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能力世界の悲劇譚  作者: 桂木/山口
第一章 非日常の能力世界〈序章〉
3/54

3.瀧沢悠斗の始まり

 

 気付いたとき俺は最初にいた病院のベッドで寝ていた。

 この天井のくだり、見覚えがある。

 起き上がって見渡してみるが前と同じ感想しか出ない。時計がないのが不便過ぎる真っ白な一室だった。

 腹をまさぐっても傷がないのも、前と同じ。


 だが今回は既に来客がいるようだ。


「起きたようだな、瀧沢悠斗君」

「あ、あなたは!」


 カッコいい系のスーツを着ている人物、名前は秋月友紀だったはず。

 実際そんなに驚いてる訳ではない、ここにいる時点でこうなることはわかっていたから。何の意味もなく盛って反応してみたのだ。


 だが、今回はあの時のチャラい女子高生と例の金髪少女もいる。どっちも制服姿である。終業式は昨日だと言うのに。


 このメンバーが揃っているということは、俺の思ってる以上に事態が大きいということを意味する。一層の重い雰囲気が流れ始めた。

 そんな中、最初に口を開いたのは秋月さんだった。


「単刀直入に聞こう。我々を覚えてるな?」

「はい……覚えてますが?」

「そうか」


 覚えてるか、という質問。

 逆説的に、覚えてないことが自然な状況であるということ。

 ここから導き出せるのは、記憶喪失ではなく。


「……記憶消去ですか?」


 間違ってたら恥ずかしいから疑問形で言う。


「そういうことだ。だが、だ」


 頷くが、疑問。

 言いたいことはわかる、何故俺は覚えてるのかということ。


「完璧に記憶は消したはずなんだけどな~」


 中川さんがそう言ったことから、この人の能力だと思われる。『記憶消去』なんて超能力協会からしたらとても便利な能力だろう。情報操作にうってつけだ。


「……巻き込まれた俺の記憶を消そうとしたということでいいんですよね?」

「うん……秋月さん、言ってもいいかな?」

「だが……」


 そしてあっちで秋月さんと中川さんが、なにやら話した後最終的にまあいいかと秋月さんが了承した。


 まず中川さんの説明。


「じゃあ、まず私の能力は記憶消去」

「ですよね」

「あの日の夜、記憶を消したはずなのに残っている」

「そうですね」

「で、仕組みを話すと能力者、被害者を見つけたらとりま記憶を消去するって感じなんだけど」

「能力の悪用の防止、情報操作が目的だ」


 秋月さんが素早くフォローを入れる。


「俺がそれの対象だったわけですね」

「治癒がないことから、私は復元系の能力だと考えたが、楓の話を聞くとな……」


 そうして秋月さんは金髪の少女、楓に顔を向ける。


「鎧みたいのを纏ったように見えたの」


 俺も能力は生体装甲だと思っている。復元も合わせて2つなのか?


