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085 領地開発2

 


 ブリュトイース伯爵領の開発が始まり早3ヶ月。

 最近は人の流入も日に日に増えてきている。

 先ずは技術者、彼らにより住宅や工房の建築が進む。

 そして周辺の村や集落から移住を希望した者が農業用地に移住し米や麦だけではなく野菜などを育てる。

 便宜上、城を建てた層を本丸、家臣が居住する層を二の丸、一般住民の居住区に商業区や工業区のある層を城下町、農業用地を生産層とした。


「周辺の村と集落からの生産層への移住者はどれだけに?」


「え~っと、2日前の統計では4千と飛んで25人だね」


 ペロンが紙の束をペラペラと捲り俺の問いに答えてくれる。


「ウード、城下町の建設状況は?」


「順調でやんす。『ルーンの迷宮』より多くの魔物の素材が齎されているお陰で、そういった素材目的で他の地から移住者も多くいるでやんす。それに王都やブリュンヒルを初めとした都市から商人が訪れ店を出し、鍛冶師を初めとした技術者も続々と移住して工房を立ち上げているでやんす!」


 やんす、ってお前はどこの生まれだよ!

 前回会った時から口調が変っているんだけど、これって何か言った方が良いのかな?

 ペロンに視線を移すと僅かに首を左右に振っているので無駄かな。


「街としての循環はできていると思っても?」


「当然でやんす! そのために我らがおるのでやんす!」


 城下町の建設担当であるウードは鼻息を荒くし胸を張る。


「大した自信だ。まぁ、ウードからその自信を取ったら何も残らないか」


「お館様! 何でそれを!」


 相変わらず乗りの良い奴だ。

 ペロンやお前の部下も引いているぞ。


「引き続きこのイーストウッドの開発についてはペロンとウードに任せる。ペロンは統括としてウードを管理してくれ。必要なものはあるか?」


「人を」


「人か、私もそう思うよ。しばらく待ってくれ」


「ガッテンっ!」


 ウードのそのノリは変わらんのね。


 このブリュトイース伯爵領の領都の名はイーストウッドと定めた。

 イーストウッドとはそのままの意味で『東の森』である。

 領地の大部分が大森林と隣接しているしイーストウッドのある湖が大森林に囲まれていることから取っている。

 良い名前ではないだろうか? と思い決定したのだけどクララには「何の捻りもないんだ?」と言われ、カルラからは「クリストフだしね」と言われ数日落ち込んでいたこともあった。


 それと元々子爵に叙爵されることは決定していたのだが、当初はブリュト島しか領地と呼べる土地はなく人材は少なめでよかったのだが、陛下(タヌキ)のせいで伯爵となりブリュトイース伯爵領を得てしまったので人員不足も良いところだ。

 そのために部下たちに無理を強いていることは心苦しく思ってはいるが、人員は簡単に集めることができないし、育てるのにも時間が必要なので今いる人員で当面は頑張ってもらうしかない。


「次はフェデラーかな」


「はっ、イーストウッドの警備はレビスに任せ補佐としてプリメラをつけております。イーストウッド内では喧嘩程度はありますが大きな騒動はありません。大森林付近ではランクDまでの魔物を確認しており駆除を行っております。北のルーン山脈周辺においては魔物が散見しておりますが、ルーン迷宮付近では魔物も殆ど現れず、状況は安定しております」


「うむ、レビスはサボらず働いているのかな?」


「サボれば仕事が溜まり首が回りませんよ」


「そうか、アイツには丁度よいね。ふふふ」


 フェデラーも同意するようにコクリと頷くとフェルク砦について報告を始めた。


「フェルク砦はウィックに任せ補佐にジョブをつけております。毎日のように魔物の駆除に部隊を出しており街道の安全は確保されております。ただ、イーストウッドもフェルク砦も人員不足は否めません」


「王国全土に布令を出し人員の募集をしている。随時集まってくるだろうからしばらくは我慢してくれ。他に無ければこれで終了とするが、私はこれから王都に戻る。軍事はフェデラー、内政はペロンとウードに任せるので問題が生じた場合は各々の権限において対処をしてほしい。また、それぞれの権限を超えた大事が発生した場合は3人の総意によって事を進めてほしい」


