どっちになるんだろう?

 グリウルは立ち上がり、仲間たちに指示を出す。


「まだ森に残っている我らの仲間を助け出すっ! 動けるものは、魔物状態で森の調査に当たれ! 決して一人で戦おうとするなっ! ルード様とその妻がいれば、浄化は可能だ! 村にまでつれてきて、ルード様に浄化してもらう!」

「……つ、妻ではありません。私はただの、使用人です……」


 ルナが否定したが、「おお!」と声を荒らげた緑狼族たちの声にかき消された。

 少し嬉しそうにしているルナに、俺はなんと声をかけようか迷う。

 ……おまえは俺の妹みたいなもんだ! といったら傷つけてしまうだろう。


 俺は本心をそっと隠すしかなかった。

 グリウルが楽しそうに尻尾を振っていたが、その尻尾を軽くつかむ。


「グリウル、何度も言っているが対等に、だ。わかってるな?」

「……す、すまない。みんな、おまえについていく話に前向きだったからな。……ならば、というわけで士気向上のためにも、な。すまなかった、き、気を悪くしたか?」


 おろおろといった様子で尻尾を不安げに揺する。

 いや、別にそんなことはないがな……。


「わかったよ……みんな落ち込んでいたのは俺もどうにかしたかったし。俺は確かに、クランのリーダーだが、さすがにおまえたち全員の面倒まで見れるほど余裕はない。だから、基本的におまえがみんなをまとめて、必要な情報をこっちに渡してくれ」

「ああ、了解だ!」


 グリウルが嬉しそうに尻尾を振った。


あと、新連載というか中編みたいなの投稿しました。結構昔に書いた作品がパソコン内を整理したらでてきたので。28話で終わるラブコメですね。もしも読んでくれたら嬉しいです。


下にリンク作りましたのでよかったら読んでください。

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