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イリアの初戦

志願兵が集う中、イリアは注目を集める。そして一人の男がイリアへと声をかけてきた。これから訪れる困難を共にする運命の出会い、その一つであった。

――当日

「よーイリア、緊張してるか?」

兵舎への道を歩きながら、ラルドはにやにやしながら俺に聞く。


「当たり前だろ? 稽古って言いながら剣にはほとんど触っていないじゃないか」

俺は答える。この1週間やったことは、マナの扱いと魔法の使い方、ラルドの専門外と言っていた魔法のだ。


「まぁ戦闘において魔法を使いながら戦うってのは基本だ。やっておいて損は無い」

ラルドは得意気に答える。やることはやった、そんな顔をしている。


「今の全力を出し切れるようにがんばるさ」

俺は半分諦め感覚で答えた。


「まぁ今日やることと言ったら、バンホイル兵長のありがたーいお言葉と志願兵同士の模擬戦らしい。1対1のな」

「そんな気張らずに気楽に行こうぜ?兵士になれることはほぼ決まってンだ」

ラルドは話す。


「そうなのか、知らなかった。ラルド、何も教えてくれないからな」

俺は皮肉を言う。


「なんでも人に頼るな~~」

ラルドはあくびをしながら答える。不思議と緊張が少し和らいだ…気がした。


そんなことを話しているうちに兵舎の前へとついた。全員で20人ほどだろうか。何人かがこちらを見ている。ラルドと歩いていることを不思議に思っているのだろう。


「じゃあ俺はベンチに行ってるから〜がんばれよ〜」

ラルドはそう言い残し、歩いていった。






雰囲気はやはりどこか殺気立っている。おそらく皆緊張しているのだろう。俺も緊張がぶり返してきた。


「よお、あんた。ラルドさんとどんな関係なんだ?」

突然声をかけられた、おそらく志願兵だろう。爽やかな見た目の男だ。


一瞬戸惑っていると、男は謝った。

「あぁ悪い! 自己紹介を忘れた。俺の名前はリアロ、北の街から来たんだ、よろしく頼む。あ、歳は15な!」

男の名前はリアロというらしい。同じ年齢のやつがいるだけでも心強い。


「まぁ成り行きで仲良くなったんだ。俺はイリア、東の山にある農村出身だ。こちらこそよろしく、俺も15だ」

リアロにならって自己紹介を返す。


「よろしくな。俺にも、ラルドさん紹介してくれよ!」

「あぁ、機会があればぜひ」

 これは同期というやつか? 実はひそかに憧れていたんだ。


「しかし、兵士になろうって思うやつが今日集まってきたんだ。なかなかやりそうなやつ、いるよな?」

 リアロは周囲を見渡しながら話す。それにつられ俺も周囲を見渡した。皆それぞれの武器を手にしている。素振りをする者、武器の手入れをする者、マナを練っているのだろうか? 瞑想をしている者、それぞれが自分の世界に集中していた。やはり模擬戦という存在は大きいのだろう。


「まぁ、俺が思うにあいつが一番やるやつだろうがな」

 リアロは小声で小さく指を差した。兵舎の影に隠れて全身を古いローブのような物で隠しているやつがいた。顔もフードを目深に被り、よく見えない。リアロに言われるまで気づかないほど、そいつは静かに立っていた。


「佇みというか、この状況で一番落ち着いているのがあいつだ。かなりの自信家だぜ」

 リアロは付け足す。

「リアロも結構自信ありそうだがな?」

 俺は尋ねた。


「まぁな! この日のためにいろいろ特訓したからな!」

リアロは得意気に話す。

どんな特訓をしたんだ? そう聞こうとした時、兵舎からバンホイル兵長が出てきた。皆の視線がそちらに向く。


 バンホイル兵長が口を開いた。

「担当のバンホイルだ。みんな、今日はよく来てくれた。知ってる者もいるだろうが、今日は志願兵同士の模擬戦を行う」

「とりあえず、場所を移そう、歩いてすぐのところに修練場がある。そこには簡単だが、ステージもあるんだ」

「そこで模擬戦を行う」


 リアロが小声で話す

「まぁお互いがんばろうぜ?模擬戦で当たったらよろしくな!」






 修練場は城の裏側にあった。兵舎の周囲以上に設備が充実していた。中央にはステージというよりも闘技場といったほうが正しいだろうか、想像よりも立派なものが設置されていた。