『ハッ!』


 俺も貴族家の当主として、新興貴族として、一生懸命働いているのです。

 いつになったらまったりライフが来るのか・・・







 ブリュト商会の社員寮を改築して大規模な店舗にし店を移転させ、これを本店とした。

 本店は3階までを店としてそれ以外は商談室や倉庫などにしているし、荷物搬入用のリフトも設置し、更に店舗内にはエスカレーターも設置して階の移動を楽にしている。

 勿論のことだが、エレベーターやエスカレーターなどという物はこの世界に存在しないので、エスカレーターがこのブリュト商会本店に初めて設置されて話題となっている。

 本店の開店セールの期間は3日間だったが、このエスカレーターが珍しかったのか買い物客でもない市民がエスカレーターに乗りにくるという現象が起きセールが終わっても客足は途切れることがない。

 1階は休憩ができるようにカフェも設けており紅茶とスイーツをメインに提供し女性だけではなく男性にも人気となっている。

 2階は食料や雑貨を揃え主婦層が多く訪れる他に保存食を買いに来る冒険者も多い。

 3階は武器・防具をはじめ、アクセサリーなどのマジックアイテムを揃えているし、本店のみミスリル製のフルプレートメイルを置いて目玉商品としている。

 ミスリル製のプレートメイルは6千万Sなので誰も買っていかないと思っている所謂客寄せパンダ的な位置づけなのだ。

 ミスリルとは言え、これだけ高額になるのは純度の高いミスリルという金属が非常に希少で高価なのとミスリルのプレートメイル全体に精巧な意匠を施すことができる技術者がこの世界に数人しか居ないという理由からだ。


「まぁ、俺が作ったから製作時間は1分も掛からなかったけどね」


 そう思って購入者など現れないと思っていたのだが、北部のセジミール辺境伯が購入していったよ・・・毎度有り!

 何故誰も買わないと思っていたかと聞かれれば、希少なミスリルとは言え6千万Sもの大金を出す者は大貴族程度だと思っていたんだが、冒険者向けや一般家庭向けの製品が多い俺のブリュト商会に大貴族が足を運ぶことはまずない。

 なのにセジミール辺境伯が現れ購入していったのは意外だった。


 それからブリュンヒルとイーストウッドにも出店した。

 王都本店の店長は変わらずプリエッタで、ブリュンヒルの支店長にはクララ、イーストウッドの支店長にはペネスを充てている。

 彼女たちは俺の奴隷となってより1年以上の間、フィーリアに仕込まれ接客や在庫管理は完璧にこなしており、店を任せてもまったく問題ないレベルだ。


 警備部のクランプ、ベッケナー、ベネゼッタの3人にはそれぞれに部下の奴隷を付けてクランプは王都の本店、ベッケナーはブリュンヒル支店、ベネゼッタはイーストウッド支店の警備主任を任せている。

 クランプには警備部長もしてもらっているが、基本は本店の警備だ。

 それと3人は毎晩のように飲み歩いていたので飲み仲間が居なくなって寂しい思いをしているのかと思ったら、部下に付けた奴隷たちを引きつれ変わらず毎晩のように飲み歩いているそうだ。

 この3人はどこに行っても変わらないようで安心したよ。


 開発部のジュリエッタ、ロック、ジャモン、セルカの4人はブリュト島に拠点を移している。

 ブリュト島には希少な鉱石や素材が多くあり、大きな工房も建てたので4人にとっては開発環境が向上しているし、4人の生活の面倒を見る奴隷も付けているので開発に心置きなく打ち込めると喜んでいる。


 それと俺はイーストウッドで海産物を加工する工房を立ち上げたので、この工房の責任者に魚人族のマーメルを充てている。

 彼女は魚人族だけあって魚介類について詳しく、俺が作り出した醤油、味噌、味りんなどの調味料を使って加工品を嬉しそうに作っていた。


 そして、全員を奴隷から解放している。

 奴隷として買った時の倍の金額を返済していないので残りの金額は俺への借金として給料から天引きするシステムだけどね。

 ただ、俺の奴隷は待遇が良いので皆が奴隷からの解放を望まなかったのは相変わらずであった。


 それと元冒険者ギルドの職員だったベン・アズカスはイーストウッドである仕事をさせている。

 それに付いては後日語るとして、そのベン・アズカスのコネを使って優秀な文官を数人登用できたのは嬉しい誤算だった。

 ベン・アズカスに紹介してもらったヴィクターという男にブリュト商会の第二副会頭の役職も与え、俺の代わりにブリュト商会の経営を任せている。

 同じく副会頭のフィーリアは筆頭副会頭としてブリュト商会の監査室を任せ部下をつけている。

 監査室がブリュト商会の内部の不正に目を光らせているのでベンが俺を裏切るとは思わないけど仮にベンがブリュト商会を私物化しようとしても事前に手が打てるだろう。



 

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