「どういうことかまったくもってわからない。君が治癒の能力なら日本では二人目ということになるが、そう判断できないくなっている」


 回復能力ならざらにいる、みたいな印象があったから少し驚いた。才能、みたいなものがあるのかもしれない。


「それで、君の能力を確かめることにした」

「そんな方法があるんですか?」


 自分でも能力を知らないのは危険だし、わかる方法があるならとても助かる。


「そろそろ来るはずだ……っと噂をすればってやつかな」


 ドアが2回ノックされ、男の人の声がした。


「失礼します」


 丁重な挨拶がなされ、扉が開かれる。


「来たな、藤堂」


 現れた長身でイケメンっぽい彼は藤堂というらしい。そして彼も制服だ。学生は学生らしく、か。

 軽く肩を竦めながら彼は文句を垂れる。


「急に呼び出すから急いで来て疲れましたよ。で、この人の能力を見ればいいんですね?」

「頼む」

「詳しいことはこいつの記憶から、ですね」


 わずかの言葉を交わして、彼は俺のベッドの脇に立つ。すると、空で手を動かし始めた。

 何か見えているらしい。パネルみたいなものを操作してるように見えた。

 秋月さんの説明が入る。


「彼はデータベースの能力。その能力で君がどんな能力者か調べる」


 どんな能力を持っているか確かめる能力、これも超能力協会にとって必要な能力であることは間違いない。


「この瀧沢悠斗の能力を調べるんですよね」


 手を上下左右に動かしながら確認をとる。


「そうだ」


 秋月さんは頷く。

 無言が続いた。だんだんと雲行きが怪しくなってくる。藤堂さんとやらの表情も心なしか固まっている。

 懸念通り、奇妙な結果が待っていた。


「彼、能力者じゃないですよ」


 思わず口から言葉が漏れそうになるが、俺の言いたいことは楓さんとやらが言った。


「でも実際使いましたよ」


 そして皆の言いたいことは中川さんが言った。


「そうなるとわかんないよね~」


 言い方がとてもチャラい。緊迫感がすごい勢いで薄れていってる。


 正直、話についていけてないんだが。

 人見知りだから、他人ばかりの空間で「ちょっと待って下さいよ」とは言えなかった。

 その間も4人は何やら話しているが眉間に皺がよっている。

 暇になって欠ていたら、藤堂さんが口を開いた。


「どうしますか、報告しといたほうがいいのでは?」

「いや、今は止めておこう。君の能力でも感知できなかった訳もわからないからな」

「そうですね……前例がありませんね」


 報告も超能力協会の仕事か、組織っていうのはやっぱり面倒だな。ほうれんそうですか。


「(にしても喉が渇いたな)」


 話が詰まってきたところでチャラい女子高生、中川瑠璃が。


「もしかしたら超能力って概念じゃないんじゃないかな?」


 それはとても画期的な物だと思った。ただチャラいだけじゃない、頭が柔らかいIQ高めの女子高生だったのか、

 と、言っても証明するすべがないから結局わからないままなんだけど。


 聞きながらベッドで横になっていたら、ふと思い出す。


「そうだ! アイツは、橘は?」


 なんだかんだで忘れていたがこの人達に会おうとしたのはアイツのはことを訊きたかったからだ。

 鋭い視線で秋月さんは俺を射抜きながら。


「消しといたよ」


 なんというかごくごくフラットに秋月さんは言った。


「(確かにアイツは大変なことをしたがこんなことになるとは……)」


「……記憶をな」

「ですよねー」


 軽い感じで答えたが、今まではそればかり気にかかってたからやっと肩の荷がおりた。おりたついでにもう一つ。


「そういえばここはどこですか?」

「荒山研究所の仮眠室だ」


 荒山研究所って言ったら、朝俺が目覚めた最寄りの病院の裏の建物じゃないか。研究所で能力者、被害者の記憶を消して、裏の病院まで送り届けてるということか。

 俺は俺で納得している間に、彼らの話し合いは終わったようで。


「とにかく、君は休んでくれ。では帰るぞ」

「は~い」

「少し考えないといけませんね……」


 秋月さん、中川さん、藤堂さんは部屋を出ていった。でも一人残った。

 俺は金髪の女子高生、楓と二人きりになった。

 改めて顔を見ると、すごく美形だ。刀のような美しさでありつつも、若干の子供らしさを秘めたような怪しい容姿。

「(怪しいってのもおかしいか……)」