 闘技場前につくと、バンホイル兵長は振り向き、口を開いた。

「よし! では今から準備に取り掛かろう。装備を持ってきてくれた奴もいるようだが、今日はこちらで準備をしておいた」

 なるほど、そのために確認していたのか。兵士数名が大きな箱を持って出てきた。


「この装備には特殊な術式が組み込まれている。そしてこの闘技場の中央にも術式が組み込まれている」

「この二つが作用し、安全面を管理しているんだ。術式の効果により装備者は互いに死ぬことはない。まぁ、痛みはあるし、ケガもするがな」

 つまり全力でやれということだろう。

 それにしても術式とはなんだろう?魔法の一種だろうか、これが終わった後ラルドに聞いてみよう。



「応募したときに書いた装備を持って行ってくれ、防具も用意しているので、今着ている者は外すように」



 俺はチェインメイルを手に取った。見た目と軽さに反して防御面は優れている。武器は片手剣、一般的にはブロードソードとも呼ばれているものだ。少し短いがその分扱いやすい。

 他のものは…大剣や槌、二刀流使いもいるようだ。リアロの言った通り、「なかなかやるやつ」が多そうだ。リアロに関しては、短剣だろうか、志願兵の中で最も小さい武器を手にしていた。古いローブのやつに関しては、防具しか手にしていなかった。


「あまり時間をかけても仕方ないだろう、適当に呼ぶから上がってくれ」

 バンホイル兵長は闘技場に上がりながら言った。

 よく考えてみれば俺は親父以外の人と戦うのは初めてだ。より緊張が増してきた。






 金属がぶつかり合う。何組か見ていたが本当にレベルが高い。武器も触ったことがないというやつはここまででほとんどいなかった。もしかしたら俺が一番剣から離れていたかもしれない。今やってるのはお互いに片手剣使いだ。二人ともフェイントを交えながら弱点を狙っている。今回配られた装備は本当によくできており、切断される感覚も再現されているようだ。…そこまで再現する必要はあるのだろうか…。


 不意に一方が魔法によるフェイントを交え、それに驚いた相手はよろめいた。その一瞬を見逃さず、追い打ちをかけて首を切り裂いた…。これが駆け引きか…。


「今回は人数は少ないが面子としてはなかなか濃いな」

 バンホイル兵長満足気に話している。

「よしでは次、イリアとリアロ、上がってくれ」


 …これも運命なのか、兵長に話しているところを見られたのか、俺とリアロの名が呼ばれた。リアロを見ると、とても楽しそうな顔をしている。

 闘技場へ上がると俄然緊張感が増してきた。…大丈夫だ、俺には親父と剣を交えた日々がある。全力を尽くそう。


「よろしくなイリア! こうなることを願っていたんだぜ」

 リアロは楽しそうに言う。なぜ俺にそこまで期待しているのか…。

 実際に目の前に立ってよくわかる。リアロはおそらくインファイターだ。武器は短剣、防具も革を厚くして作った鎧だ、所謂軽装に分類されるのだろう。攻撃は当てにくいだろうが、当てればそれが致命になりかねない。一撃一撃を意識して行こう。


「では二人とも構えて」

 バンホイル兵長が声をかける。腰にかかっている剣を抜き、親父に教えてもらった通り構える。体を半身に構え、左てを少し前へ、剣を体と平行になるように…親父との稽古を始めて最初に教えてもらったことだ。


 対するリアロは満足気な顔をしており、構える様子が見られない。これが構えなのだろうか?


「では始め!」

 バンホイル兵長の声に反応し、一気に右足を踏み込む。射程圏内。俺はリアロの左肩から右腰に掛けて剣を振り下ろした。わずかに剣先はリアロの胴を掠め、避けられてしまった。追撃しようと左足を踏み込む。

 リアロは背中を向けた。後ろへと走るのか? 距離を取るのだろうか、だが遅い!

 俺はすでに薙ぎ払いへと入っている。このタイミングであれば、必中だ。















(…あれ…視界が…歪む…? これは…魔法か?)

 気づけば俺は地面に倒れていた。鈍い痛みが右顎に残る。俺は何をされたんだ…?

