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084 領地開発1

 


 ブリュトイース伯爵家への仕官希望者は数百人にもなり、その多くは貴族の子弟でしたね。

 ふざけた奴はブラックリストに載せ、二度と俺に近づけるなと厳命をする。

 そんな中、面白い男が2人も現れた。


 1人の名はウード・シルベスという没落男爵家の次男だ。

 実家であるシルベス家からは縁を切られているらしいが魔法使いとしては有能だと思うし、何より性格が面白いので雇用することにした。

 属性は土の特級と水の下級で、特技は穴掘りって自分で言っていた。


 もう1人はベン・アズカスという騎士爵家の六男だ。

 アズカス家はブリュトゼルス辺境領内にある小領を治めている領地持ちの貴族で代々ブリュトゼルス辺境伯家に仕えている。

 ベンは六男なのでさすがに家に残ることはできず、冒険者となった後に今は冒険者ギルドの職員として働いているそうだ。


 この2人以外にも武官や文官を採用してはいるが、武官に関してはフェデラーに任せ、文官に関してはクララとペロンに任せる。

 今回の伯爵陞爵アンド領地騒動で急遽ペロンを文官たちを纏める家宰にした。

 これによりブリュト島の農地は奴隷たちに完全委任することになるが、もとからその予定だったので予定の前倒しとなっている。

 ただ、前倒しが早すぎたので奴隷たちも困惑しており、そこはカルラにフォローを頼んでいる。






 3月に入り西部のベルデザス砦に攻め寄せていたボッサム帝国軍が撤退したと報告が王都に齎された。

 今回の戦いで神聖バンダム王国軍は3万人の兵を死なせ、対するボッサム帝国軍は2万人の兵を死なせていた。

 両軍合わせて5万人にも上る死者を出した今回の戦いは少なからず両国に爪痕を残すものであった。

 しかし、ボッサム帝国軍が撤退する時にセバン将軍が追撃を与え、4千人もの捕虜を得ている。

 この戦いでの勝敗は被害の大きさから言えばボッサム帝国にやや軍配が上がるのだが、当然のことながら神聖バンダム王国は勝利を宣言する。

 だが、名目上は勝ち戦であっても3万人に及ぶ死者を出していることは重く受け止められている。

 こういった場合、誰かが責任をとることになり、通常は軍の指揮をしていた者にその詰め腹を切らせることになる。

 そして今回の戦いで言えばそれは黒色軍を率いていたセバン将軍か西部総督であるブレナン侯爵となる。

 本来であれば貴族派の重鎮であるブレナン侯爵といち将軍であるセバン将軍では詰め腹を切らせるのはセバン将軍の方であるが、如何せんブレナン侯爵は帝級のマジックアイテムを破損させたという罪があり、その罪を帳消しにするための最低条件がボッサム帝国の領土を得ることだったので、その条件を満たしていないことから今回詰め腹を切るのはブレナン侯爵だと思われている。






 本格的にブリュトイース地域の開発を進めているのだけど、開発をするにあたり先ずは領都を定める必要があった。

 今ある村をそのまま拡張させるのも良いのだが、それでは少し俺の思惑とは違う開発になってしまうので新しい街を作ることにした。


 ではどこに新しい街を作るのか、それを語る前にブリュトイース地域の特徴を話しておこうと思う。

 ブリュトイース地域は周囲を大森林、湖、ルーン山脈とフェルク山に囲まれた地上の孤島である。

 北のルーン山脈は数千m級の山々が連なっており越えるのも大変だし、南には湖があり、その湖の更に南には西のフェルク山から湖を覆う形で東の海にまで人を阻む大森林勢力を誇っている。

 伯爵領としては標準より広いブリュトイース地域を丸ごと飲み込んでもおつりがくるほどの面積を有している大森林なので湖を越えての南下は難しい。

 そして大森林に隣接する湖には多くの水棲魔物が生息している。

 だからブリュトイース伯爵領からは西のフェルク山を越えるしか人が住む地域と通じる道はない。

 しかもその唯一の道がとても険しい。

 千mを超える程度のフェルク山なのだが道と言うと道に失礼ではないかと思うような獣道に毛が生えたような道しかないのだ。

 獣道なのでフェルク山を越える商人だって居ない状態で物資は年中不足しており、開拓村を作り移住している人たちはかなり苦労をしている。


 こんな感じの土地だが平野部は多く、はっきり言って開拓し放題の土地なのですね。

 そして俺が領都として定めたのは湖の(ほとり)だ。

 北側以外を大森林に囲まれる形で存在し、ブリュトイース地域の中央部から西寄りに位置する場所なのでそこに領都を築こうと思う。

 それともう一つ優先的にしなければならないことは西のフェルク山に安全な山越えの街道を整備し、ブリュトイース伯爵領とブリュトゼルス辺境領とのライフラインを確保することだ。


 ブリュトゼルス辺境領ほどではないが、広大な土地であるブリュトイース伯爵領なので領都をあまり東側に築くとブリュトゼルス辺境領とはかなり距離ができてしまう。

 そのため、父上も新しく領都を定めるのであればブリュトゼルス辺境領との領境であるフェルク山に近い場所だと思っていたようで湖の近くが良いと思っていたようだ。

 そして俺の構想を聞いた時にはさすがの父上も驚き再考をと勧めてきた。

 良いと思っていた場所だったのに何故再考を勧めてきたかといえば、それはできてからのお楽しみだ。


 だから今はブリュトイース伯爵領に入って領都予定地の整地を行っている。

 そして予定地の湖やその傍にある大森林に棲み付いている魔物は俺がダンジョンマスターをしているダンジョンに居住空間を与えて移住をしてもらったりしている。


 あ、ちなみに、俺のダンジョンはセジャーカ鉱山から新領都に近いルーン山脈に移動させました。

 ん? ダンジョンって移動させられるのかって?