 秘密を抱えていそう、って風だ。

 彼女は俺のことを見つめてくるだけで何もしない。じゃあ、何故ここにいるんだ。

 当たり障りなく時間を訊いてみた。


「……今何時かな?」

「えっと…7時くらい」

「ありがとう」


 暫く、重苦しい沈黙が続いたころに、彼女は言った。


「あの、さっきは守ってくれてありがとう」

「えっ?」

「……礼を言いたくて」


 ああ、そういうことね。


「いや、そんなつもりでやったんじゃないからさ」

「それでも……」


 こういうときはある程度なら許されるから。

 些細な願いを。


「じゃあ代わりといってはなんだけど、名前で呼んでいいかな?」


 楓って名前を楓さんと言うと、あれだから呼び捨てで。


「ご自由に。じゃあ私も名前で呼ばせてもらおうかな、悠斗」

「何かノリ良いなっていうか、そういうの気にしないタイプなのね」


 俺も別に女の子を下の名前で呼ぶのは何の抵抗もない、けど呼ばれるのはこそばゆい感じがする。

 家族以外に呼ばれたことないし――。


「あとその金髪なんだけど」


 彼女を近くで見た感じ、顔は日本人っぽく見える。けれど、髪も染めたようなものではない。


「私、一応ハーフだし」

「へぇ」


 顔は日本人っぽかったからハーフかクォーターだろうと予想はついてた。

 今度は彼女から質問してきた。


「明日時間ある?」

「ん、明日? 時間はこの後も存在し続けると思うけど」

「じゃあ明日のこの時間に荒山駅来れる?」

「……それは大丈夫だと思うけど」

「じゃあ、よろしくね」


 なんか約束とかしちゃったけど。大丈夫なのか。


 美人との約束。戦ったあとなんて思えないほどテンションが上がってしまってる。

 そして俺は心の中で深く思う。

 ありがとうって。嬉しかったって。


 彼女は挨拶して部屋から出ていった。その後俺はゆっくりと眠りについた。

 これまでに無いくらいの安眠だった。






 体内時計5:00に目覚めた。

 とりあえず太陽の光を浴びないと脳が覚醒しなそうだったので病衣から半袖半ズボンに着替え、スマホと財布をポケットに突っ込んで部屋を出た。

 昨日は夜ご飯も食べてなかったし腹が減って仕方なかった。


「そうだったそうだった、出口わからないんだ」

 ここには気絶している間に運ばれたから道筋を知らない。

 部屋から出ると左右に長く続く道があり、それぞれ部屋が設置されている。

 この部屋の入口には『仮眠室2』という表札、向かいの部屋は『仮眠室1』。


 研究所の人がいれば頼んで出られそうだが、うかつに動いて迷うのもよくないと思いそのまま部屋に戻った。


「(すごく喉が渇いた。自販機とか……ないよな……)」


 今日中までに誰かは来ると思うけど、早いうちに家に一回帰っときたいというのもある。

 こんなんなら名刺くださいって言えばよかった。


「…………」


 無言のままスマホでソシャゲをやって時間を潰す。ネットワーク回線はあるようだ。


「いや、この研究所の電話番号を調べて電話すればいいのか」


 早速、インターネットで検索し電話番号を発見した。

 そして電話アプリを開くと『神代楓』という名前が最近登録欄に入力されてあった。

 いつの間にか登録されとる。

 勝手に使うなよ、という思いもあるけど今は天恵に思えた。


 早速電話をかける。

「…………出ないな」

 待機音が止む気配がない。そういえばまだ朝の5時だった。

 あとでかけ直そうと電話アプリを消そうとしたとき、通話が始まった。


『…………』

「もしもし、瀧沢悠斗というものです。えっと、神代楓様の番号でよろしいでしょうか」


 俺の足りない頭でできる最大限のマナーを表した。


『……………』

「あの……」

『こんな朝から何?』


 若干キレ気味な声音だ、朝はダメな感じですか。


「研究所から出られなくて困ってます、助けてください」


 できるだけ早く説明して、彼女の気分を落ち着かせる時間を与える。


『そうだった……すぐ行く』

「お願いします」


 そして通話が終了。会話だけで結構あがってしまった。緊張で体が熱くなっている。

 ある程度年上なら普通に会話できるんだけど、同い年とか年下は何故かダメになってしまう。アニメ見すぎて恋愛対象として見てしまうからっていうのが大きいのかもしれない。そんな下心満載なつもりはないけどさ。