 リアロは目の前に着地した。瞬間気づいた。そうか、俺は蹴られたのか。

 飛び右後ろ廻し蹴り。この場でそんな派手な技を使うのか…。おそらくリアロの放った一撃は俺の右顎を的確に捉えた。



「もう終わりか? イリア」

 頭の上から声が聞こえる。物足りないのだろう、一撃で終わってしまえば尚更だ。


 普通であればこの蹴りを食らえば一撃で沈むだろう。だが俺には魔法壁がある。幾分か衝撃を抑えてくれていた。このダウンも顎へのダメージによる一時的なものだ。

 俺は左手にマナを溜め、立ち上がる拍子に地面へとマナを込める。俺の予想ではこのマナは踏んだ瞬間に破裂する。


「いいね! 一撃じゃ拍子抜けしちまうからな!」

 リアロは楽し気に話す。

「じゃあこのセットは耐えられるか?」

 短剣を引き抜き、リアロが前へ踏み込む。と同時に込めたマナが破裂した。リアロが一瞬驚く顔が見える。

 俺は、剣に武器強化(エンチャント)をかけ、一気に距離を詰める。俺の武器強化(エンチャント)は武器の切れ味を挙げ、剣としての威力を底上げする。


 俺はリアロの心臓へと剣を突き刺した。が、防がれた。俺のよく知る魔法、魔法壁だ。リアロも魔法壁唱えていた。

 今の一撃で魔法壁は剥がれた。俺は体を回転させ、遠心力と体重をかけてリアロの首へと剣を振りおろす。まだリアロの体勢は崩れたままだ。

 崩れた体勢のまま、リアロは俺の右脇に向けて左廻し蹴りを放つ。体勢を崩しているため、浅く、軽い。このまま押し切れる!と考えた同時に体が動かなくなった。まるで痺れたように。


「スタンブレイク…よくわからんが、筋肉へと強い刺激を与え、体を一瞬麻痺させるらしい、体術の一種だ。覚えるのに結構かかったな~~」

 リアロは話す。おかしい、崩れた体勢だった、重い一撃ではなかったはずだ。

「不服そうな顔をしてるが、マナを込めて蹴ったんだ。土壇場だが、うまくいったな」

 リアロは付け足す。どうやら咄嗟に思い付いた作戦らしい。




 俺は痺れがとれたと同時に後方へと引いた、が、リアロに距離を詰められる。4発、この一瞬で俺の体に叩き込まれる。再び、体が動かなくなった。



「イリア! 魔法壁を忘れてるぞ!」

 ラルドの声が聞こえる。どうやらこの技は魔法壁による防御が可能らしい、が遅い。


「またやろうぜ、イリア」

 そう話しながらリアロは右拳にマナを込める。リアロは俺の顔面に向けて拳を振り下ろした。










…どうやら気を失っていたらしい。リアロの全力を顔面に受けたんだ。俺はベンチから起き上がる。まだ鈍い痛みが顔に残る。

 どうやら模擬戦はすべて終わったようだった。


「気が付いたか、イリア」

 ラルドから声を掛けられる。

「俺はどのくらい寝てたんだ…?」

「んーあまり長くはないが…まぁ今日は全部終わったぞ、今装備の支給をしてるみたいだ」

「お前も早く装備受け取ってこい、帰ろうぜ」

 あくびをしながらラルドは答える。


 見ると闘技場中央で装備の支給をしている。俺は受け取りに走った。


「お! イリア! 気が付いたか! 悪い本気でぶち抜いちまった!」

 リアロから声を掛けられる。すでにイルカディアの紋章が付いた軽装を装備している。

「次は負けんぞ」

 俺は答える。



 バンホイル兵長の元へ装備を受け取りに行く。

「あぁよかったイリア、目覚ましたようだな。簡単に説明するが、この装備は支給するものの、使うのは自由だ。この装備を鍛冶屋に持ってって強化するやつもいるし、これを素材にしてまったく違うものに変えるやつもいる。まぁ、全部自由なんだ」

 兵長から説明を受ける。


「結構緩いんですね」

 と話しながら俺は装備を受け取る。片手剣にチェインメイル。全く同じ装備の新品を受け取った。


「お前の武勲を祈るよ、次見る時はもう少し強くなっているだろうな」

 バンホイル兵長から付け加えられた。この不甲斐ない結果で終わるわけにはいかない。

「近いうちにリアロに再戦を申し込みます」

 俺は答える。


「それなんだが…お前が気絶した後にな、リアロはもう一戦やったんだ。人数の関係でな。あいつもやりたいって言ったしな」

 バンホイル兵長は小声で話す。

「はぁ…」

 相槌を打つ。


「それでな…リアロのやつ負けたんだ。古いローブのやつに」


















ここで再びあの空間へと引き戻される

『リアロ…非常に体術に優れたやつだったな』

声が聞こえる

『リアロも***としての器を持っていたからな*********』

またかき消される。

『今でも考えると狂気的だな***たちは』

俺は考える。

『**もリアロに対しては容赦しないからな』

『まぁ今後振り返る場面があるさ、また振り返ろう。イリア、リアロ、**、ラルド』

『それぞれにとっても運命的な出会いなのだから』

だんだん段落が少なくなっていく(激うまギャグ)

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