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もう1人の新人

イルカディアの兵士となることが出来たイリア。だが兵士になったと言っても家が貰える訳では無い。今まで通り野宿をするイリアであったが・・・

「それじゃあお前達の活躍を期待する。解散!」

バンホイル兵長の言葉で皆が帰路へ着く。

俺は歩き始めながら腕を組み、今日の出来事を振り返る。今日はイルカディアに来て最も濃い1日だった。



「リアロが負けるほどの奴…」

ふとバンホイル兵長の言葉を思い出す。きっと古いローブのやつだろうな。あの古いローブ、どんな戦い方をするのだろうか。俄然興味が湧いてきた。兵士になっているはずだ、近いうちに顔を合わせるだろう。


「イリア〜待ってくれよ〜」

後ろからラルドが追いかけてくる。そこでふと思い出した。


「なぁラルド、俺はどこに住めばいいんだ?」

この1週間俺はラルドと一緒に兵舎のベンチ…つまり野宿をしていた。おかげで疲れは貯まるばかりであった。そろそろくつろいで眠りたいものだ。


「そんなことよりも大切なことを言い忘れていた」

そんなこと…? ラルドにとって睡眠はそこまで重要ではないのだろうか…。だが一度言ったことは変えないだろう。ラルドの言う大切なことを聞くことにする。


「イリア、この国は兵士の間は給料制じゃあない、出来高制だ。つまり、働かなければ野垂れ死にってわけだ」

なるほど、一理ある。働かざる者食うべからず、という事か。


「もちろん他国との戦争などでは報酬は出るがな」

「その辺はは他の国とは変わらないんだな」

よかった、なら安心だ。モチベーションの一つとなる。


「しかしそれ以外では兵士には収入はないんだ」

ラルドは深刻そうに話す。


「じゃあ、どうやって稼ぐのか、それは街や城門前、場内にある掲示板から依頼を受け、その報酬金で生活をする。ほとんどの兵士はそうしているんだ」

「任務をこなすことで訓練にもなるしな」

ラルドは付け足す。


「じゃあ実際にどんな依頼があるんだ?」

「んーまぁ物探しや人探し、素材集め、家屋の修理などもあるし、山賊、盗人の討伐や確保、未開の地調査、他国や村との貿易などもあったかな、あとは魔物の討伐もあった。」


「いろんな依頼があるんだな」

思いの外種類はありそうだ、積極的にこなして行こう。


「そうやって実績を作っていき、兵長や将軍に昇格していくンだ」

ラルドは話す、そういえばラルドはこの国においてはどの立ち位置なのだろうか。


ラルドに訪ねようとした時だった。いつのまにか俺の後ろに人が立っていた、気配を立てることなく…。


「よお、どうした?」

ラルドは尋ねる、その男はラルドに耳打ちをする。


「悪い、イリア。ちょっと呼ばれたから行ってくる。また明日な」

そう言うとそそくさと城の方へ男と一緒に歩いていってしまった。

俺の休む場所は…どうすれば…。





行く宛もないので、城へと戻ろうとした時、再び声をかけられた。聞き覚えのある声であった。

「イリアくん! ひさしぶりだね! 元気してたかい?」

万事屋のおばちゃんだ。相変わらず籠を脇に抱えている。今日も色々と仕入れたようだ。


「どうも、お久しぶりです」

「あんた、兵士にはなれたかい? たしか今日だったろう?」

おばちゃんは俺に聞く、どうやら覚えていてくれたようだ。


「はい、なんとかなれました。今日から俺もイルカディアの兵士です」

そう答えるとおばちゃんは嬉しそうに、

「よかったよかった!じゃあお祝いにこれをあげようかね!」


おばちゃんはそう言うと小瓶3本を手渡してきた。

「これから怪我することも増えるだろうからね!少ないけど使っておくれ!」

きっと回復薬だ。ありがたく受け取ろう。俺は例を言いながら、小瓶を腰のポーチへとしまう。ポーチも先程支給されたものだ。


「あんたの活躍を期待してるよ!あたしゃ店じまいの準備をしなきゃだから失礼するわね」

そう言っておばちゃんは笑顔で去っていった。この時は貰った回復薬をすぐに使う状況が来るとは思いもしていなかった…。





俺は兵舎のベンチへと戻り、早々に眠りにつこうとしていた。固い寝床だが、横になるだけで幾分か楽になる。このまま一眠りしてしまおう、そう考えうとうとしていた時だった。


