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第1話

今回はちょっぴり不思議でちょっぴり悲しいをコンセプトにした作品となっております。

楽しんでいただければ幸いです!よろしくお願いします!

焼けるアスファルトにうるさいセミの声。そして見渡す限りの山。


「ちっ!どうして俺がこんな目に!」


敬はぶつくさと文句を言っている。事の始まりは今から3日前である。


高校の一学期終業式、吉沢敬はクラスの友達とこれから始まる夏休みの予定について話し合っていた。


「なあ敬、お前夏休みどっか行くの?」

聞いてきたのはクラスで一番仲のいい佐藤亮太だった。


「俺は全く予定がないんだよ。高校生の夏休みにと言えば海に行ったり、女の子と花火見に行ったり、もっとこう輝いているはずじゃないのかよ。彼女欲しいなー。」


そうため息混じりに敬が答えた。


「あはは。じゃあ夏休みは沢山勉強できるね」


確かに俺はあまり成績の良い方でもなく、どちらかと言えば下の方だ。進学するにしても就職するにしても成績が良いに越したことはない。


「そう言う亮太はどうなんだよ!何か予定でもあるのか」


敬が訊ねると亮太が一瞬申し訳なさそうな顔をしたのを敬は見逃さなかった。


「お前まさか」


敬の嫌な予感は見事に的中した。亮太はイケメンでモテる。そんな奴がなぜ俺と一緒に居るのかはよく分からない。


人生というものは不思議なものだ。


「敬には早く教えようと思ったんだけど。変なタイミングになっちゃったな。俺、彼女出来たんだ。」


少し照れながら話した亮太に敬は殴りたくなる衝動を押さえながら、話を続けた。


「やっぱりか!最近何かこう付き合い悪いなとは思ってたけどそういうことだったのか。許せん!」


冗談混じりに敬が言うと亮太は悪びれた様子で手を合わせている。


亮太の一件で落ち込んだ敬は、寄り道もせずに家に帰りついた。


「それにしても暑すぎる」


リビングに入ると一目散にエアコンを点けて、冷蔵庫から冷えたスポーツドリンクとお菓子を取りソファーに座った。


何か面白い番組はやっていないかとテレビを点けたら画面にはニュースキャスターと天気予報士が映っていた。


「えー今日は強い日差しで全国的に猛暑日になりました。水分補給をしっかり・・・」

天気予報を見終わる頃には部屋の温度も下がってきてしばらくすると敬は眠りについていた。


「ここは・・・」


敬は神社の鳥居に一人立っていた。


小さめの鳥居、寂れた拝殿。人は居らず、しかし恐怖を感じることはなく不思議と居心地は良かった。


「うふふ」


そんな女の子の笑い声がどこからか聞こえてきた。その声は優しくどことなく落ち着く声で、俺はその声の主を探した。


「神社の奥の方から聞こえてきたみたいだ。行ってみるか」

参道を歩いていると風が心地よく頬を撫でる。


「くすくす」


あの声だ。あの優しい声。


「どこにいるの」


敬は参道を進んだ。風は今も心地よく吹いている。そして拝殿前に近づいたとき。


「今はあなたに私は見つけられないわ。また会えるといいわね」


「敬!敬!」


目を開けるとそこには母がいた。時計を見ると夕方の5時過ぎだった。仕事が終わって帰ってきたのだろう。


「もう、あんたこんなところで寝ないでよ。」

まだハッキリしない頭で敬は、すまないと答えた。


「夢でも見てたのか。それにしてもあの子は・・・」


「え。あの子って誰のこと?」


聞かれてしまった。この年になって夢の中の女の子のこととも言えないし、とっさにごまかした。


それにしてもあんなにリアルな夢を見たのは初めてだ。まるで本当にその場所に居たような。


母は晩御飯を作り始めている。どうやら今日はカレーのようだ。


敬はまたソファーに座りカレーができるまでテレビを見ていた。


「続いては明日の天気です。明日も今日と同じく全国的に猛暑日になるところが多いでしょう・・・」

カレーの匂いが漂ってきたころに父も帰ってきた。

そして福神漬けを口に運んだ時、事件は起きた。


口を開いたのは父だった。


「敬。父さんと母さん今度大きな仕事があって3週間ぐらい家を留守にするんだ。それで敬を一人にしてはおけないから、田舎のおじいちゃんの所に行きなさい。おじちゃんもきっと喜ぶから」


口にいれた福神漬けが気管に入りそうになり噎せた。両親は仕事の関係上、海外に行くことも今まであったからある程度は許容範囲だけど3週間と言うのは初めてだった。

だが俺も簡単にハイそうですかと言えるほど素直ではない。


「え!何でそんな急に。じいちゃん家滅茶苦茶田舎じゃん」


そんなこと言っても無駄だとはわかっていた。


「頼むよ。今度どこか連れてってやるからさ」


これ以上反抗しても意味がないだろうと思い諦めた


そして敬は夏休みの大半を祖父の家で過ごすことになった。


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