 そして一時間後。


「遅くないか?」

「まだ6時半にもなってないよ」

「……まあ」


 来てもらった立場からはあまり文句は言えない。こういう所がまだまだ自分は子供だと思う。常日頃から客観的な視点を考えられる人になりたいものだ。


「(きっと忙しかったんだ。眠くて二度寝したとかなわけないな、うん)」


 俺は楓と一緒に研究所を出た。

 と、言っても研究所内を15分ほど歩いたりして結構な距離だった。それにエスカレーターで上に上がるとは思いもしなかった。ここは地下だったのか、ってね。


 正面入口で別れの挨拶と礼と今夜の約束について。


「ありがとうな、楓」

「どういたしまして、悠斗」


 顔が熱くなってるのがわかる。耳まで真っ赤になりそうだやはり名前で呼ばれるのは緊張する。


「じゃあ俺は一回家に帰るから、午後7時に荒山駅で」

「うん」

「じゃあな」


 俺は家まで40分かかる帰路で、今夜何が起こるのか考えていた。

 なんたって心が弾んで休まらないのだから。








 7月20日、終業式、能力者橘秀太に襲撃される。

 21日、楓、植物の能力と遭遇、色々説明、夏休み

 22日、帰宅、楓と夜どこかへ

 23日、夏休み初日(気分)


 隣の荒岡駅は歩いて35分かかるので、6:10に家を出た。


 何があるかわからないので財布にはそれなりに入れてきた。以外はいつも通りのスタイル。半袖半ズボンに軽く羽織、財布、スマホ、腕時計、スニーカー。


 到着時、針は6:40を示していたが、少し早いと思ったが楓は既に駅に到着していた。


「何時に来た?」


 明確な集合時間が決まってなかったので、待たせたのなら申し訳程度に謝ろうと思う。


「少し前かな」

「それは待たせたな。で、どこ行く?」

「ついてきて」


 楓の後をついていくのは研究所からの帰りにもあったけど今回は夕暮れ時というのもあってなにか風情がある。夕暮れの空とか郷愁を感じられる。


 案内された先には、黒塗りの車に寄っ掛かっている秋月さんがいた。改札を抜けたからバスかタクシーだと思ったが、そうきたか。

 別に2人きりとは言ってなかったけれど、なんか気分が微妙に下がった。


「では乗ってくれ」


 そう言って秋月さんは運転席へ、俺と楓は後ろに乗る。

 そして出発した。


「……どこへ行くんですか?」


 隣にいる楓に訊いてみる。

「人がいない所」


 すごく不安だったからGPSを起動した。


 そしていつの間にか高速道路で時速100kmくらいで走っている。


「いったい全体どこへ向かってるんだ!?」

「いい所」


 どうしても言わないつもりなんだな。仕返しというわけじゃないけど楓の顔をガン見してみた。

 暫くすると反応が返ってくる。


「……なっ、何?」


 これだよ、これを期待してたんだな。

 少し頬が赤くなってそっぽ向いて顔を隠す感じ、思わずにやけてしまう。その顔を俺は見られたくないから口元を押さえる。

 ストレスが一気に解消されていく。


「ヘンタイ……」

「いや、ごめん。頑なに言わないからさ悪戯を」


 それに見るだけならまだ変態にはならない。そこまでの性癖ではないから。


「後どれくらいで着く?」

「10分ってとこかな」


 楓が秋月さんと話すときタメ口で随分仲がよく見えるけど、どんな関係なのだろう。幼馴染的なやつだろうか。



 いつの間にか高速道路を下りて一般道を走っていた。それもかなり田舎。街灯も見当たらないので車のライトの光だけ道を照らしている。


 やがて、車は止まった。

 