遠くの方から話し声が聞こえた。耳をすませば聞こえる程度であったが、どうやら深刻な様子だ。


「…ラルドさんでも適応しなかったのか」

「仕方ないさ、覇者っていうのは強さじゃない、持っているマナと生まれつきさ、ラルドさんは強いがマナが合わないってことだ」

「早くしないと取られちまうぞ、今回見つけたのは炎だっけか? 前回の雷は取られちまったよな確か」

「ああ、覇者を手に入れればイルカディアの総合力は軒並み上がるだろうが…誰かいないものか」

「新兵の中にもいたりしてな」


聞こえてきたものは仕方が無い、しかし今の会話の中で気になるものを聞いた。「覇者」何かで聞いたことがあるが…ど忘れしてしまった。また明日ラルドにあったら聞こう。そして俺は深い眠りの闇へと降りた。









…くそ、忘れていた。ここは兵舎周囲。早朝から兵士達が装備の手入れや訓練をしていてもおかしくはない。

風切り音で俺は目を覚ました。空はまだ青みがかかった程度。眠気眼を擦りながら音の出どころを探していると…いた。20mほど離れたところで俺より年上だろうか、女の人が武術の訓練を行っていた。その勢いはとても鋭く、まるで剣の素振りをしているようだった。


ぼーっとしながら見ているとその人はこちらに気づき、近づいてきた。 髪は短く束ねられており、鋭い目つきだ。


「なんだ?」

えらく好戦的に問われてしまった、弁明しなければ。

「いや、寝ていたところを起こされたんでな、すごい音だな」

俺は正直に答える。


「まるで私が悪いような言い方だな。ここで寝ているのが悪いんじゃないか?」

…正論だ…ぐうの音も出ない。

「まぁそうだが、俺は寝るところがないんだ…」

少し同情させるように言ってみる。


「なるほど、新兵一日目にして、一文無しか。大変だな」

同情してもらえた。もう俺の勝ちでいいんじゃないか?ん?気になることがある


「なぜ俺が新兵になりたてだと分かったんだ?」

俺はそんなに有名なのだろうか。

「なぜって、私も新兵になったばかりだ…あぁそうか、フードをかぶっていたからわからなかったんだな。脱いだ時にはお前は気絶していたしな」


フード…つまり古いローブを着ていたやつだ。ちょうどよかった。気になっていたことを聞くチャンスだ。


「なあ、お前リアロを負かしたのか?」

簡潔に尋ねる。腕を組みながらそいつは答えた。


「あぁ、リアロというのか、あいつは。なかなか手強かったな。私と同じような体術を使っていたが、一つ一つが重く、鋭かった。」

「次やればどうなるかわからんな…そのためにも私は…強くならなければ…」

眼差しが変わった。なにか背景があるようだ。


「それじゃあ私は続きに戻らせてもらう」

そういって振り返った。まだ大切なことを聞いていない。


「なぁ、名前はなんて言うんだ?」

俺は尋ねる。

「セラだ。出身は…いや伏せておこう。お前は?」

「イリアだ、歳は15。よろしくたのむ」

「そうか、同い年だな。機会があればよろしく」

セラはそう言うと、再び訓練を始めた。明るくなったら掲示板でも覗いて依頼を探そう。それまでは休息だ…。再び俺は眠りへと誘われた。










『ふむ…セラとはこのような出会いだったか…?』

声は続ける

『近いうちにセラとも再び関わることになる。それも長い間な』

『やはりイルカディアはイリアにとって運命的な場所だったのだ』

『さて、これからイリアには様々な困難が訪れる』

『故郷が焼かれる以上の困難がな…』

『全て振り返ることは難しいだろうが、振り返っていこう』

『お前の記憶にも大きく関わるからな』

『そういえば、イリアの父親はどうなったんだろうな』

1章はここで終わりです。

次の章から少しずつですが物語の本筋へと入っていきます


ところで、自分は神話などに強く影響されやすく、いろんな神話をごちゃ混ぜにしたり、改変したりして少し(多く)登場させるかと思います。。。許してください何でもしますから


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