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087 人材2

 


 彼らは優秀だ。

 1人はドワーフなのにエルフのような体型で盾を持たせれば右に出る者はいない女たらしで、1人は小柄のヒューマンで剣の腕がピカイチの武器マニアだ。

 何かとてもアンバランスな・・・何だろう・・・


 エグナシオ・フォン・デシリジェム。

 身長2mものドワーフであり、剣の腕がピカイチの賢者(・・)で、そして無類の女好きでもある。

 既に俺の家臣となることが決まっている彼は・・・そう、彼には『強き賢者』というギフトがある。

 そしてその強き賢者の能力は【身体強化】、【思慮深き者】、【英雄色を好む】である。

 ドワーフである彼がドワーフとは思えない身体的特徴を持っているのは身体強化の効果なんだろう。

 思慮深き者の効果は物事を客観的に見ることができ、思考速度を上げるだけではなく多くの知識を蓄積でき且つ活用できるというものだ。

 そして面白いのは英雄色を好むだ。

 この英雄色を好むという能力はそのままの意味で女好きってことだが、妻の数だけ思慮深き者の能力を底上げするってものだし、夜の方も強いらしい・・・ちょっと羨ましいかも・・・いえ、何でもありません。

 そして彼はこの強き賢者のことは知らないようだ。



 ドラガン・フォン・ガジェス。

 俺が請いブリュトイース伯爵家に仕官をしてもらうことになった将来有望の若者だ。

 彼は武具マニアがたたり鍛冶師になろうとした。

 当然のことだが父親のガジェス男爵に反対され、ならばと最新で最高の武器や防具が集まる王国騎士団への入団を考えていたらしい。

 そんな彼の琴線にふれたのがブリュト商会が開発した試作品のテスターだ。

 テスターとは試作したマジックアイテムの性能確認や使い勝手を検証する人であり、マジックアイテムの製作に関わる人のことだ。

 テスターによって不具合の指摘があったり使い勝手が悪いと判断されれば手直しなり開発停止や販売中止となる。


 彼はそんな立場を望み、最後には俺にテスターになりたいと懇願してきた。

 思うつぼですね。


「お館様も悪ですねぇ」


「言うなよ、照れるじゃないか」


 帰りの馬車の中でゲールの軽口を受け流す。

 今回はドラガン以外に7人の生徒と面接を行った。

 元々ゲールが目を付けていた生徒たちだったので腕は確かだけど、3人を不採用としたのは貴族意識が高く話し方が鼻持ちならないものを感じたからだ。

 俺の前で貴族だからとか血筋がどうとか自慢げに話す前に俺の性格ぐらいリサーチしておけよ。

 確か以前にそんなバカを・・・どうしたっけか?

 まぁ、いいや。


「そういえば、以前セジャーカの街への道を盗賊を使って封鎖していたベレス男爵ってのがいましたが覚えておりますか?」


 唐突にゲールが口を開く。


「ん~・・・あぁ、思い出した。確か蟄居謹慎になっていたと思うけど?」


 あの後1度だけ法務院に呼び出され事情聴取をされた記憶があるわ。


「ええ、息子が方々(ほうぼう)に頼み込んで取り潰しだけは避けようとしておりましたが、数日前にベレス男爵の死罪と家名断絶のうえ、闕所(けっしょ)が決定したそうです」


 ベレス男爵家は家名と貴族籍を剥奪される家名断絶と、領地や財産を没収される闕所という刑罰に処せられることになる。

 この闕所がある以上、ベレス男爵とその一族の財産は没収されることになるので息子はさぞ青ざめただろうね。

 取り潰しの中でも最も重い刑罰だ。


「それが?」


 ブリュトゼルス辺境伯家への嫌がらせってだけで盗賊を使って罪もない旅人や商人などを害した以上はその程度の処罰は当然だと俺は思うけどね。

 同情する余地はないと俺は思うよ。


「その息子、ベルガというのですが、そのベルガがお館様への恨みを口にしているそうなので一応はお耳に入れておこうと思いまして」


 逆恨みですか。

 恨むならバカな父親を恨むべきだと思うのだけど、バカの子はバカなのかな?

 んなわけないか、人は生まれ育った環境で人格形成されるんだと俺は思う。

 たとえ父親がクズでも母親や周囲の者が善良な者であれば善良な子が育つ可能性は高いとも思っているし、それは誰がどれだけその子の人格形成に関わったかで変わるだろう。

 勿論、それだけではないとも思っている。


「ふむ、そのベルガという息子が私に恨みを持っていたとしよう。何かしてくると思うのか?」


「分かりませんが、手の者にベルガ周辺を見張らせております」


「ベルガが何かしても証拠もなく動かないようにな」


「了解です」


 まったく、この忙しい時に面倒な。

 そうだ、そろそろあの人事を進めるかな。







 はい、やってきました王立魔法学校。

 言わなくても分かると思うけど人材確保です。

 王立魔法学校は一応俺の母校であるので、顔が利きます。


「お久し振りです、ブルーム先生」


「ご無沙汰しています、ブルーム先生」


「お会いできて光栄です、ブリュトイース伯爵様。と言うべきかな? それとカルラ騎士爵様も久し振りだな」


 魔法使いの面接なのでゲールの他にカルラも連れてきている。


「止めてくださいよ。ブルーム先生がそんな喋り方をすると槍が降りますよ」


「そうか、ならばいつものようにさせてもらう。しかし、ちょっと見ないうちにあの問題児が立派になったものだ」


 問題児って俺のこと?

