誓い
ラルドは目覚めた。
話を聞いたラルドは再び決心を決め、行き先を言わずに転移術式に消えた。
イリア、リアロ、セラもそれぞれの目標を内に秘め、行動を始めたのだった
――4日後、イルカディア
「おい! ラルドさん目覚めたぞ!」
ラルドを担当していた軍医師は周囲にイルカディアの英雄が目覚めたことを伝えながら走る。
「あぁ……俺生きてるか……?」
ラルドは曖昧な記憶を辿りながら今の状況を整理する、がいまいちぱっとしない。
数秒後、何人もの兵士達がラルドの病室へと入ってくる。
「ラルドさん、よかった」
「死んじまったかと思いました!」
「ギルドナイツ戦線お疲れ様です!」
ラルドは思い出す、ゼンとの戦いを。どうやら勝負には負けたが生きていたらしい。
(あの状況で俺を生かすようなやつではないと思っていたのだが……)
「ほらほら、どいたどいた」
聞き覚えのある声、そんな声とともに入ってきたのは、バンホイルであった。
「一般兵は、この部屋から出ていって鍛錬でもしろ!」
バンホイルは怒鳴りながら、兵士を散らせる。渋々命令に従う兵士達の顔は不満に感じている様子がある。
「おそらく覚えていないようだから、説明するぞ、今回の戦線について」
「あぁ頼む」
「と、その前に紹介したい奴がいる」
「おーい、入ってきてくれ」
またまた見覚えのある奴が入ってきた。
「……俺の記憶が無いとでも思ってるのか?」
ラルドはバンホイルに悪態をつく。入ってきたのは、イリアだったからだ。
「なに、改めて紹介させてもらう、お前は知らないだろうからな」
「イリアは炎の覇者になることができた、ゼンとの戦いに敗れ、結果的にお前達を救ったのはイリアだ」
「なるほど、この短期間でよく炎の覇者になれたな、助けてくれてありがとう」
「今日のラルドはなんか真面目で拍子抜けする」
イリアはラルドの例に対し照れたように話す。
「まぁ、これでイルカディアも覇者持ちだ、総合力の向上に繋がるだろう」
バンホイルは続ける、そして……
「じゃあ、今回の戦線についてお前に共有していく」
「――そうか……結果的に依頼者、つまりアレキサンダーからキャンセルをしてきた、と?」
「あぁ、イリアの話ではそうだ」
「なんか気持ち悪いな……」
ラルドは素直に感想を述べる、
「まぁ、そんな訳だ、近いうちにアレキサンダーは攻めてくる、その前に準備しなくては」
バンホイルは立ち上がる。
「俺は隣国やツテを使って連盟を組むための準備をする、これはもう女王には共有してあるし、許可も出ている」
バンホイルはそう言って通信術式を取り出す
「ラルドも早く全快させろよ」
そう言い残し、部屋から出ていった。
「で、俺らもどうするんだ?」
イリアはラルドに尋ねる。
「そうだな……そういえば、リアロとセラはもう目覚めたのか?」
「あぁ、当日に目が覚めている、ここ数日で回復術式? に包まれてもう全快だぜ」
回復術式とは包帯に術式を書き込み回復を早める手段の一つだ、一般的にはよく使われる。
「なぜ、ラルドは目覚めるのが遅かったんだ?」
イリアは尋ねる。
「まぁ、たぶんマナ使い切ってたからだな」
ラルドは適当に答える、イリアもそれに納得したように相槌を打っていた。
「さて、どうするか……」
「とりあえず、イリアは依頼こなして覇者としての力をもっと使えるようにする、だな」
「という訳で、俺と話してないで早く行動しろ!」
ラルドはイリアは催促させ、部屋から追い出した。
一人になったラルドはつぶやく
「……まだ喰わなきゃダメか……」
転移術式を取り出し、簡単に身支度をしたラルドはどこかへと飛んだのであった。
――兵舎
「――だからマナの流しが甘いんだ」
「うるせえな! 俺だって努力してんだよ!」
2人の話し声が聞こえる、リアロとセラは目覚めた後は2人で何かの特訓をしているようだった。
「よぉイリア、ラルドさんどうだった?」
イリアに気づいたリアロは尋ねる。
「元気そうだった、お前は早く行動しろって逆に言われたぜ」
「そうか、よかった。で、お前はこれから依頼か?」
セラは手甲を直しながらイリアに話しかける。
「まぁ、そうしようと思ってんだが、属性精霊から神殿に来るように言われてるんだ」
「それが終わったら依頼に移ろうかと考えている」
「わかった、ではタイミングが合えば私たちで小隊を組もう、連携もこの3人の方がやりやすいだろうしな」
イリアは少し驚いた。まさかセラから持ちかけてくるとは。実はイリアも3人で小隊を組むことを考えていたのだ。
「お前がそんなこと言うなんて珍しいというか、変わったな」
リアロも驚いていた。おそらくリアロも同じことを考えていたのだろう。
「組みたくなきゃ別にいいんだ、1人には慣れ――」
セラの言葉をリアロが遮る。
「じゃあイリア、早く行ってこい! チームリアロが待ってるぜ!」
「お前がリーダーなのか……」
二人揃えて同じことを話す。どこかでこの3人は波長が合うようだ。
ふたりに手を振りイリアは歩き出す。この3人。いやラルドを入れた4人で戦うことを誓いながら。向かうべきは覇者神殿、“覇者の剣”を受け取りに……
――――闇
『ふむ……ギルドナイツはどうだった?』
声は問いかける、どうやらここが一つの区切りのようだ。
『これから様々なやつに会うイリアだが、成長するにあたっての大きな出来事の一つだ』
『あぁ、そうだ。次に出会うやつも確か覇者だったな』
『“属性覇者”ではないがな』
二章はここで終わりとなります
次回は更に戦闘描写も増えるのではないでしょうか(畏怖)