 辺りを見回しても一面、森、森、森。

 だかよく見ると石造りの階段があった。太陽は完全に沈んで、月が十分登ってきたが、光源としてあまり機能していない。


「目は慣れてきたけど、本当にどこに向かってるんですか?」

「もうすぐだから落ち着きたまえ」


 いや、言ってくれたら今すぐにでも落ち着けるのですが。

 階段はどこかの寺のようにとてつもなく長い。秋月さんと楓は横に並んで登ってるが、俺だけは数段下でなんとか追っている状態。

 後ろから二人を見上げてみると、なんか絵になる、というか息ぴったりだった。


 いよいよ最後の段になると、楓が振り返って微笑んで促す。


 登りきると、そこには一面草原が広がっていた。

 ぽつんと一件だけ家が建てられており、そこから遠くに柵が横に張り巡らされている。

 石の道の脇に看板が立っている看板曰く『ひまわり畑』。


「ひまわり畑って昼間に行く所じゃないのか?」

「見ればわかるから」


 秋月さんが管理人的な人と話してる間に、

「じゃあこっち来て」

 俺と楓は柵に囲まれているひまわり畑に向かった。そこにあったのは―――。


「これって……」


 ひまわり畑なんだからひまわりがあった。

 それは別に普通。

 だが、異常な点がある。


「そう、光るひまわり」


 こそには白く輝くひまわりがあった。花の部分が光っているのだ。

 柵を外側から見てたとき月の光で明るくなっているのだと思っていたが、正体は光るひまわりだった。

 そして全ての花がこちらを向いているのも、さらに幻想的な雰囲気を醸し出している。

 いや、もっと気の利いたことを言えればよかったんだけど、俺の知識、表現力じゃこれが限界だった。

 心底そう思うくらいに綺麗な景色が広がっている。


「すげぇな、これ……」

「物体を光源化させる能力者の意思が反映されたひまわり畑だよ」

「意思が反映されたってことは……どういうことだ?」


 急に反映されたとか言われてもわからない。すると楓が分かりやすく説明してくれた。


「能力自体がひまわりに移ったと言ってもいいかも」


 新しい概念、能力が物体に影響を与えて、物体自体が能力的なにかを持つようになることもあるらしい。

 だがこんな神秘的な景色のを前にしたらどうでもよくなってくる。


「心が洗われるようだ」

「この畑を作った人物の意思が滲み出ているんだ」

 いつの間にか秋月さんが隣にいて、女の人の間に挟まれてしまった。

 このひまわりを育てた人は晴らしい志を持っていたに違いない。






「今日はありがとうございます」

「どういたしましてだが、もちろんそれだけじゃない」


 この景色を見せるためだけに俺を呼び出すのはなんというか意味不明だからな。

 意味があるとするなら人が少ないって所と、ひまわりに能力があるってことのみ。

 これから話すことに相応しい舞台ではある。

 草原を歩きながら、秋月さんが言う。


「普通は能力者を見つけたら記憶を消して元の生活に戻すんだ。それは超能力という概念を広めないためというのが一番だ。しかし君だ。君は記憶消去が効かないどころか能力も不明。じゃあどうするかって話だ」

「…………」


 俺がどうするか。

 嫌な予感はしてたが実際予感は当たってた。ビンゴなら24連続当たりみたいな……いや、意味不明だなこの例えは。


「極論こちら側の協力者になるか、死ぬかになるんだよ」

「……死ぬ訳にはいきませんね」

「そういうことだ。他言無用で頼む」


 つまりは協力者と言っても超能力協会についての秘密を隠すだけ。秘密を隠すことに協力するということ。


「もしも能力者を見つけたらすぐ連絡してくれ……ほら返すよ」

「はい」


 そう言って俺に名刺を渡してきた。あのときは俺が寝ている間もって帰ってたんだな。

 そして、秋月さんは踵を返して道を戻る際、こう付け加えた。



「君みたいな人がその能力を持っていてよかったよ」


 ――心底なため息と共に。

 帰りも二人の後をついて階段を下った。


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