 いやだな~、問題なんて起こしたことないですよ、俺は(・・)

 ブルーム先生は相変わらずのニヤニヤ顔で俺を物色する視線を遠慮なく投げかける。


「ところで、例の話の方は如何です?」


「断ったはずだが?」


「そうですか、でも気が向いたら声をかけてくださいね。ブルーム先生ならいつでも歓迎してこき使いますから」


「だから行きたくないんだよ。お前にこき使われて生きていられると思えないしな」


 俺はブルーム先生をブリュトイース伯爵家へスカウトしているのです。

 魔法使いたちを任せるのに良い人材だと思っているんですよね。

 教え子の下で働くってのも微妙な心情なのかも知れないので気長に勧誘することにしますよ。

 ブルーム先生とは別で生徒の勧誘は優先度が高いのでその話を進めます。

 今回面接する生徒は6人。

 面接自体はカルラが進めるし、ゲールも人柄や雰囲気を見てもらう。

 俺はと言えば面接を受けてくれた生徒の素質と性格を見る。

 素質は絶対に高くなければいけないわけではないけど、性格は家柄をひけらかす奴は有能でも切り捨てるためだ。

 まぁ、家柄をひけらかす奴に有能ってのはあまりいないのだが、と言うか無能だから家柄をひけらかして他者よりも上だとアピールするのだ。


 面接会場となっている会議室で待っていると6人が入ってくる。


「氏名と得意な属性を聞かせてください」


 カルラの問いに向って左の生徒から答えていく。


「私はエンデバーグ伯爵家三男のヘンリ・クド・エンデバーグと申します。ブリュトイース伯爵殿にお会いできて光栄の至り、今後とも良いお付き合いをしたいものです」


「聞かれたこと以外は喋らなくて結構です」


「なっ、・・・属性は火が上級になります・・・」


 カルラがウザそうに要らんことは喋るなとやんわり(・・・・)切って捨てました。

 俺もこういう奴は好きではないから良いけどね。

 元々カルラが目を付けていた生徒は6人で、その内1人は長子で家督を継ぐことから面接を断ってきたので5人と面接する予定だったのだけど、どうしてもと面接に割り込んできたのがこのヘンリだ。

 しかしブルーム先生の顔を立てて面接してやったのだが、俺が嫌いな家柄をひけらかす奴のようだ。

 家柄の使いどころを間違えるとタダの無能に見えるから、使いどころは考えるべきだよね。


「私はヘルメス・クド・クリムゾン。属性は木が特級と風が上級です」


 ヘルメスはエルフの美人です。

 胸は種族の特徴がしっかりとあり残念な平野状態だが、それ以外の見た目はとても良い娘だ。


「わちゃしは・・・フーリエと言います。じょ、ぞくしぇいは・・・ひきゃ、光が特級でしゅ・・・」


 ははは、3人目のフーリエって娘は緊張しまくってカミカミですね。

 容姿は年齢より幼く見える・・・てか、幼女ですね。

 ただ、出ているところはしっかりと出ており、それに関しては俺のストライクゾーンなのだが、容姿が幼女では・・・

 身長も年齢からしたら低いしこのまま育てば・・・ロリババも夢ではないぞっ!


 話を進めていくが、やはりヘンリはないな。

 ほかの5人は俺的に問題ない、さすがはブルーム先生がお膳立てしてくれただけのことはあるね。

 後はカルラとゲールの意見を聞くだけだ。


「ヘルメスは良いとしてヘンリはないわね。後はフーリエは微妙よね。あんな上がり性で魔物退治や対人交渉ができるかしら?」


「私はフーリエという娘に可能性を感じました・・・そう感じただけでこれと言った根拠があるわけではありませんが・・・」


 確かにフーリエは自己申告していない能力がある。

 て言うか、自分でもその能力に気付いていないのかも知れないな。


「ゲールがそう言うなら、そうなんだろう。ヘンリ以外の5人を予定通り採用することにしよう」


 後はカルラとブルーム先生に任せて俺は校内を散策する。

 勝手知ったるなんとやらと言うわけで自由に散策しているが、これと言ってイベントはなかった。

 ちょっと残念ではあるが、時間もあまりないので部屋に戻る。

 そこにはブルーム先生の他に登用を決めた5人も居て俺が部屋に入るなり採用の礼を言われた。


「来年からよろしくね。それと私は5人と同じ歳だしそんなに堅くならずに気楽にしてよ」


『ありがとうございます!』「あ、ありがちょう・・ございましゅ・・・」


 ワンテンポ遅れてフーリエが噛み噛みでお礼を言うのを見て少し噴出してしまったのでフーリエが涙目になっていた。

 おかげでブルーム先生にこっそりお叱りを受けましたが、仕方ないよね。




 

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