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聖竜と薬草10

聖竜と薬草9が抜けていたので、その分を追加しました。申し訳ありませんでした。


感想への返信に関しては数日遅れることがありますが、ご了承ください。

それと、単純に更新が厳しくなってきましたので。二日に一話の更新にしたいと思います。



 ギルドを離れた後、俺たちはリリフェルと合流し、その日は宿に泊まって休んだ。

 とはいえ、いつでも動けるように準備だけは済ませてある。

 

 次の日の朝。

 夜は無事に乗り切ったようだ。魔物たちが攻めてこなかったことに安堵しつつ、俺たちはポッキン村の門へと向かう。


 昨日イーセと約束した通り、これから俺たちは原因の調査へと向かう。


「魔穴だったら、破壊すればいいだけだからいいけど……迷宮だとしたら大問題ね」


 ニンが顎に手をやりながらそんなことを呟いた。

 迷宮も最深部まで潜って破壊すればいい。

 だが、そこまでいくのに時間がかかりすぎる。

 

 それに、俺たちだけで攻略できるとも限らないだろう。


 リリフェルが明るい笑顔とともにやってきた。

 俺の前に立つと、周りから見えない程度に疲れた顔を見せた。

 彼女も一日、頑張っていたのだろう。

 

「リリフェル、村の人たちはどうだ?」

「みんな大丈夫です。……けど、やっぱり魔物がいつ襲ってくるかわからないから、大変そうでした」


 ……それは大きなストレスとなる。

 一刻も早くどうにかしないと。


「リアニ草ですが……まだあまりとれていないそうです。このままだと、聖竜が全部食べてしまう、かもです」

「……そうか。そっちも回収しておかないといけないな」


 ここにきた最大の理由はそっちだからな。

 村の門へと到着すると、すでにイーセが待っていた。


 門に背を預け、腕を組んでいる彼女は妙に様になっていた。

 イーセはこちらに気づくと、すっと門から背中を離した。

 

