Gang of AJIPON
※この作品はリレー小説です。
東京の夜風がほほをなでる
「ほ、本当にやるんですか~?」
高層ビルの屋上で少女がだだをこねる
「あたりまえだろ、今日のために準備を進めてきたんだ」
そういって男は立ち上がる
「さあ、味ぽんを取り返しにいくぞ!」
これは味ぽんをめぐる、少年少女たちの物語である。
男の名前は豚。味ぽんとめっぽう相性がいいことで知られている男だ。
少女の名前は白菜。人見知りが激しく水対応が多いが性根は優しい子だ。
そして二人は屋上から飛び降り、背負ったバッグについた紐を引っ張る。
するとバッグの中から四角いパラグライダーが飛び出してきた!
そして彼らは飛行を続ける。……かに思えた。
下から鉛玉が飛んでくる。まだ紙一重でかわし切れているが、いつまでもつか分からない。
「あいつは……豆腐!」
「しかもえのきまでいるじゃないですか! だから嫌だったんですよ!」
相手の抵抗激しく、鍋の神の悪戯か、不運にも白菜の持つグライダーのワイヤに一発の弾丸が命中してしまった。
「ッ・・・!」
「白菜!」
急激に落下速度を速める白菜。その伸ばされた腕は寸前のところで豚に掴まれた。
しっかりと蹄で握りしめた豚は下方に臨むビル屋上、敵中央に墜落する。白菜を守るように。
「くくく、飛んで火に入る鍋の具材とは言ったものだな!HAHAHA」
「豆腐様ぁ!やっちまいやしょうぜ」
豚たちを豆腐とえのき隊が取り囲む。
「白菜、あれをやるぞ」
「は、はいいつでも行けます!」
「くらえ! 豚バラ白菜ミルフィーユコンボ!」
その言葉と同時に、豚が油を、白菜が特別な繊維で編まれた布をばらまく。
「な、なんだこれは……お前たち、一体何を!」
その言葉を待つより早く、豚は手にライターを握り、着火した。
刹那、油を良く吸収する布に引火した火が次々と燃え広がり、周囲を炎の海にした。
相手と自分の間に炎の壁を作り出し、敵を遮断する。まるでミルフィーユのように。
「へっ、だがお前らは炎の中!逃げ場を自分から無くすとは馬鹿な奴らだぜ!」
炎の中へ銃口を向ける豆腐一味。豆腐の一声で、えのき達によって四方八方から鉛が撃ち込まれた。
あたりに沈黙が広がり、炎が徐々に弱まっていく
「やったか…」
「見てこいえのき!」
えのきが中心に行く
「ぐぁあああああああああああああああぁぁああ」
「食品が鉛玉たぁ、衛生局がだまっちゃあいないぜ!」
「そうよ! 鉄分だけじゃ体の健康は維持できないわ!」
二人は奇跡の生還を遂げていた。
「まぁ、この肉の盾がなけりゃ、今頃俺達は駄目になっちまってたろうがな」
豚の両手には、分厚い豚肉の盾があった。
肉の盾が、鉛玉をすべてその分厚い脂肪で受け止めたのだ。
「そして――白菜!」
「分かってる!」
白菜は周囲へ向けて、隠し持っていた食物繊維の糸を張り巡らせる。
それは一種の曲弦糸のようであった。
そこからは一方的な虐殺、いや調理であった。
一口サイズに切り刻まれたとうふと、食べやすい束に分けられたえのきが眼下の鍋へと落ちていく。
そして味ぽんは豚の手へと渡ったのであった。
「これは俺たちが持っておくべきだな」
「ええ。そして・・・」
気付くのが遅かった。豚は薄くスライスされる。
「食べるのは私です。お疲れ様でした、豚さん」
コンロの火はこうこうと燃え続ける・・・
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