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066 納品1

 


 舞踏会の翌日、俺はフィーリアを伴いブリュト商会へ赴く。

 店は連休中なので裏口から入り、そのまま倉庫に入っていく。


 陛下よりのご用命で軍事物資を揃える必要があり、半数を明後日に納入する必要があるのだ。


「フィーリア、私が作っていくアイテムの数の把握と箱詰めを頼むよ」


「畏まりました」


 今回の物資は薬品が多い。

 傷ポーションが1万本、血液ポーションが5千本、マナポーションが1千本、上級傷ポーションが3千本、上級血液ポーションが1千本、上級マナポーションが2百本。


 そしてマジックアイテムも作る。

 力のリングは1千個、守りのリングは1千個、素早さのリングは5百個、ファイアボールリングは5百個、ウォータリングは1千個、障壁の腕輪は10個。


 朝一で作業に入って昼食を軽く摂っただけで殆ど休憩もなくアイテムを作り続ける俺と、そのアイテム数を確認し帳簿をつけ箱詰めするフィーリア。

 トムロスキー軍務卿には3日後と6日後の分納と回答したが、夕方前には全てのアイテムを作り終え箱詰めも終了していた。

 これは神である俺と眷属であるフィーリアだからできたことで、普通の人間ではあり得ないことだ。


 因みに薬品類もマジックアイテムも全て何もない所から作り出している。

 元々薬品類を作る時は瓶だけを用意し魔法で中身を作り出していたが、今回はその瓶さえも用意していない。

 俺が魔技神マギシンになったことで得た能力である魔具作成を使い魔力を消費してマジックアイテムを何もない状態から、所謂ゼロから作っているのだ。


 陛下に代金は不要と申し入れた理由がここにある。

 俺は魔力を消費しマジックアイテムを作りだせる能力がある。

 しかも俺の魔力はほぼ無限にあるのでこの程度のマジックアイテムであれば幾らでも作ることができるのだ。


 倉庫は時空魔法で拡張してあるのでこれだけの物資を積み上げても余裕がある。

 一気に作ってしまったが、陛下やトムロスキー軍務卿が疑念を持たないように予定通り分納することにしている。


「悪いが納入時には同行を頼むよ」


「クリストフ様が良いと仰るのであれば何処までも」


「ありがとう。それと今後の店のことはプリエッタに任せようと思う」


「私に何か不手際がありましたでしょうか?」


 フィーリアはとても焦った表情でこの世の終わりだと言わんばかりの落ち込みようだ。


「フィーリアは俺の初めての眷属であり、唯一の眷属だ。できるだけ傍に置いておきたいと思ってね。嫌なら今まで通りにするけど?」


 今まで地面にめり込むんじゃないかと思うほど落ち込んでいたフィーリアがガバッと体を起こし俺に飛びかかる。


「滅相もありませんっ! 私はクリストフ様のお傍に! クリストフ様の御世話をさせてください!」


 あの、何も抱きつかなくても良いのだぞ。

 しかしまだ10歳のくせして育っているじゃないか。

 けしからんぞ、実にけしからん!


 フィーリアは向日葵のような眩しい笑顔を俺に向け、俺の首にぶら下がっているので頭を撫でてやる。

 そしてケモ耳をモフモフしてやった。


「あっふぅん~・・・ぁん・・・」


 久し振りのケモ耳を堪能するのだ!

 いつまでもモフモフしていたいが、もう夕方になるので屋敷に戻らなければ母上が心配する。

 断腸の思いで帰ることにする。

 はぁ~、ケモ耳は正義だ!






 翌日は神の能力を把握するのに時間を割き、1日が過ぎる。

 フィーリアは終始俺の傍に控え、俺の世話をやこうとしている。


「フィーリア、俺のことはルーナもいるからフィーリアはお爺様に稽古をつけてもらったらどうだろうか?フィーリアも剣を使えれば私も安心して外に出れるんだけど」


「っ! はいっ! 剣を学んできますっ!」


 まぁ、俺自身を出汁にしているが実際はフィーリアに身を守る術を与えたいってことなんだけどね。

 フィーリアがやる気のうちにお爺様のもとに赴き、フィーリアのことを頼んでみる。


「フィーリアがか? その細い体で剣を持てるのか・・・まぁ、いいわ。フェデラシオ、訓練用の剣を持ってこい」


 仮にも王国騎士団の元団長であるフェデラシオ叔父上を顎で使うお爺様はさすがだ。

 叔父上が刃引きされた訓練用の剣をフィーリアに手渡すとお爺様は「振ってみろ」とフィーリアを促す。


 ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!


 フィーリアが剣を振り下ろすだけで訓練場が土ぼこりを上げる。

 何度も剣を振り下ろしフィーリアの周囲が土ぼこりで覆われてしまうほどだ。

 その光景を見ていたお爺様は口角を上げ、とても獰猛な笑みを浮かべていた気がする。


「よし、次はワシと手合わせだ」


「は、はいっ!」


 お爺様はフィーリアの打ち込みを受け止め、あるいは受け流す。

 接近しては離れ、離れては接近し、2人は剣を振り続ける。


「どうやらお爺様はフィーリアのことが気に入ったようですね。叔父上、申し訳ありませんがフィーリアとお爺様の面倒を見てやってください」


「ああ、任せてくれ。しかしあの子は素晴らしい素質を持っているね」


 俺の眷属であるフィーリアは力だけなら人類を凌駕するだけの力があるのだが、剣の心得がないとは言えそのフィーリアとまともに打ち合い、更にはフィーリアを手玉に取るお爺様は本当に人間なんだろうか?








 9月18日、ブリュトゼルス辺境伯家が所有する荷車2台で王城に向かう。

 フィーリアが門番に目的を告げ、暫し待つ。

 トムロスキー軍務卿の部下かは分からないが、兵士が俺たちを迎えに来る。


「私についてくるように」


 兵士は愛想なくついてこいというので、俺達はその兵士についていく。

 兵士について行き、訓練場のような場所に連れていかれる。

 フィーリアは兵士の俺への態度が気に入らないのか、何も言わないがぶすっとした表情である。


 倉庫の前で別の兵士に一言、二言、話すと別の兵士は何処かに走っていく。


「この倉庫の中に運び込んでおけ」


 兵士が横柄な態度で俺たちに指示をするのでフィーリアが兵士に飛びつきそうだったのを止める。

 もう少し遅かったら兵士はぶっ飛ばされていただろう。

 この兵士はフィーリアが子供だということで侮っているのだろう。

 まぁ、フィーリアの他にいるのが俺と御者の2人なので無理もないが、この兵士は納品の確認もしない。

 俺が言うことではないが、こんなことで良いのだろうか?


 暫くして倉庫に木箱を全て運び入れ終える。

 勿論、俺も運んだよ。


「こちらが納品書になります。ご確認を頂き、こちらの受領書にサインをお願い致します」


 フィーリアが兵士に書類を渡すと兵士は一瞥し、返却してくる。


「あの、サインを」


「五月蝿い! 責任者が来るまで待て!」


 なるほど、この兵士はこの納品がどういう経緯のものか分かっていないのだろう。

 納品の責任者が子供だと思ってこの兵士は今回の納品を軽く見ているようだ。



 

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