「おはよう、二人とも。それじゃあ、向かうとするか」

「場所はわかっているのか?」

「だいたいの方角はな。ただ、魔物が多すぎて一人では突破が厳しい。二人とも、頼むぞ」

「……了解だ」


 ポッキン村の門をくぐり、イーセを先頭で進んでいく。

 リアニ草がある場所も、ここから離れている。途中で見つけられればいいが、そっちばかりも気にかけてはいられないだろう。


 まずはホワイトウルフが大量発生している原因を突き止める。それからでも、リアニ草は十分間に合う。

 それなりに歩いたところで、聖竜たちを見つけることができた。


 聖竜たちは俺たちの苦労を知らないかのようなのんびりとした表情で休んでいた。

 群れなのだろう。所せましと聖竜がいる。

 俺たちは彼らを起こさないように努めて静かに進んでいくしかない。


 群れの集団を抜けたところで、イーセはほっと一息をついた。

 彼女は探知スキルを持っているそうだ。そのため、周囲の警戒はすべて彼女に任せている。

 そんな彼女が気を抜いたということは近くに魔物がいないのだろう。


「ここから少しの間は魔物もいないようだ」

「そっか……それじゃあ、ちょっとはゆっくりできるわね」


 いつでも魔法を撃てるように準備していたニンもそれを解いて息を吐く。

 俺も一度、首と肩を回した。


「それにしても……ニンが冒険者としてクランにまで所属することになるとはな。勇者パーティーに所属して、あちこちの迷宮攻略をしていたことは聞いていたが」

「あー、まあね。そろそろあたしも聖女引退して、冒険者一本でやりたいって感じなのよ」

「そうか。ということは、後継者が育ってきているのか?」

「ええ、いるわよ。近いうちに、聖誕祭があるでしょ? そこで、新しく三人の聖女を発表するわよ」

「……ほぉ、三人か」

「まあね。今度から聖女は数を増やしていくみたいよ」


 教会は修道院を管理していて、そこで未来の聖女候補を育成している。

 聖女になるには、聖女に関するスキルを持っている方が好ましいとされているが、その限りでもない。


 ニンの一つ前の聖女も、特にそういうものはなかったはずだ。

 ただ、まさしく聖女とばかりに、慈愛にあふれた人だった。おっさんが言っていたように、胸も大きかったしな。


 その人は結婚するということで、聖女をそのままやめたそうだ。

 一部の男性たちが発狂したらしい。


 ニンはというと、男性、女性どちらにも好かれているそうだ。こんな性格もあってか、以前より男性のファンは減ったらしいが。


「そうか。相変わらず、ニンは自由に生きているようだな」

「それよりは、あんたのほうが心配よ。教会を追放されてからどうなったのよ?」

「……そ、それは、今ここで話すべきことか?」

「当たり前じゃない」


 ニンがからかうように頬を緩める。

 イーセはちらちらと俺の方を見てきた。


「私のしょうもない理由を……彼に聞かれたくはないんだが」

「簡単には話したわよ」

「なー!?」

「それじゃあルード。もっときちんと話してあげるわ。イーセが追放された理由ってね。修道女に欲情したのが原因なのよ。イーセ、小さい子好きって言ったでしょ? 教会騎士って誰かの専属になることもあるんだけど、イーセが担当した子が可愛らしい少女だったみたいでね。欲情したの、こいつ」

「ばーか! 何を当然のように言っているんだ! それにあれは欲情ではない! ただ、可愛らしい肢体、もう二度と私が得ることのできない肉体にただ憧れを示しただけだ!」

「少年も確か好きだったわよね?」

「バカ! それ以上余計なことを言うな! 私が変態だと誤解されるではないか!」

「いや、あんた変態じゃない」


 イーセがぶんぶんと腕を振り回している。

 何か、やんごとなき理由があるのかと思っていたが、まあちょっと方角は違ったがやんごとなき理由だったな。

 俺が頬を引きつらせていると、イーセが諦めたように肩を落とした。


「……そういうわけだ。私がこうして冒険者になったのは、それが理由だ。ポッキン村は他より可愛らしい子どもがたくさんいるから、定期的に依頼を受けている! それが理由だっ、どうだ、これだけ聞ければ満足か!」


 俺のほうに怒鳴りつけるようにイーセは言った。

 ……それを宣言された俺はどう反応すればいい?

 とりあえず、引きつった笑みを返しておく。あまり関わりあいにならないほうがいいだろう、とだけは思った。


「というわけで、だルード」

「なんでしょうか」

「なぜ敬語だ」


 距離を置きたくて、とは言えなかった。


「私に、いい子がいたら紹介してくれても構わないぞ。そんな子がいたら、クランにだって入ってこの力を存分に発揮してもいい」

「いや、クランの評判下げられても困るからな」

「さ、下げるようなことはしない! 欲情したといってもなっ、手を出したわけではないのだからな!」


 と、叫んだところでイーセの眉がぴくりと上がった。

 それまでふざけた表情をしていたイーセだったが、急激に表情が引き締まり、気づけば張り詰めた空気が周囲に満ちていた。


「魔物が何体か近づいてきているな。敵はホワイトウルフ三体だ。……このくらいなら、私一人で問題ない。二人は離れていてくれ」

「……了解だ」


 イーセの実力も見たかったし、ちょうどいい。

 彼女が先行し、視線をある方角へと向ける。


 ホワイトウルフたちだ。まだこちらに気づいていないのか、彼らは獲物を探すように動いていた。

 俺は一応いつでも動き出せるように、ニンとともに待機していた。


「……イーセはどのくらいの力があるんだ?」

「あたしって最近思うことがあるのよ。変態って実力者が多いんじゃないかって。例えば、あんたやシュゴール、マリウスだってある意味変態でしょ?」

「待て。なぜそこに俺が入っている」

「あんた妹大好きの変態じゃない」

「……家族として普通だ。リリアとリリィだってそうだろう?」

「いやあれも異常なのよ。ま、とにかくよ……イーセは強いわよ」


 ニンは視線をホワイトウルフに向けた。

 その瞬間、ホワイトウルフたちの足元から氷が現れ、三体の魔物を貫いた。


 鮮やかすぎる一撃だった。

 魔力もほとんど感知されない程度の一瞬の展開だ。ホワイトウルフたちは、貫かれる瞬間まで、気づいていなかっただろう。


 イーセはふわりと髪をかきあげ、それからこちらへと向いた。

 柔らかく頼りがいのある笑み。だが、変態だ。


「この調子で進んでいこう。前もここまでは来たんだが、これから先は魔物の数も増えてくる。大きな岩や木々を利用して、なるべく見つからないように進んでいこう」


 イーセの言葉に、俺はこくりと頷いた。


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