 普通は無理だけど、俺ってば普通じゃなくて半神デミゴッドだし時空魔法が超得意なわけだ。

 なのでダンジョンを丸ごと俺の領地に空間転移させた。

 地下水脈があってダンジョンになっていた場所と同じような条件の場所を探すのに苦労はしたけど、何とか空間ごと交換しておいたのでダンジョンがあった場所も新しいダンジョンの場所も安定はしている。


 一応、魔物対策だけではないけど地形を生かした四重の城壁を作ってみた。

 これだけの城壁があれば住人も安心して暮らせると思うんだよね。

 それ以前に魔物を近づける気はないけど、住人の安心は形が見えるものがあれば得やすいだろうから。




 話は戻るが領都の城壁を作ったら湖が一番よく見える場所に城を築く。

 この城は城というよりは宮殿に近いのかなと作ってから思ってしまったが、敵が侵攻してきても堅牢な城壁が敵を跳ね返すので城が宮殿のようになっても構わないだろうし、防御の結界も施しているので問題ないだろう。

 また、城は政治を行う場所でもあるが、もしもの場合に立て篭もるものなので地下には大量の物資を蓄えることができるように貯蔵庫も備えている。

 貯蔵庫を地下にしたのは地上に倉庫を作ると見栄えが悪いという俺の価値観によるものと敵に侵入され食料庫を焼かれたり毒を盛られたりするのを避けるためだ。

 ついでに地下倉庫には時間経過を停止させ、物資の腐敗を防止する処置も施した。


 城を囲む城壁の外には家臣団の居住区を作っているし、更に二層目の城壁を越えれば一般人の居住区や商業区に工業区などのエリア、3層目の城壁を越えると農地があり最外周に4層目の城壁がある。

 最外周の城壁まで含めるとかなり大規模になってしまったが、これは愛嬌ですよ。

 城と家臣の居住区までは俺が手掛けたが、後はペロンとウードに街の区割を頼んで俺は街道の整備をすることにする。


「僕は驚かないよ!」


 ペロン君や、そんなに涙目にならなくても良いじゃないか。


「お館様は天才・・・いや、噂通りの神童ですな。こんなものをたった1日で作り上げるなんて・・・」


 ウード君や、俺は神様だよ、半神デミゴッドだけど。


「それより、魔技神マギシン様の神殿は質素でありながらも(おごそ)かな感じで建ててほしい。今の私があるのは魔技神様のおかげだからね。それと神殿までの交通の便も良くしてほしい。後はペロンとウードに任せるから」


「分かったよ」


「心得ております! このウード・シルベスに万事お任せを!」


「威勢が良いのはいいが、ヘマをするなよ」


「がってん承知の助!」


 お前はどこの生まれだよ。

 ウードは能力はあるのだが、受け答えが軽いので堅実なペロンの下につけている。

 ただ、俺も人のことは言えないし、こういうのりは嫌いじゃないよ。


「あいつはキャラが立っているが、何とかたのむよ」


 ペロンはこれから負うであろう苦労を想像しうな垂れていた。


 ウードは土の属性が特級なので土木や建築は得意分野だ。

 ウードの魔力は500を超えエルフ並みではあるが、1人で街を作るなど不可能なので今回登用した魔法使いや魔術師を部下につけ建設を進めさせているし、陛下(タヌキ)や父上が手配した職人たちもウードに任せる。

 ペロンはそんなウードたちの管理と街づくりの責任者ってわけですね。


 これだけの大規模開発をしているのだけど、今のところはあまり人手がかかってはいない。

 俺が多くの部分を工事しているので当然なのだけど、これだと開発の経済効果が少なくなってしまうために陛下(タヌキ)や父上から早い段階で少し控えるようにと注意があったのだ。

 そんなことは知らん! と言いたいけど、経済の活性化は重要だからね。

 そんなわけで陛下(タヌキ)と父上は街の建設に関連する人員を王家とブリュトゼルス辺境伯家の負担で手配すると言っております。

 まぁ、王家からの降嫁が決まっているので王家と俺の出身家であるブリュトゼルス辺境伯家がブリュトイース伯爵家を支援したという既成事実を作るのも目的なんだろう。


 次の俺の仕事はフェルク山の街道整備のついでに山の上に砦を建設することだね。

 これはフェルク山の魔物を監視し駆除するだけではなく、盗賊対策も含めた治安維持を目的とした部隊を駐留させるつもりだけど、砦の一区画を解放し旅人を受け入れ休憩をさせるものでもある。

 魔物の脅威がない街道整備は為政者としての責務だし、何より経済を活性化させるには街道整備が重要だからね。



 

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